むしむしブログ

2017年03月

  昨日の続きを。
塚本珪一氏の「日本列島フン虫記」P116には、「奈良公園のフン虫の中には理由不明で激減している種があることが不気味である。別の項で述べた、ヤマトエンマコガネ、クロツブマグソコガネ、ニッコウコエンマコガネ、ヒメコマグソコガネなども絶滅に瀕しているようだ。(抜粋)」と記されています。私が奈良公園で活動していた1977~1980年頃は、ニッコウコエンマコガネは全く珍しい種ではなかったと昨日のブログに書きましたが、クロツブマグソコガネ(Aphodius yamato)は珍しかったです。私の標本箱には1頭あるだけ(下の写真。台紙の高さは7mm)ですから、師匠のキヨ氏も数頭しか採集していないと思います。
IMG_2805-1
 当時、我々のような素人がマグソコガネの仲間を簡単に見分けることは難しかったのですが、クロツブマグソコガネはそのこんもりしたお腹(背)と一面にあるあばた模様が特徴的で、名前のとおりまさに黒い粒のようなマグソコガネなので野外でも見逃すことはほとんどありません。標本の記録と私の記憶の両面から総合的に判断して、すでに当時から奈良公園にはあまりいなかったと考えています。
IMG_2789-1
 私はヤマトエンマコガネを奈良公園で一度も見たことがないので、探すといっても雲をつかむような話ですが、かつて1頭でも自分で見つけた経験があるクロツブマグソコガネは見つけられそうな気がします。4~5月に個体数を増す(私の採集記録も1979年5月3日)ようなので、気合入れて探します。


今日はここまで。
再見!
 

 昨年12月、35年振りに奈良公園での糞虫観察を再開した私を驚かせたマグソコガネ(Aphodius rectus)。
 何百回も通った奈良公園で、私もキヨ氏(私の糞虫の師匠)も一度も見ることのなかった、あのマグソコガネ。
その後、1~3月にかけて何度も芝地の猪糞、さらに鹿糞でも観察することができ、また私のブログを見た方から昨年の10月に採集したとの連絡もあり、「今は奈良公園で普通に採れるんや。」と頭の整理をして落ち着いたところです。前回のブログで紹介した「日本列島フン虫記」(塚本珪一:著、青土社 2003年)の巻末にある「表C 奈良県フン虫リスト」にも、しっかりマグソコガネが記載されていました。マグソコガネは全国いたるところに生息しており、いろんな種類の糞に集まる全くの普通種なので、奈良公園に生息するのは当然のような気もします。

 ですが、何度もしつこいようですが、少なくとも1980年頃までは奈良公園の鹿糞(当時は猪糞がほとんどなかった)では1匹のマグソコガネも見ることができなかったんですよ、ホントに。春日山のほうはわかりませんが・・・。
IMG_2781-1

 塚本珪一氏の「日本列島フン虫記」P116には、「奈良公園のフン虫の中には理由不明で激減している種があることが不気味である。別の項で述べた、ヤマトエンマコガネ、クロツブマグソコガネ、ニッコウコエンマコガネ、ヒメコマグソコガネなども絶滅に瀕しているようだ。(抜粋)」と記されています。私が奈良公園で活動していた1977~1980年頃は、ニッコウコエンマコガネ(Caccobius nikkoensis)は珍しい種ではなく、春か秋であれば普通に見れた種です。いやー、稀種のヤマトエンマコガネと同列に並べられる時代が来ることは想像だにしませんでしたよ。ホントにいなくなってしまったのか、これからが出現期なので注意して観察したいと思います。
IMG_2783-1

 奈良公園は開発や農薬散布からは守られており、世界文化遺産の一部である春日原始林に隣接しているため、比較的安定した自然環境が広範囲にわたって保たれている場所だと思います。にもかかわらず、以前は見られなかった種が普通に見られるようになったり、逆に普通に見られた種がほとんど見られなくなったり、なんでだろー??? 何かわかったら、また報告しますね。


今日はここまで。
再見!

