むしむしブログ

2019年10月

 以前、コブナシコブスジコガネに大量のダニが憑りついて可哀そうなことになっていましたが、その後についてご報告いたします。最も大切なことはなぜこんなことになるのか、原因を考えることですが、同じ時期に羽化して同じ環境(容器)で飼育しているのに一部の個体(1割程度)のみが極端に被害が酷いことから、比較的弱い個体が狙われたのではないか、ぐらいのことしか思いつきません。でも、ほかの個体と同じくらい元気なんですよねー。でもこの状態を何とか改善してやりたいので、特に酷い8匹を隔離して乾燥気味にして飼育してみました。「握ると団子になるけどすぐに崩れる」程度の湿り気で飼育してましたが、フレークがサラサラになる程度まで乾燥させて飼育しました。すると徐々にダニの数が減少し、10日もしないうちにほぼキレイにダニはいなくなりました!(写真1枚目7/27、2枚目8/3、3枚目8/5)
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 でも、それから1週間ほどしてこの8匹は全て死んでしまいました。ダニが生きていけない程の乾燥は、コブナシコブスジコガネにとってもよくなかったと考えざるを得ません。一方、少し湿り気のある元の容器の50匹余りのコブナシコブスジコガネからは、また5,6匹がダニに覆われた個体が発生していました。気持ち悪いけど、このダニは一体何をしているのでしょう?関節部分でなく固い前翅の表面に何かオイシイモノがついているのでしょうか?同じ容器で飼っているのになぜダニが前翅を覆うほど取りつく個体と全然つかない個体がいるのでしょう?謎は尽きませんが、このまま飼育してこのダニが重大な害を与えている(=個体が早く死んでしまう)かどうかを見極めたいと思います。

今日はここまで。
また明日!

 糞虫好きの大御所、塚本珪一先生はたくさんの糞虫に関する本を書かれていますが、その中の『日本列島フン虫記』には、塚本先生ご自身がフン虫学の師と仰ぐ 河野伊三郎氏と二人で1994年10月13日に楽しそうにミツコブエンマコガネを採集された時の様子が書き記されています。ミツコブエンマコガネは1990年の日本昆虫学会で「外国から日本に侵入したと推定される糞虫」として横井氏から報告されており、当時は同様の黄色い斑紋をもつヤマトエンマコガネと混同されていた例が散見されるなど、かなりのインパクトがあったようです。私は、この本を読んでミツコブエンマコガネに関心を持ち、2017年の5月と9月に兵庫県の夢前川に観察に出かけたのでした。しかし、本の中でお二人はいとも簡単にミツコブエンマコガネを見つけるのですが、虫を見つけるセンスのない私は大苦戦し、この時は2回とも夕方帰る直前に奇跡的に1匹だけ採集できたという、まるで伊三郎氏が私を可哀そうに思って天から遣わしてくれたような不思議な体験をすることになりました。
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 ただ、前の2回の観察で春と秋に成虫が出現することを私なりに確認できたので、今回は1993年9月に夢前川の西を流れる揖保川で伊三郎氏が採集したことの追体験を目指しました。さすがに三度目ですから、今回はバッチリ。干からびた犬糞の下の穴からオス・メス各1匹、メチャメチャ臭い獣糞(イタチ?)から大小4匹のミツコブエンマコガネ(写真1枚目♀、2枚目♀)を見つけることができました。一番多かったのはカドマルエンマコガネで、同じ獣糞から50匹以上見つかりました。河川敷の草地にはシカ糞もあちこちに落ちてましたが乾燥したものが多く、糞虫を見つけることはできませんでした。伊三郎氏は夢前川の東部を流れる市川(1994年10月)や台湾(1980年6月)でもミツコブエンマコガネを採集されています。
 河野伊三郎氏は1997年9月に亡くなられていますが、チャグロマグソコガネ(Aphodius isaburoi ← イサブロイ)やミツコブエンマコガネの名を聞くたびに私の脳裏によみがえり、今なお生き続けています。一度もお会いしたこともお話ししたこともないんですけど、不思議なご縁です。

今日はここまで。
また明日!

