むしむしブログ

2016年05月

 南米のチリで採集されたムシです。サソリかどうかは別として「妖怪サソリ」とはなかなかいい名前だと思いませんか?映画にこんな顔の宇宙人が人間を襲う場面があったような・・・
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 ナナフシは基本的にじっとしていることが多いですが、移動する時の動きが特徴的で、身体をユラユラ揺らしながら慎重に動きます。下の写真のナナフシが同じような動きをするかはわかりませんが、もしそうなら、妖怪ナナフシやお化けナナフシではなく、幽霊ナナフシと名付けた方のセンスに脱帽です。
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 このほか「お化けコオロギ」や「お化けベッコウバチ」等の和名が付された昆虫がいましたが、いずれも日本では考えられないほどの巨大サイズ。ある種畏敬の念と多少の親しみを込めて「お化け」と名付けたのではないでしょうか。オバケのQ太郎やゲゲゲの鬼太郎、怪物くん、妖怪人間ベム等を思い浮かべればご理解頂けると思います。ムリですか?
 最後は美しい蝶でお口直しを。あまりに有名な生きた宝石、モルフォ蝶です。青く見える仕組みをここで語るとウザい奴と思われそうなので、写真だけにしときます。
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 仙台のカメイ美術館の展示は、半分が昆虫標本です。老舗旅館の大宴会場程のワンフロアーの95%が蝶の標本で埋め尽くされており、残り僅か5%が甲虫等なのですが、それでも標本箱27箱あるので十分楽しめます。
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 特筆すべきは、外国の糞虫が23匹展示されている事です。ビジネス界でも有名な亀井文蔵さんですが、中学生の時から本格的に蝶の研究・収集を始め、海外まで採集に行くほどの蝶好き。その「蝶のブンゾー」(失礼!)さんでさえ標本箱に並べてしまう程の魅了が糞虫にはあるということでしょう。タマオシコガネや大きなオウサマダイコクが並んでいました(右側の2列)。
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 海外の糞虫の標本を購入した時の種名(属・種)は洋書で確認しているのですが、やはり実物で見るのが一番です。たまに博物館等で糞虫の種名が間違っているのを見つけるのも、日本ではマイナーな糞虫愛好家のちょっと歪んだささやかな楽しみです。文蔵さんのコレクションは、果たしてどうだったでしょう?たぶん、誰もそんなことに興味無いですよね(寂)。

 大台ヶ原でギンリョウソウ(銀竜草)を初めて自分で見つけました。この植物は見ての通り真っ白で葉緑体を持たないので、自分で栄養を作ることができません。何と周囲の樹木の根に寄生(共生)している菌類に寄生して養分を得ているそうです。昔は腐葉土から養分を得る腐生植物と呼ばれていましたが、そんな能力はないそうです。寄生する植物としてヤドリギが有名ですが、ヤドリギは自分で光合成をしますから、ギンリョウソウはヤドリギ以上に自活出来ない奴なんですね。
 この写真からはイメージしにくいですが、ユウレイダケ(幽霊茸)という俗名があります。ネットで「ギンリョウソウ 目玉」と検索すれば、納得!です。ぜひ、お試し下さい。
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 下の写真は「名前に日陰とついているのに明るい場所に生える」と判で押したように解説される植物の一種です。胞子を作り、広義のシダ植物らしいのですが、植物界・ヒカゲノカズラ植物門・ヒカゲノカズラ綱・ヒカゲノカズラ目・ヒカゲノカズラ科・ヒカゲノカズラ属のヒカゲノカズラという種だそうで、植物界・被子植物門・双子葉植物綱・バラ目・バラ科・スモモ属・サクラと比べてもいかにすごい植物であるかがよくわかります。何がすごいのかというと、何となくですけどね。
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 大台ヶ原は日本一雨の多いせいか、コケが綺麗でした。「コケ」にもそれぞれに名前があるのでしょうが・・・
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H28.5.22、大台ヶ原の西側一帯を散策してきました。大台ヶ原最高地点の日出ヵ岳は1695mもあり、奈良市内の気温が30度近くまで上昇したこの日も原生林の中はたぶん20度を少し超えるくらいまでしか上がらず、快晴にもかかわらず汗もかかないほどでした。
 標高が高いからか、ここにはエゾハルゼミが多数生息しており、数日前から鳴き出したとのこと。近くで見ることはできませんでしたが、その鳴き声と抜け殻をあちこちで沢山確認することができました。
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 糞虫館の館長としては、ビジターセンターのパンフレットにエゾハルゼミと共に写真入りで紹介されているオオセンチコガネの生きた姿を見ずには帰れないところでしたが、運よく食事中1、歩行中1、死骸1、残骸(一部)1を確認できました。
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 獣糞とは4回遭遇しましたが、いずれも中型の雑食動物(アナグマ?)のもので状態も悪くなかったのですが、エンマコガネやマグソコガネは見当たらず、食痕もありませんでした。奈良公園では春夏秋冬いつでも糞虫達に出会えますが、自然保護の行き届いた大台ヶ原(西大台)でこの時期越冬個体と思われるオオセンチコガネ以外は1匹の糞虫も確認できなかったという事実は、私には意外な新発見でした。
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 (獣糞の代わりに美しい大台ヶ原の写真を掲載)

 引き続き「フンコロガシ」改め「タマオシコガネ」のお話です。
 その昔、クレオパトラがいた時代のエジプトでは、タマオシコガネは聖なる生き物として扱われていたようです。西に沈んだ太陽が再び東の空から昇る事とタマオシコガネが玉(=太陽)を運ぶ姿を重ね合わせたと考えられています。エジプトの王家の墓などの副葬品からスカラベ(=タマオシコガネ)を刻んだ貴石が数多く見つかっています。 
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 エジプトは世界四大文明発祥の地で、高度な文明が栄えていたわけですから、その時代の人がスカラベが転がす玉は動物の糞であることくらいは知っていたと思います。しかし小さな虫が完全とも言える程の球体とともにどこからともなく現れ、消えていく。闇夜に終りをもたらす太陽を崇める当時の人がスカラベを聖なる生き物とした気持ちは、何となくですがわかる気がします。
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 欧州の博物館では、スカラベを普通に見ることができます。王家の墓に帰りたそうな顔をしながら、退屈そうにガラスケースの中に並んでいます。僕の標本箱に並ぶタマオシコガネと同じ顔で。
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(写真は全て大英博物館2008年) 
 

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