 この本を私はもっと早く読むべきでした。
 奈良公園から離れていた30年の間に多くの糞虫好きの人による新たな大発見が数多くなされたこと、同時に糞虫を取り巻く環境が厳しいものになっていること、多くの糞虫が絶滅への道を歩んでいることが、ストレートに伝わって来る良書。この本の帯には「長年の調査研究の成果と、とっておきのエピソードで語る、フン虫の博物誌。」とあるが、糞虫を求めてさすらったことのある人なら、塚本氏と自分の姿が重なって見えるのではないだろうか。
IMG_20170326_124259

(↑「日本列島フン虫記」著:塚本珪一、青土社、2003年)
 この本で紹介されている調査は、2000年前後に実施されているが、当時塚本氏は既に70歳に近く、出版時は73歳で現役の大学教授。まだまだ自分にもやれる!やらねばならぬ!という気持ちにさせてくれる、そんなおオススメの本です。

 私は、夏休みの宿題の読書感想文の提出にいつも苦しんでいた人なので、こんな紹介文になってしまいましたが、読んでる途中に糞虫を探しに行きたくなる、そして生物多様性を維持するために何かしないと居ても立ってもおれなくなること請け合いです。


今日はここまで。
再見!
  
 
 
 

 ご自分の県のレッドデータブックにどんな種が記載されているかご存知でしょうか?昆虫に限って言うと、奈良県では約5000種のうち263種が絶滅危惧種や稀少種等に指定されています。で、そのうちの4割強にあたる113種が甲虫です。
IMG_20170325_105748

 糞虫は、ヤマトエンマコガネやクチキマグソコガネ等7種類がリストアップされていますが、絶滅が心配される種だけあって私は生きた彼らにお目にかかったことはありません。辛うじてムネアカセンチコガネ(Bolbocerosoma nigroplagiatum)だけは、家の前で死骸を拾ったことがあるくらい。あと、奈良公園に普通に見られるオオセンチコガネ(ルリセンチコガネ)も記載されていますが、これは奈良には「郷土種」(広く親しまれ郷土を代表する種)という選定基準があり、それに該当するからです。
IMG_20170325_103636

IMG_20170325_103530

IMG_20170325_103419

 奈良県では約60種類の糞虫が確認されており、例えばヒメコマグソコガネなんかどうなの?って言い出すと、他の分野の専門家からもいろいろ意見が出て、まとまらなくなるのでしょうね。多分、正解なんかなくて、こういったデータとそれをまとめるプロセスが重要なんだと思います。そして生物多様性や環境保護に役立てていく事を考えなければならないと。そういう意味では、知名度のない米粒のような○○マグソコガネや黒豆のような□□エンマコガネより、「奈良にだけ生息する瑠璃色に輝くルリセンチコガネが絶滅の危機!」と叫んだほうが100倍の人の共感を得られ、乱開発を阻止する力になると思います。それを見込んでリストにオオセンチコガネやヤマトタマムシを滑り込ませたのだとしたら、奈良の役人もまんざらすてたもんじゃない。
皆さんはどう思いますか?
(マグソコガネやエンマコガネ等目立たないムシはどーでもいい、と言っているではないことはご理解下さい。)


今日はここまで。
再見!

IMG_20170324_071518

(↑チャバネエンマコガネOnthophagus gibbulus)
 今年1月26日のブログで、私の標本箱に中国の新疆ウイグル自治区ウルムチの天地で採集した20匹のチャバネエンマコガネOnthophagus gibbulusがいると報告しましたが、これは類似種のOnthophagus marginalisの可能性が出てきました。「日本列島フン虫記」(著:塚本珪一、青土社)の中で、糞虫に詳しい塚本氏をもってしても「モンゴルの大草原でこの種を見たとき本当のチャバネを野外で見たことがなかったためにチャバネだと思い込んでしまった」とあるくらいですから、いわんや素人の中村をや、です。
 
IMG_2514-1

(↑Onthophagus marginalis ?)
 得意の言い訳をさせていただくと、チャバネエンマコガネが日本にも生息する事が初めて報告されたのが1984年で、当時私は既に糞虫から離れ浪人生活に突入しており、最近までチャバネエンマコガネの存在すら知らなかったのです。そして、今だに本物のチャバネエンマコガネを見たことがありません。
 塚本氏は、モンゴルの高山地帯の草原で馬糞をひっくり返すと沢山の本種(Onthophagus marginalis)が見られたと記述している点も、私の採集記憶と共通点があります(8月、高地、明るい草原、糞中や糞下に生息)。
 「日本列島フン虫記」は図鑑ではないので、両種の見分け方についての記載はありません。お手紙でも書いて教えを請うのがいいのでしょうが、塚本氏は虫好きの世界では雲上の方なので、ためらっちゃいますね、やっぱ。


今日はここまで。
再見!

このページのトップヘ