むしむしブログ

2021年05月

 三重県鈴鹿市の郊外を流れる鈴鹿川の河川敷で発見され、2006年に新種としてコガネムシ研究会の方々によって発表されたハバビロコケシマグソコガネ。前胸背版の横隆起がホソケシマグソコガネに似ており、私も以前間違えてしまいました!その後、関東や北陸からも報告されており、結構広く分布しているのではないかと考えられています。奈良は富雄川の河川敷からコケシマグソコガネとともに一度に多数見つかっており、私は側溝の砂や堆積物ごと持ち帰り飼育していました。飼育と言ってもいったい何を食べているのかわからず、時々霧吹きで水をやるだけです。冬になる前に堆積物に紛れ込んでいた10匹ほどのスナゴミムシダマシは全て死んでしまいました。冬になると、ケシマグソコガネは一体何匹いるのかもわからないまま、姿を見ることはなくなりました。
P5230449コケシマグソコガネ越冬
P5230481ハバビロコケシマグソコガネ越冬
P5230577ハバビロコケシマグソコガネ越冬クリーニング後

 一応室内に置き(暖房無し)たまに霧吹きをするだけの世話でしたが、先週、コケシマグソが1匹もぞもぞと姿を現しました(写真1枚目)。さらに、3日前にはプラケース越しに何か動くものが見え、よく見ると中にはケシマグソコガネらしきものの姿が。ピンセットでつまみだして顕微鏡で見ると、紛れもなくハバビロケシマグソコガネ(写真2、3枚目)。ホソケシマグソの特徴である上翅の間室の刺毛がありません。この写真はクリーニングして翅の間室の顆粒間にある垢をおとしてあるのでよくわかりますが、掘り出した直後でクリーニングする前のものが次の写真(写真4枚目)。これではちょっと見分けられません。
P5230553ハバビロコケシマグソコガネ越冬クリーニング前

 本種もコケシマグソコガネも、成虫で越冬するんですね。自然界では枯れた植物などの堆積物の下の川砂の中に潜って冬を越すに違いありません。うちのプラケースは堆積物2~3cm、その下に川砂2~3cmほどしか入れてませんが、室内なので問題なかったのでしょう。元気に活動を再開したのはいいのですが、一体エサは何なのか?乾いたところにいるイメージですが、雨が降ったら水浸しになるようなところに住んでいるし・・・。飼育環境も含めて、謎は深まるばかりです。

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!



 人間不思議なもので、年を取ると頭が固くなり新しいことを考えたり試したりしなくなります。なので、私はいつも意識的に、今までやってなかったことには挑戦するようにしています。5/25の挑戦は、「針葉樹で虫を探す」こと。完全な思い込みなのですが、杉とかヒノキはいい香りのする油脂が含まれていて、虫はそれを嫌うので、特定の種を除いて虫はいないと思っているのです。私がこれまで観察したクロツツマグソコガネとヒメツツマグソコガネはほぼすべてがカシやナンキンハゼなど広葉樹(数匹はシカ糞)。針葉樹の皮をめくって探したことがないのだから、当然の結果です。
P5250657


P5250663針葉樹樹皮下のクロツツ

 先日、『日本産コガネムシ上科図説』のクロツツマグソコガネの解説には「枯れた広葉樹や針葉樹の樹皮下から見つかることが多く」とあり、ヒメツツマグソコガネは「広葉樹の朽木樹皮下から見つかることが多い」とあるのに気付いたのです。で、梅雨の合間にFITを設置するついでに植林された杉林に横たわる直径20㎝くらいの樹皮を剝いでみました。初めての経験、挑戦でした。いました。クロツツマグソコガネを探すために初めて杉の皮を剥いだら、もうそこにいたという、「それはちょっと出来すぎやろー」と思わずひとりツッコミを入れてしまいました。いやー、本当に針葉樹の樹皮下にもクロツツマグソコガネはいるんですねー。これからは自信をもって「針葉樹の樹皮下にもいる事があります」って言えます。逆に、ヒメツツマグソコガネは針葉樹からはあまり見つからないんでしょうかね?この森には両方とも生息しているのを確認済みですから、杉の樹皮下でヒメツツマグソコガネが見つかるか、継続調査をしていきたいと思います。ホント、何事にも小さなことでも挑戦することは大事ですね!