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 ご存じとは思いますが、初音ミクは作られたネット上のアイドルなんですが、その初音ミクがなんとゴホンダイコクコガネ(Copris acutidens)のことを歌っているんです! 8月にゴホンダイコクコガネの歌を作ったという方が来館され、仕組みはよく分かりませんが、初音ミクの声でその方(ハンドルネーム:ケルビン14)の作詞・作曲した歌を歌わせることができるらしいのです。その場でさっそく、聞かせていただきました。

 ⇒ https://www.youtube.com/watch?v=txgFkEEXe_o&t=6s
 
 いやー、糞虫とアイドルって、ホントいい組み合わせです。以前テレビの取材でたこ焼きレインボーのメンバーが二人(堀くるみさんと彩木咲良さん)来てくれましたが、糞虫館のイメージとピッタリでした。今回は、youtubeにならまち糞虫館がたっぷり写っている動画をアップしてあるとのことなので、是非一度ご試聴ください。よくできてますよ。(ケルビン14様、8月からずーっと今まで放置してしまってごめんなさい。)

今日はここまで。
また明日!  

 この一か月間で5回滋賀県に糞虫観察に行き、念願のヤマトエンマコガネに会えたのですが、実はもう一つビッグニュースがあります。なんと、シカ糞からマルツヤマグソコガネを1匹見つけました!何百粒というシカ糞を見ても、シカ糞からはヤマトエンマコガネは1匹も見つからなかったのですが、4回目の10/16に見た新鮮なシカ糞にマルツヤマグソコガネが身体を半分突っ込んでいたのです。この丸っこさ、もうサイコ-にカワイイですよね!(写真1枚目)
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 昨年8月に奈良県の宇陀郡で牧場の牛糞から1匹見つけているので、これで2度目。『日本産コガネムシ上科図説』(監修:コガネムシ研究会)によると「広域分布種であるが産地は比較的局所的。春季に個体数を増す」とあり、発生時期が4~10月になっているので、ちょっと貴重な記録かも。
 奈良では、1965年頃は奈良公園の山間部でも観察できたという話があるようですし、『奈良春日山原始林と周辺のコガネムシ』(1998年三木氏ほか)によると、日陰のシカ糞に4~6月に成虫が見られるとのこと。もちろん私は、奈良公園で一度もマルツヤマグソコガネを見たことはないのですが、いるかもしれない、と妄想するだけで楽しくなってきます。

 1950年代の奈良公園には、ヤマトエンマコガネが普通に生息していたらしいです。ヒトの糞を好むらしく、当時は何十匹も飛来したとの記録もあります。春日山や若草山の観光客の野グソ(当時は公衆トイレ事情がよくなかった)を食べて暮らしていたのかもしれません。しかし、少なくとも私が奈良公園に通い始めた1977年頃には、奈良公園一帯ではほぼ見られなくなっていたのではないでしょうか。
 一般に糞虫は、あまり糞の種類を選り好みをせず、いろいろな動物の糞を食べることが多いようです。まあ、セマダラマグソコガネのようにイヌ糞が大好きで、奈良公園の有り余るシカ糞には目もくれない奴もいるのですが、コブマルエンマコガネやチビコエンマコガネのようにイヌ糞が好きなんだけれど無ければシカ糞でもOK!というのが普通です。もしかしたら、ヤマトエンマコガネはヒトの野グソの味がいつまでも忘れられず、シカ糞を拒み続けた結果、奈良公園から姿を消したのかもしれません。
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 この1ヶ月間に滋賀に5回行って観察できたヤマトエンマコガネは、タヌキの溜め糞で2匹、イヌ糞で2匹、ドロドロに腐ったでキノコ1匹。でも一番観察機会の多かったシカ糞では1匹も見つけられませんでした。確かにシカ糞のニオイは上品で、他の強烈なニオイに比べれば吸引力が劣っていても仕方ない気がします。でも、他に食べるものがなければ食べるのではないか。で、貴重なヤマトエンマコガネを持ち帰り(写真1枚目♂、2枚目♀)、奈良公園のシカ糞で飼育することにしました。初めて採集したので標本にしようか迷ったんですが、長期間シカ糞で飼育できるか否かで奈良公園からヤマトエンマコガネが姿を消した大きな要因の一つがわかるかもしれないと思うと、やっぱ試してみるしかないでしょ。楽しみです。ちなみに、私はセマダラマグソコガネ10匹を同様にシカ糞で飼育し全滅させた前科があります。

今日はここまで。
また明日!

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