むしむしブログ

2019年11月

 ならまち糞虫館がオープンして1年4ヶ月が経過しましたが、いまだ飽きられることもなく、月に2、3回のペースで、ならまち糞虫館や市内の公民館などで糞虫のスライド&トークショーをおこなっています。難しい話は抜きにして、奈良公園の糞虫の存在とそのすばらしさを紹介しているだけなのですが、今回ついに大阪にまで進出いたしました。講演したのは、大阪大学大学院理学研究科で講師をされている長野先生が企画・運営されている「第28回動物園前サイエンスカフェ」(写真1枚目)。天王寺のあべのハルカスのそばの商店街のイベントスペースを使った手作り感満載の会場(写真2)なのですが、前を通る買い物客が「何やってんの?」と立ち止まるので、結構な人だかりができてました!中身的にも、参加してくれた中国からの留学生や地元商店街のオッチャンはなかなか積極的でどんどんいろんな事を聞いて来るため、こちらがお題を出すまでもなく自然発生的にディスカッションできたのもいい経験でした。私も小学3年生までは大阪にいたので、大阪のオッチャン、オバチャンのノリがとても楽しく、2時間があっという間に過ぎてしまいましたねー。
第28回動物園前サイエンスカフェ
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 一部を除いて商店街はどこも衰退気味で、ここもかなりの数のお店が夕方になってもシャッターを下ろしたままでした。毎回サイエンスカフェについては、素敵なポスターを作ったりネットで告知したりして、商店街の活性化につながる取り組みの一つにしているようですが、「糞虫」の力をもってしても一朝一夕に解決することは難しそうです。しかし、サイエンスカフェを含む様々なイベントへの取り組みを通じて人と人とのつながりを広めていけば、徐々に賑わいを取り戻すことができるような気がしました。

今日はここまで。
また明日!
 

 立冬も過ぎ、暦のうえではもう冬です。日中は20℃程になりますが、朝晩は10℃を下回るようになりました。長野の師匠によると、オオコブスジコガネ(写真1枚目)は東南アジアの種らしく、普通に飼育していると冬の気温低下で幼虫も成虫も死んでしまうそうです。ウチのは暑い8月はぱったり姿を現さなくなり心配しましたが、9月になるとまた元気な姿を見せるようになり、夜中に5匹が一度に動き回ることもありました。でも、いまだに新成虫らしき個体は見当たらず、今年の成果は8月に掘り出した大小様々な幼虫蛹(1匹・羽化せず)という結果に終わりそうです(写真2、3枚目)。
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 問題は気温が下がるこれからで、実際のところ10月の下旬からまた成虫がまたぱったり出て来なくなったのです。日本産コガネムシ上科図説をみても出現期は9月までなので、放置するとこのまま死んでしまう可能性が高いような気がします。で、エアコンで室温を24℃に設定してみました。すると、その日の晩に早速3匹がウロウロ歩き回っていました。夜行性なので、夜に冷えると活動しなくなるのかもしれません。夜の24℃は過保護だと思うのでもう少し下げて様子を見ることにします。それにしても、自然界ではどのようにして越冬しているのでしょうか?8月上旬に1匹だけですが蛹を確認しているので、オオセンチコガネのように夏の終わりに新成虫が出現し、成虫で越冬する、と考えたくなりますが、夜の室温15℃で出て来なくなるほどの寒がり屋では、成虫での越冬は難しいようにも思えてきます。いろいろ試したい気持ちはありますが、絶滅が心配されるほど稀少なこの小さなカワイイ虫を、まずは無事越冬させてあげることを最優先に飼育したいと考えています。

今日はここまで。
また明日!

 糞虫館にはノートが置いてあって、感想やメッセージを自由に書いていただいています。糞虫の絵を書いていかれる方もいらっしゃいます。先日は絵が同封されたお手紙を2通続けていただきました。1通はルリセンチコガネのきれいな死骸を届けてくれたので標本にしてあげた小学生から阿修羅像、もう1通が10年ほど前に描かれたという思い出のルリセンチコガネ。
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 たかが糞虫、されど糞虫。多くはないけれど、糞虫と不思議な縁で繋がっている人というのは間違いなく存在するようです。糞虫館がそんな人達が集う場所になりつつあるのかな、と感じています。

今日はここまで。
また明日!

