むしむしブログ

2023年03月

 アカマダラエンマコガネはシカ糞で飼育は可能なのか?この謎を解明するために、というよりは簡単に手に入るフンはシカ糞しかないので、シカ糞での飼育を開始したのが3/9。今日は3/30なのでちょうど3週間が経過しました。砂を敷いた飼育容器を準備するつもりだったので、ティッシュの上にシカ糞塊を置いただけの仮住まい。年度末バタバタして気がついたら3週間が経過。容器を見ると白い毛カビに覆われた糞塊(写真1枚目の上部分。下部分は新しいシカ糞)が・・・。まずいなー、大丈夫かなーと恐る恐る糞塊をひっくり返して探すと、いました!元気です!!(写真2、3枚目)
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 仮住まいなのであまり活動して体力を使うといけないので、温室に置かなかったのが良かったのかもしれません。沖縄島より台湾に近い南国石垣市の最低気温は20℃前後ですが、奈良市は5~10℃。最高気温は石垣市は25℃前後ですが、奈良市は20℃以下。糞塊一つくらいであればナガスネエンマコガネでも3週間も放置すれば原形をとどめないほどに粉砕してしまいますが、糞塊があまり破壊されていなかったのは、南国育ちのアカマダラエンマコガネが低温のためあまり動き回らなかったからだと考えています。5℃前後の寒さは、アカマダラエンマコガネは十分耐えられるようですがあまり活動しなくなるようです。もし0℃ぐらいでも耐えられるようであれば、いつかは本州まで生息地を北上させてくるかもしれませんね。  
 これから飼育環境を改善して、シカ糞で長期飼育が可能なのか、シカ糞でも繁殖するのか、等について、観察していきたいと思います。はるばる石垣市から連れてきたわけですから、ムダに死なせるわけにはいきません。

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!
5/14(日)は奈良公園糞虫観察会で会いましょう!!
(参加するには事前登録が必要です。詳細はコチラ⇒ http://www.kogane.jp/blog/topics/5-14-10/ )

 コロナ禍で2019年を最後に開催を見送ってましたが、今年はあの『日本産コガネムシ上科図説 (食糞群)』を監修したコガネムシ研究会と『たくましくて美しい糞虫図鑑』のならまち糞虫館が力を合わせて大々的に第10回奈良公園糞虫観察会を開催いたしますっ!と言っても、4年前も大々的にやっているので、規模的には100人というのは現状維持ですけどね。
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 ただ、4年前に比べると「糞虫」への注目度は確実に上がっているし、家族での参加が多いし、今年から「先着100名限定」なので、参加希望の方は早めにコガネムシ研究会のホームページ⇒  http://www.kogane.jp/blog/topics/5-14-10/ から申し込んだほうがいいと思います。興味のあるお友達にもぜひ教えてあげてください。これから徐々に自然観察グループや公民館、学校などにお知らせしていく予定です。

日  時:2023年5月14日(日),午前9時受付開始,午前9時30分から観察会開始.
場  所:奈良公園飛火野の芝生広場(集合場所は下の地図をご覧下さい).
参加資格:どなたでも参加できますが,小学6年生以下の方は必ず保護者同伴でお願いします.募集人数は先着100人です.
参 加 費:一人500円(保険代金を含む)
用意するもの:飲み物,昼食,白いバット(20×20㎝ぐらい,この中に鹿の糞を入れて割ります),割り箸,空気穴を空けたタッパー(水で湿らせたティッシュを入れておく),ピンセット,小さなスコップ.

観察会は,10人前後のグループに分かれて行ない,12時に終了します.最後に記念写真を撮影し,記念品等を配布します(協賛:株式会社 黄金糖).その後は芝生広場で各自昼食を摂ってから解散ですが,さらにディープなフンコロガシの世界を見たい人は「ならまち糞虫館」へ移動して館長の話を聞きましょう.

参加申込:4月30日までに事前登録が必要です.先着100人の受け付けです.参加登録フォームhttps://forms.gle/fKJ6aVfqE1YLK3Cn6(ここをクリック)あるいは画面下のQRコードから事前登録をお願いします.

当日は小雨決行ですが大雨や災害等で中止となる場合があります.その場合は事前登録いただいたメールアドレス宛に前日午後7時30分ごろに連絡します.ご不明な点は下記のメールアドレス/ウェブサイト宛にお問い合わせ下さい.
コガネムシ研究会:taikai@kogane.jp / https://www.kogane.jp/
ならまち糞虫館:https://www.hunchukan.jp/

下のQRコードをスマートフォンで読み取ると参加登録フォームが開きます。


登録フォーム


今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!

