むしむしブログ

2019年03月

 前編の続きです。ならまち糞虫館で受ける最も多い質問がオオセンチコガネの色彩に関すること。「なぜ、こんなに綺麗な色をしているのか?」「なぜ、地域によってこんなに色が違うのか?」 学生の竹本さんは、誰もが抱くこの謎の解明に有用な実験をしているので、掻い摘んで紹介したいと思います。(話が複雑になるので体の大きさに関する部分は割愛しています。)

 実験は、まず京都、滋賀、奈良の3地域からオス・メス計108匹のオオセンチコガネを集め、個体識別マークを刻み、交尾頻度と鞘翅の反射スペクトル、身体の大きさの関係を調査しました。
 結果は、3地域混合でおこなった交尾実験では、同じ地域の個体どうしの交尾回数が特に多いということはなかった。また、体色の類似度と交尾頻度の関係において影響を示す有意な数値は得られなかったとのこと。
 よって、オオセンチコガネは配偶者を選ぶ際に、相手が同じ地域であることは重要ではない、色の違いが配偶者選択に与える影響が大きい可能性は低い、と考察している。

 なるほど、つまり奈良公園の青色のオオセンチコガネは意識的に地元の青いオオセンチコガネを選んでいるわけではないんだ。これが確認できただけでも大きな一歩だと思います。とすると、京都府南部の宇治のあたりには昔から美しい緑色のオオセンチコガネがいるので、中期的には奈良県北部(奈良市)に青緑色のオオセンチコガネが当然出現するはず。鈴鹿の山のオオセンチコガネも緑色らしいので、奈良県東部も青緑色のオオセンチコガネに変わっていくのか・・・。
 いや、すでにその変化は起きていて、先輩世代の糞虫好きの方は、「最近の奈良公園では、ルリセンチコガネの緑っぽいのが増えている」と言っています。また、私の40年前の標本には青緑色のものも少なくないのですが、当時は緑色の強いルリセンチコガネは奈良公園では珍しくて大変綺麗に見えたので、あえて標本に残していたのです。1966年に保育社から出版された標準原色図鑑第2巻「昆虫」(著:中根猛彦ほか)には「紀伊半島のもの(奈良を含む)は藍色に光り、ルリセンチコガネ subsp.ruri Nakane という。」とあり、緑っぽさを全く感じさせない記述がなされています。つまり、50年以上前は藍色と表現されるほど濃い青色だった奈良のオオセンチコガネは、周囲の緑色の個体とも交配を重ね、青緑色の個体が増えてきているのかもしれません。 
 ん?だとしたら、かつてはミドリセンチコガネとまで呼ばれた京都府宇治市あたりの美しい緑色のオオセンチコガネは、最近は青っぽくなっているはずですが、どーなんでしょう? そもそも、この私の妄想は「色彩は遺伝する、混ざると中間色になる」ということが前提になっているので、やはり繁殖・累代飼育して、F1やF2の色がどうなるか、確かめる必要がありますねー。

 奈良公園周辺は、この50年で小川の水量が減少したり湿地が消滅するなど目に見えて乾燥してきており、こういった環境変化が色彩に影響している可能性も捨てきれません。だって、遺伝説より環境説の方が、現在地域によって大きな色彩変化があることの説明がつきやすいように思えるのです。
 奈良公園のルリセンチコガネは、もしかすると我々人間に何か大切なメッセージを送っているのかもしれません。私にはもうムリですが、若い世代や竹本さんのような学生さんには頑張ってもらって、糞虫からのメッセージを読み解いていただきたいものです。

【参考】 
「オオセンチコガネの色彩変異と配偶者選択」(2019年1月23日)
龍谷大学 理工学部 環境ソリューション工学科
竹本 碧 
丸山 敦 准教授
(ならまち糞虫館でもご覧になれます)

今日はここまで。
また明日!

 
 

011

 各地の人気スポットを科学的(?)な視点をもって巡る「おでかけ発見バラエティ かがく de ムチャミタス!」。タレントの小野靖さんが引っ張り、タコ焼きレインボーのアイドルたちがイジったりイジられたりするこの「かがく de ムチャミタス!」は、タコ虹の個性あふれるメンバーたちに心奪われる、実に楽しい教育番組なのです。昨年11月18日(日)にテレビ大阪で放映されて、その1週間後には奈良テレビで再放送されたのですが、なんとまたまた再度、再放送されることになったとの連絡が。ほぼ時を同じくして、外国でも放映するかもしれないとのお話も・・・。まあ、この番組はタレントの石田靖さんとたこ焼きレインボーのやり取りが面白すぎて糞虫の影は薄いのですが、それでも忘れたころに再放送されたりするってことはありがたいことです。
 いやー、ホント春の糞虫シーズンに向けて幸先の良いスタートが切れそうです。というのも、前回奈良放送で放映されてから女性を含む若い人の姿が増え始め、ならまち界隈がオフシーズンとなる12月にオープン以来最多の来場者数を記録したのですよ。もしかしたら、虫のことなんかなーんも知らなくても楽しめる場所だということが、この番組で認知されたのかも。私としても、糞虫館に来てくれることは、糞虫の存在を知ってもらう初めの第一歩なので、大歓迎!二匹目のドジョウはいるかなー?
017

 再々放送日時は、テレビ大阪で3月24日(日) 午前11時から。出演はお笑いタレントの石田靖さんたこ焼きレインボーの堀くるみさんと彩木咲良さん、と私。前回見逃した方、見たけどもう一回見てもいいかなーと思っている方、今回がたぶん本当に最後だと思います。ぜひ見てくださいね!