 日本最大の糞虫、ダイコクコガネ。デカくてツノがあってカッコよくて、丸っこくて少し愛嬌があって。こんな奴らがウンコの中にいて、しかも地中で丸い大きな糞玉を作って子育てするんです。面白すぎますよね!この目で見てみたいですねー。じつは今、手元には師匠にいただいたダイコクコガネが元気に動き回っています(写真Ⅰ枚目)。最初の頃、ダニが特にたくさんついていたオスとメスを水道水で洗い流しながらブラシでダニ取りをしたところ、数日後にその2匹が続けて死んでしまいました。水道水が原因だと特定できたわけではありませんが、その後はたまにブラシで軽くダニを落とすだけにしています。アフリカ産のタマオシコガネは、ダニ取りの時に水道水で洗っても平気だったので、ダイコクコガネも同じようにしたのですが・・・。良かれと思ってしたこととはいえ、可哀そうなことをしてしまいました。
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 ダイコクコガネは牧場の牛糞で生活しているイメージが強いですが、シカ糞で暮らしている個体群もいるようで、それを私は飼育しています。ふだんからシカ糞を食べていたせいか、夜に奈良公園のシカ糞を投入すると穴からごそごそ這い出てきて、嬉しそうに投入したばかりの糞を掻き分けて潜っていきます。体が大きいだけあって、毎週400~500g投入するシカ糞は3日もすれば跡形もなくなり、ふかふかのマットのようになってしまいます。自然状態では、シカは1回100g前後しか糞をしませんから、いつも食べ物(シカ糞)を探し回っているのかもしれません。でも、育児球を作る時はどうするのでしょう?直径3cmの糞玉でも30gくらいありますから、仮にひとり占めして全部かき集めることができたとしても、3つ。自然界では2つできればいい方ではないでしょうか。単なる私の想像ですけど。んー、今の飼育方法だとシカ糞が不自然にたくさんにあるので、糞玉をたくさん作るかもしれません。1回の糞の投入量は100gくらいに抑えたほうがいいかも・・・。まあ、産卵は春になってからのようですから、そんな心配より、まずはこの冬を無事に乗り切ることが最大の課題です。
 メスは特に丈夫で、3年くらい生きるそうです。今の私にとっては気の遠くなるような長い期間ですが、いまや絶滅の危機に瀕しているといっても過言ではない貴重なダイコクコガネをできるだけ長生きさせてやりたいと思います。

今日はここまで。
また明日!

 

 東京のタガメ博士から孵化直前のタガメの卵塊をいただいて約1ヶ月が経過した8月の末頃から、終令幼虫が5回目の脱皮をして次々に成虫になりました(写真1枚)。100匹以上いた1令幼虫は、途中で共食いしたり溺れたり(!)して、成虫になれたのは結局9匹でした。自然界でも成虫になれるのは数%だと思うので、それよりは少し良かったかも。今は共食いを避けるため1匹づつプラケースで飼っていますが、去年もらったペアを加えると、現在11匹。来年こそ糞虫館内で産卵(写真2枚目)・卵の世話・孵化(写真3枚目)・捕食・脱皮といったタガメの興味深いシーンを一般公開して来館者の皆様にも見てもらえるのではないかと期待しています。
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 でも、タガメのメスは条件が良いと6月の終わりごろから8月にかけて1回につき100個ほどの卵塊を3回ほど産むらしいです。ざっくり計算しても、メス5匹✕卵100個✕3回=1,500匹! とても育てきれません。大事に飼ってくれる虫好きの子供たちにプレゼントするにしても、子供が何百人も糞虫館に見学に来るわけもなく・・・。まあ、これは空想の世界であって、今年のように産卵はしても1匹も孵化しない可能性もあるのでね。でも、タガメって糞虫ほどではないにしろ本当に魅力的な昆虫なので、もしうまくいったら皆さんにも是非育てていただきたいと思っています。

今日はここまで。
また明日!

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