むしむしブログ

2019年01月

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 ならまち糞虫館に来てくださる方に世界の面白い糞虫の一つとしてよく紹介するのが、このオオキバセンチコガネ(Lethrus属)の仲間(写真1,2枚目)。Lethrus geminatusなど全長20mm程もある大型の種類のキバ(オスの大顎から長く垂れ下がるキバ状のもの。メスにはない)は、歩行の妨げになるほど長い(写真3枚目)のですが、その使い方については全く知りませんでした。
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 なんせ生きているオオキバセンチコガネなんて見たことありませんから。なので、「全くの想像ですが」と前置きして、「センチコガネに近い仲間なので、日本のセンチコガネのようにオスがメスに乗っかって交尾をします(写真4枚目)。その時にメスに逃げられたり、他のオスに押しのけられたりしないように、オスはメスの首筋をこのオオキバでガッチリ挟み込んで、絶対に離れないようにしているのではないか。」などとお話ししてたんですが・・・。
 糞虫の考えていることまでわかるのではないかと思うほど糞虫の生態に詳しい方のフェイスブックに、ブタペスト在住の日本人の方のブログ
https://ameblo.jp/rosalia-coelestes/entry-12371877829.html
が紹介されており、そこには上を向いて取っ組み合っている2匹のオオキバセンチコガネの姿が。
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 そうなんです。コイツは戦う時に中脚と後脚の4本で体を支えて半立ちの態勢をとり、さらに頭を上に向けるのです。すると垂れ下がったオオキバが相手の方を向くので、武器として使えるというわけです。ちなみにコイツの目は上下に分かれたようになっており、頭を上に向けると後ろと前がよく見えるので、正面の敵と睨み合ってしっかり戦うことが出来そうです。

 この日本人の方は、昨年4月26日にブダペスト郊外の草原でこの様子を観察されたようです。貴重で興味深い観察記録ですよねー。すばらしい!さっそく、今週末からならまち糞虫館での説明にこのネタを取り入れたいと思います。でもねー、私の想像が誤りであるかどうかは、まだわかりませんよね?だって、交尾の様子を観察したら、もしかしたらこの大きなキバでメスを挟み込むかもしれませんから。
  
今日はここまで。
また明日!

 ならまち糞虫館にはときどき虫好きの方がやって来て、いろんなお話が聞くことができるのでとても楽しいです。で、聞いてそのままにしておくのはもったいないので、備忘録的にブログに書かせていただこうと思い立ちました。名付けて「糞虫こぼれ話」。

 今日来館されたチョウ好きの方が10年ほど前に、奈良の正倉院付近の窪地で朽木をのけた時のこと。そこにルリセンチコガネが何十匹もうじゃうじゃ重なり合っていたのを息子さんと一緒に見た、とのことでした。10匹20匹ではなく、数えきれないほどの数が密集していて、あまり衝撃的な光景だったため、いまだに忘れられず、糞虫館が出来たのを知ってわざわざ伝えに来てくれたのです。ちょうど先日(大寒の頃)私は地下数センチという浅いところでセンチコガネを見つけており、もしかしたらセンチコガネの仲間は意外に浅いところで越冬しているのではないかと想像したところだったので「おおっ、これはもしやルリセンチコガネの集団越冬か?!」と思いました。
 まあ、話をよく聞くと、たぶんムラサキツバメというチョウの出現を期待して奈良公園に来て、窪地にはワラビが茂っていたような・・・とのことだったので、その記憶が正しいとすると季節は冬ではなく、テントウムシのような集団越冬していたわけではない可能性が高いということになります。でも、なぜあんなに多くのルリセンチコガネが集まっていたのか、謎は深まるばかりです。数日後、奥様と一緒に再度その場所を訪れた時は、数匹のルリセンチコガネが残っているだけだったそうです。

 観察した時期の記憶がかなり曖昧でしたが「昔の野帳を調べればわかるかも」ともおっしゃっていたので、続報を期待しています。ご本人は写真を撮っておけばよかったとしきりに残念がってましたが、うわーっ!と思った時に限って何もしてないことってありますね。私も昨夏、飼育していたタマオシコガネがシカ糞で糞玉を作り始めたとき、何枚か写真は撮ったのですが、なぜビデオモードで撮らなかったのかと、ホントに残念に思っています。おかげで、来館者の方にはビデオを見てもらう代わりに、私がタマオシコガネになりきってその動作を再現しています。

今日はここまで。
また明日!
 
 