 ようやくwithコロナへと舵が切られましたが、学生時代の最重要行事と言っても過言ではない修学旅行や卒業旅行に行けなかった子供も多かったと思います。出張授業にも行っている奈良学園小学校の今年の卒業遠足の行先は、ならまち糞虫館。普通は「ありえへーん!」という子供たちの声が聞こえてきそうですが、実は奈良学園小学校ではコースが選択制になっていて ➀ものづくりコース、➁自然コース、③産業コースの3つから好きなコースを選べるのです。で、なんと6年生55人中20人が糞虫館へ行く➁自然コースを選んでくれたのです!嬉しい!!しかも約半分が女子。昆虫=男子という固定概念が染みついた我々オジサン世代こそがしっかり時代の変化についていかなくては。
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 まあ、実際に糞虫館で過ごす時間は30分程で、メインは世界遺産の元興寺でお話を聞いたり国宝館の見学、そして天皇陛下も宿泊されたあの奈良ホテルでテーブルマナー講習を受けながらの昼食会。いいなー。そういえば一昨年、奈良学園小学校への初めての出張授業で糞虫館の実体顕微鏡6台を持ち込んで授業をしたのですが、昨年は学校側が生徒2人に1台準備しており、さらに先生用に大型モニターに映し出す装置まで設置されていたのを思い出しました。恵まれてますねー。
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 HPを見ると、奈良学園小学校の生徒数は323名。糞虫の出張授業を一昨年受けた子(現4年生)が62名、昨年(現3年生)は57名、今回6年生の卒業遠足で20名、計139名となり、なんと43%の生徒が私の糞虫講演を聞いたことになります。奈良女子大附属小学校も受講率はかなりの割合になっていると思いますが、まだまだ多くの小学校とはご縁がありません。私は、糞虫の聖地・奈良公園のある奈良市内の全ての小学校で糞虫の出張授業を毎年やりたいと思っています。SDGsとか生物多様性とか外来種問題とか、こういった世界が直面する課題について、糞虫を通して深く理解することができると考えています。

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!
『たくましくて美しい糞虫図鑑』(創元社)、全国の書店で好評発売中!
  

 アカマダラエンマコガネ(Onthophagus lutosopistus)を飼育したことがある人は、そう多くはいないでしょう。なぜならこの種は沖縄島よりさらに南西の八重山諸島などにしか生息していないからです。『日本産コガネムシ上科図説(食糞群)』(監修:コガネムシ研究会)によると、真夏の7~9月以外が出現期で、国内ではやや珍しい種のようです。生息地までたどり着ければ、みつけることはさほど難しくはないといったところでしょうか。
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 先日(R5/3/9)、大学受験を終えた某糞虫男子が石垣島に行って採集(R5/3/6)したアカマダラエンマコガネを生きたままならまち糞虫館に持ってきてくれました!1匹は輸送の途中で息絶えていたので標本にしました(写真2枚目)が、もう1匹は調子がよさそうだったので、シカ糞の塊を入れて5分くらいして見ると潜り込んで自分のスペースを作り、そこでくつろいでいました。(写真1枚目)
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 図説にはアカマダラエンマコガネは「腐敗動物質、牛・人等の糞に集まる」との記載があり、セマダラマグソコガネのようにシカ糞では長期飼育が難しい種もいますが、コイツは餌としてはシカ糞でも全然OK!です。八重山諸島には野生のシカが生息していないだけなのかもしれません。2個体ともメスで体長約8㎜前後で、この種としては標準サイズ。体形は典型的なエンマコガネの形で、ツノやコブは無く、光沢は鈍く、色は真っ黒ではなくやや褐色でニッコウコエンマコガネに近い色味です。オスは前脚が長く伸びるので、図説で見るたびにナガスネエンマコガネに似てるなーと思ってましたが、実物はフトカドエンマコガネぐらいの大きさがあるし黒褐色なので、見分けるのは難しくありません。ただ、前翅のオレンジ色の模様は、意外に目立たないので要注意です。

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 飼育するにあたり、奈良市の気温は日中は20℃近くまで上がりますが夜は5℃前後まで下がるため、生息地の石垣島並みに温かくするため部屋のオイルヒーターを24時間稼働させて15℃~24℃にキープ。電気代がめっちゃかかるけど、エアコンよりもはるかに温度変化がマイルドなので、アカマダラエンマコガネに満足してもらえると思います。水槽もたくさん置いてあるので湿度も相当あって、この部屋に入ると南国気分が味わえます。メス1匹での飼育ですが、野外で既に交尾をしている可能性があるので、実は産卵するのを期待しているんです。亜熱帯の島の環境は整えたし、餌はシカ糞でいけそうだし(写真3枚目)、あとは私の根気が続けば、繁殖の報告ができるかもしれません。期待せずにお待ちください。

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!
『たくましくて美しい糞虫図鑑』(創元社)、全国の書店で好評発売中!

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