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!

 先週、早くも梅雨入りしたようで連日雨ですが、その間隙を縫うように5/18の午前中、奈良公園で糞虫観察会を開催いたしました。普通は、公民館の生涯学習講座だったり自然観察グループの特別企画だったりするのですが、今回は始めて企業での講演会&観察会となりました。参加者はホテル尾花の従業員さんたちです。というのも、ホテル尾花は興福寺の南100mに位置し、奈良公園とは目と鼻の先なので、そのせいかお客様から綺麗な青い虫(たぶんルリセンチコガネ)の話題も出ることが多く、この際みんなで糞虫のお勉強をしよう!ということになったらしい。
 4月、5月は、講演会や観察会で予約で埋まっていたのがほぼ全てキャンセルになっており、今回久しぶりだったのでやや力が入ってしまいましたが、「センチコガネ」「ダイコクコガネ」「エンマコガネ」「マグソコガネ」の各グループの特徴だけは1時間で頭に叩き込んでもらって、奈良公園に出発。
IMG_7492

 ホテル尾花の精鋭6名の観察隊なので、芝地での観察開始早々、カドマルエンマコガネ、ナガスネエンマコガネ、チビコエンマコガネ、クロツヤマグソコガネ、ウスイロマグソコガネなどを次々に見つけて大はしゃぎしてました。林地に場所を移して「こういった直射日光の当たらない場所では、・・・」との説明と探し方のコツを私が言い終わらないらないうちに「いました!」との声が(写真1枚目)。いきなりメインディッシュのルリセンチコガネ。あかんやろー、それは。その後も順調にあちこちで「あっ、いました!」の声が上がり、ほとんどの方が自力で青い宝石を見つけることができました。コカブトムシやクロツヤマグソコガネの幼虫も見つかり、あとゴホンダイコクコガネが見つかればいいなーと思って粘ったのですがそれはかなわず、タイムオーバーとなりました。さすがに一の鳥居周辺でゴホンダイコクを見つけるのは難しかったですね。でも皆さん自分で色々な種類の糞虫を見つけ、糞の中からほじくり出し、手にのせてまじまじと見たので、今後はお客様との糞虫談議が盛り上がること請け合いです。ホテル尾花のロビーが糞虫好きのお客様で溢れかえる日はそう遠くないでしょう。コロナに負けるな!がんばれ、ホテル尾花!!

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!
 

 2020年7月25日に撮影したものですが、飼育していたエンマコガネ(ナガスネエンマコガネ?)の幼虫がウジ虫というかイモ虫みたいな柔らかそうな幼虫を襲ってモグモグ食べてました。喰ってるところを狙って撮ったわけではなく、エンマコガネの幼虫の写真を見返していたら気付いたという恥ずかしい話です。

17:31 幼虫の観察のため、部屋を壊したところ。左に薄茶色のイモ虫がいます。(写真1枚目)
 P7250092ウジを喰うエンマコガネ幼虫

17:41 幼虫は部屋の修理をしていますが、イモ虫は部屋の縁までやってきました。(写真2枚目)
P7250135ウジを喰うエンマコガネ幼虫
  
17:42 お尻から糞を出して修理する様子は、タマオシコガネの幼虫が糞玉を修理する時と同じですね。(写真3枚目)
P7250140ウジを喰うエンマコガネ幼虫

17:44 すでに幼虫はイモ虫に襲いかかっているようです。(写真4枚目)