 昨年の夏も豊田市のサマースクールで「虫捕り王座決定戦」をしたり(写真1枚目)、奈良市内の佐保台小学校の放課後スクールで糞虫のお話&スライドしたり、小学生向けの活動は可能な限り対応しているのですが、昨年10月に奈良女子大学附属小学校の先生が郊外学習で生徒を連れていらっしゃいました
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 見学して終わりと思っていたら、何が子供たちの琴線に触れたのかわかりませんが、その後自分たちで糞虫観察会を企画・実行、さらに「糞虫館に行こう!」プロジェクトが立ち上がり、駅前で自作のチラシを通行人に配ったり(役所で許可を取ったらしい・・・)、全校生徒の前で糞虫館設立劇を上演したり(もちろん自作自演)、昼食時には糞虫の歌が校内放送で流れたとか。おー、マイ ガッ!  さらに、今度は新聞を出して世界に発信、という動きもあるらしい・・・(たぶん、日本語でしょうけど)。恐るべし、今どきの子供達です。先日2回目の来訪を受け、今回は生徒さんたちからインタビューを受けたのですが、よく練られた質問なのでこちらも全力で答えざるを得ず、やや子供には難しい説明までしてしまったかも、なんて少し反省しています(写真2,3枚目)。それにしても、「ふんちゅー、ふんちゅー!」と口にする子供たちを親は一体どー思ってるんでしょうーね?
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 これだけならまだ大した影響は無いと思うんですが、実は県内(宇陀)の教頭先生の一団が郊外研修で糞虫館に来たんですよ。私はせいぜい環境や生態系と絡めてお話しするぐらいしかできなかったのですが、助っ人として上記の担任の先生にもお話を少ししていただいたところ大いに盛り上がり、1時間の滞在予定を大幅に過ぎるまで意見交換等をしてらっしゃいました(写真4枚目)。
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 今度の公開授業(?)でも糞虫を取り入れた授業をするようですから、もしかしたら奈良県の小学生の間で糞虫がインフルエンザを凌駕する勢いで大流行するかもしれません。楽しみです。私は、教頭先生の夕食のスケジュールが気になってしょうがなかったんですけど。ごはん、ちゃんと食べられたのかなー。

今日はここまで。
また明日!

 日本産コガネムシ上科図説第1巻〔食糞群〕(監修:コガネムシ研究会)によると、クロツツマグソコガネもヒメツツマグソコガネも1年を通して出現するとなっています。両種とも奈良公園ではそれほど珍しくもなく、カシの木やナンキンハゼの朽木の皮をパカッと剥がせば意外と簡単に観察することができます。特にここ数年は「ナラ枯れ」や台風などで多くの木が倒れており、朽木に住む糞虫達のいい住み家になっています(写真1枚目)。
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 先週観察したヒメツツマグソコガネは、伐採された「ナラ枯れ」のクヌギの樹皮をめくって見つけました。一昨年の5月と6月に奈良公園で私にとって初めてこの両種を見つけてからは、「ホンマに一年中いるんかいな?」と気にかけていましたが、見つけるのが下手な私でもこの1年半の間観察して、ほぼ毎月のように見ることができましたので、間違いありませんね。よく見つかるのは広葉樹の倒木で樹皮が微妙に浮いていて、パカッと捲れるくらい朽ちている幹。地面に横たわるなどしていてかなり湿っていることが重要と感じています(写真2,3,4枚目)。
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 子育てをするのか、7月頃幼虫と一緒にいるという情報があるのですが、まだ確認できてません。ネグロマグソコガネの幼虫よりさらにスリムで小型の可能性もあるので、見過ごしているのかもしれません。どんな形をしているのか?何を食べているのか?どれくらい生きるのか? わからないことだらけの奴らですが、少し珍しい糞虫でもあるので、出会えるだけでもありがたいと思わないといけないのかも。

 ところで、奈良公園に朽木を粉々に粉砕する人が来てますねー。何かお目当ての虫を探してるんでしょうが、朽木は集合住宅みたいなもんで、お目当ての虫以外の生き物もたくさん住んでいます。寒空の下に裸で放り出されるわけですから、かわいそーと思わないのでしょうかね。ほかの生き物のことを考えていないという点で、ある種の害虫を殺そうと殺虫剤をまいて関係のない生き物まで皆殺しにしてしまうのと同じじゃないかなー。

今日はここまで。
また明日!

 今年は1月20日が大寒で、この時期が一年で最も寒い時期のようです。昨日はセマダラマグソコガネに会いに、イヌ糞の多いコースを歩きました。ここは住宅地からほど近い自然遊歩道へと続く道で、ちょうど公衆トイレもあるので犬の散歩には最適。狙い通り、大きなイヌ糞が見つかりました。少し古くてやや固めですがまだ十分にクサい。普段はシカ糞ばかりを扱っているので、いまだにイヌ糞のニオイは好きになれませんねー。ただ、この時期セマダラマグソコガネに会うにはイヌ糞をホジるしかないので早速作業に取り掛かかると、あっさりセマダラマグソコガネが5頭、ネグロマグソコガネも3頭、チャグロマグソコガネ1頭が出てきました。ここまでは予定通りなのですが、イヌ糞の下に穴があり、ピンセットで数センチほじくったところから、なんとピカピカのセンチコガネ(♂)が出てきたのです!(写真1,2枚目) 
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 奈良市内では今年はまだ雪も降っておらず穏やかな冬ですが、最低気温は連日氷点下ですし、最高気温もせいぜい10℃です。さすがに掘り出されたセンチコガネは縮こまって動きません。しかし冬を越すにはあまりに浅すぎるところですし、糞の直下の穴ですから活動していたと考える方が自然です。道路脇の南向きの緩斜面なので、暖かいのかもしれません。ちなみに、持ち帰って部屋に置いておくと、普通に動き回るようになりました。
 糞虫に関わった40年間で12月の上旬に採集した記憶はありますが、一番寒い大寒の頃に採集できるとは思ってもみませんでした。しかも地下数センチのところです。もしかしたら、センチコガネ達は意外に浅いところで冬越ししているのかもしれません。いやいや、もしかしたら、いま目の前でフィルムケースの中を元気に動き回っているコイツは、たまたま寒さに強い奴だったのかもしれません。この冬、マジでセンチコガネを探してみようかなー。

今日はここまで。
また明日。

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