でも、実は http://www.tv-osaka.co.jp/ip4/muchami/ でこれまでの放送は見れるみたいです。


【参考】たこやきレインボーとは・・・

・たこやきレインボーは、ももいろクローバーZ、私立恵比寿中学などのグループと共にSTARDUST PLANETを構成する。愛称はたこ虹。
・スターダストプロモーション「STARDUST PLANET」が大阪から放つなにわの最終兵器『たこやきレインボー』。甲子園での単独ライブを成功させ、甲子園の土を持って帰ることを目標に2012年に結成された、関西在住の女の子5人組。



今日はここまで。
また明日!
 

 実に興味深いタイトルですね。オオセンチコガネの色彩変異は地域によって大きく異なっており、近畿をざっくり分けると奈良のルリ色系京都南部から滋賀のミドリ色系京都西部から兵庫のアカ色系という感じでしょうか。ならまち糞虫館でも奈良、京都、兵庫のオオセンチコガネを並べて、同一種でありながら大きく色彩が異なることを実感していただいています。で、必ず聞かれるのが「なぜ、生息地によってこんなに色が違うんですか?」。
 私はこれまでは、得意の”オウム返しの術”で「なんででしょうーねー、不思議ですよねぇ。」で終わらせていたんですが、なんと京都の学生さんがこの謎に正面から自らの卒業を賭けて挑みました!「オオセンチコガネの色彩変異と配偶者選択」は、そんな学生さんの想いの詰まった力作なのです(写真1枚目)。
IMG_20190312_003145

 昨年の夏の終わり頃でしょうか、昨年、一人の学生さんが糞虫館に来てオオセンチコガネの色彩変異を調べるようなことを言っていたので、頭で考えるのは簡単でも実際には飼育・繁殖が難しく、まだ誰もその謎を解明できていないようなことをわかったよーなふりをしつつ伝えて、それきり忘れていた(!)のです。が、先週末お母様と2人で来館され、見事卒論としてまとめ上げて無事卒業・進学されたとのこと。おめでとうございます! その時にいただいたのがこのタオル(写真2枚目)。いいでしょ。でも、昨年お会いした時に、感謝されたり役に立つようなことを言った記憶がないんです・・・
IMG_20190310_131227


今日はここまで。
タイトルの卒論の中身については、また後日。お急ぎの方は、ならまち糞虫館で見ることができますよ。

ふん虫企画の放送ですが、なんと英語版に続き、中国語版ができました。
放送は、今日!
詳細は、以下の通り。

「ふん中すごいぜ」 3月12日(火)

中国語ネットチャンネル「華語視界」の中のニュース番組「東京網播間」でライブ配信

ニュース番組「東京網播間」⇒ライブ配信
初回配信    19:00~19:14
再配信 同日  20:00~20:14

https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/zh/live/

その後、「東京網播間」はVOD(ビデオオンデマンド)化されて、翌日まで24時間視聴可能。

24時間経過後は見られなくなります。

「東京網播間」VOD(24時間以内)
https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/zh/

放送の音声は、初回配信日と同日の20時30分からのNHKラジオ中国語放送(短波)でも、放送されます。

でもよく考えると、このブログを見てる人はほとんど中国語はわからないから、関係なかったですね。でもでも、中国13億人が聞いていると思うと、コーフンします。

 野外で採集したマグソコガネ属(Aphodius属)と思われる幼虫の死亡が確認されました。体内の黒い部分の面積が少なくなり蛹になるのかと思っていた個体とは別の個体ですが、地上へ出てきて、元気がなくなり、そのままお亡くなりに・・・。ショックです。しかし、トラは死して皮を残す。コイツらの死を無駄にしないためにも、先日購入した深度合成機能のついたオリンパスのデジカメで撮影を試みました(写真1,2,3,4)。
P3090200-1
P3090166-1
P3090156-1
P3090206-1
今回、デジカメの力を借りて、マグソコガネ(Aphodius属)の幼虫をじっくり観察することができました。見れば見る程成虫の特徴を備えていることがわかります。細くて長い毛と短い毛とでは、何か役割が違うのでしょうね。この2匹はキバの大きさに違いがあるように見えましたが、別種だったのかもしれません。死んでしまった今となっては、確認する術はありませんが。

今日はここまで。
また明日!

このページのトップヘ