P7250145ウジを喰うエンマコガネ幼虫

17:45 イモ虫は糞に潜って逃げようとしているようですが、幼虫は喰いついたまま離しません。(写真5枚目)
P7250147ウジを喰うエンマコガネ幼虫

17:45 イモ虫の頭の方に嚙みついているようです。(写真6枚目)
P7250148ウジを喰うエンマコガネ幼虫

17:46 イモ虫は体をひねって最後の抵抗を試みていますが、お構いなく食べ始めたようです。(写真7枚目)
P7250151ウジを喰うエンマコガネの幼虫

17:47  3分の1くらい食べたでしょうか、イモ虫から出た体液が光っています。(写真8枚目)
P7250155ウジを喰うエンマコガネ幼虫

17:48 イモ虫の体がちぎれたせいか、いったんイモ虫を離しました。ちぎれた破片を食べていたのかもしれません。(写真9枚目)
P7250161エンマコガネの幼虫

19:49 再び食べ始めました。(写真10枚目)
P7250162ウジを喰うエンマコガネ幼虫

 目の前で糞虫の幼虫がイモ虫を襲って食べているシーンが展開されていたのに全然気付かなかったという自分の観察力の無さに愕然としているのですが、偶然とはいえ、写真にしっかり残っていたのは幸いでした。奈良公園の糞虫が直接的にハエの発生を抑制していることを示す決定的な証拠なんじゃないでしょうか。このイモ虫がなんの幼虫なのか?も非常に気になりますねー。わかる人がいたらぜひ教えて下さい! 大きく成長したハエの幼虫(ウジ虫)は皮が硬くて恐らく太刀打ちできないと思われますが、ハエの卵や孵化したばかりのウジ虫であれば、糞虫のいい餌になっている可能性が高いと考えています。

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!

P5130429ゴホンダイコク巣穴
 ご存じの通り、ダイコクコガネは地下に育児室を作ります。なので、その空間の分だけ土を外に押し出すため、入り口付近に大きな盛り土ができるそうです。考えてみれば当たり前ですね。ならば、ゴホンダイコクコガネも育児室を作るので、小さいけれどやはり盛り土ができるのではないか?それを見つけて掘れば、糞玉が出てくるのではないか?
 先週、奈良公園で小さな盛り土があったのを見て、このことに突然気が付いたのです。奈良公園は(場所によるのでしょうが)意外に腐葉土に厚みはなくすぐ土が出てくるので、盛り土は地下にそれ相応の空間がある証拠。乾燥した赤土の芝地ではジガバチが穴掘りするのをよく見かけますが、林内のしっとりした地面では見かけません。穴の大きさからも、ゴホンダイコクコガネのように思えてきました。で、小さなスコップとピンセットで盛り土をそっとのけて、穴に小枝を差し込んで見失わないようにして、慎重に穴に沿って斜めに掘り進めていきました。スコップを差し込んでグッと持ち上げて土の塊を取り除くと穴の向こうに黒光りする物体。さらにピンセットで糞を取り除くと、粒糞とその粉に頭を突っ込んでいるゴホンダイコクコガネのメスがはっきりと見えました(写真2枚目)。
P5130328ゴホンダイコク♀

 入り口を広げて中から粒糞を取り出すと15個もあります。完全に粉砕されたものもありますから、20粒くらいは運び込んでいます(全て小鹿の小さな粒糞でした)。部屋の反対側からは立派なオスも出てきました(写真3枚目)。糞玉の世話をするのはメスだけですが、今はまだ糞玉の材料を練っている最中なのでオスもいたのでしょう。
P5130362ゴホンダイコク巣穴

 上部の土を取り除いて巣穴の形や大きさを確認し、もしかしてコツヤマグソコガネなんかがいたりして、などとブツブツ言いながら糞の粉を丁寧に取り除くと、右上の隅っこに隠れているコツヤマグソコガネをホントに発見しました!(写真3,4枚目) 
P5130454巣穴のコツヤマグソ
P5130455巣穴のコツヤマグソ

 以前、たまたま糞玉を掘り出したことはありますが、盛り土から育児室を掘り当ててゴホンダイコクのペアを発見し、さらにその部屋には盗食寄生をしているのではないかと言われているコツヤマグソコガネが隠れていたなんて、出来すぎです。今月の運を全部使い果たすぐらいの幸運です。今日のブログの長さが、私の興奮度合いを示しています。まあ、取り立てて新たな発見があったわけではありませんが、この目で見れたこの嬉しさは、ちょっと言葉では表現できませんね。糞虫の観察はこれだからやめられません。サイコーに楽しいです!
 この続きを見るために、このペアのゴホンダイコクとコツヤマグソコガネを一緒に糞虫館で飼っています。うまくいったら、また後日報告いたします。

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう! 

このページのトップヘ