むしむしブログ

2023年09月

 前回9/9に2個目の西洋ナシ型糞玉を割って残念な結果でしたが、ちょうど糞玉を埋めてから2ヶ月が経過した9/17に3個目の糞玉を割ってみました。ケース越しにきれいで大きめの糞玉であることは見えていたのですが、掘り出すと、とんがった部分が反対側を向いていただけで、見事な西洋ナシ型であることが確認できました(写真1枚目)。 重さは18.6g、大きさは4.5×4.0cmくらい(写真2枚目)。大きさも湿り具合もいい感じ。2個目のように菌糸状のモノも絡みついていません。ただ、重さがダメだった2個目とあまり変わらないのが気になります。
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 卵がうまく育っていれば既に60日が経過しているので、蛹になっているはず。ナイフで、注意深く割ってみると・・・(写真3枚目)
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 今回もダニは発生しておらず、幼虫の死骸の頭の大きさが9/9に割った糞玉の幼虫と同じくらいまで育って死んでいます。フンコロガシが糞玉を埋めたのは共に7/17なので、同じ頃に死んだようです。思い当たるのは、プラケースを1週間ほど2階のエアコンの無い部屋に置いた時期があり、この時に猛暑で室温が35℃を越えていたかもしれないということ。土の中とはいえ小さなプラケースなので、夜間も気温が下がらない閉めきった室内だと糞玉の中まで同じくらいまで温度が上がり、それが長時間続いた可能性があります。もしそのせいでそれまで順調に育っていた幼虫が死んでしまったとすれば(悲しいけれど)納得がいきます。でも、その推理が当たっていたら、あと一つ残っている7/17の糞玉は(たぶん8/4の糞玉も)絶望的です。となると、期待できるのは9月以降に作られた2個だけということになります。スカラベ・サクレはアフリカにも広く生息していますが、アフリカ=暑い! だから暑さには強いと漠然と考えていた自分のバカさ加減に腹が立ちます。今はただ「なんとか生きていてくれ」と祈るよりほかありません。

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!
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2020年10月、富雄川(奈良県大和郡山市)でコケシマグソコガネとともにハバビロコケシマグソコガネを多数観察できたのですが、先日9/19に同じ場所に友人と2人で行ってきました。周囲の様子は3年前とほとんど変わりがなく、3年前にハバビロコケシマグソコガネ等をたくさん見つけた水の無い側溝に生えた草の根周辺を集中的に探しました。2人で2時間篩い続け、コケシマグソ5匹(写真1枚目)、ハバビロコケシマグソ1匹(写真2枚目)。数は少なかったけれど、今回も2020年と同じ2種類のケシマグソコガネを見つけることができました。
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 午後からは場所を木津川(京都府木津川市)に移してケシマグソコガネを探しました。朝からずーっと砂ばかり見ているので、目がチカチカして頭も朦朧としてきた中で探し続け、辛うじて2匹をゲット。家で実体顕微鏡で観察すると、ホソケシマグソコガネ(写真3枚目)とコケシマグソコガネ(写真4枚目)でした。
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 『日本産コガネムシ上科図説』(監修:コガネムシ研究会)によると、コケシマグソコガネは星3つ☆☆☆でどこにでもいるわけではないようですが、「芝生の移植で分布を広げるためどこで採れても不思議ではない」 と書かれています。実際、私も夢前川(兵庫県姫路市)や若草山(奈良市)、富雄川(奈良県大和郡山市)、木津川(京都府木津川市)など様々な場所で見つけています。場所的には芝生の移植とは関係なさそうですが、いずれも細かい少し乾燥気味の砂地に生える草の根際がお好みのようです。
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P5230577-1ハバビロコケシマグソコガネ越冬クリーニング後

 ホソケシマグソコガネとハバビロコケシマグソコガネは、前胸背の模様が似ているので混同しているケースが少なくないようです(私もその一人でした)。ちなみに2006年に新種として発表されたハバビロコケシマグソコガネは『日本産コガネムシ上科図説に写真が掲載されていませんが、ホソケシマグソコガネの特徴である「上翅の間室に列生する刺毛」(ホソケシマグソ:写真5枚目)が無い(ハバビロコケシマグソのクリーニング後:写真6枚目)ので見分けることができます。ホソケシマグソコガネの標本をお持ちの方は顕微鏡を使ってぜひ確かめてみてください。

今日はここまで。
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 奈良市東部の山添村有数の観光スポット「フォレストパーク神野山」にある めえめえ牧場。もう何回目なのかわからないのですが、今年もここで先週末(9/17)糞虫トーク&観察会をやらせていただきました。名前でわかるように、ここにいるのはヒツジなので、どんな糞虫がいるのか私も大変興味があって、いつもワクワクしながら観察しています。一方で、牧場は陽当たりがいい草地なので、参加者が期待するルリセンチコガネが見つかりにくい環境です(写真1枚目)。
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「糞虫」観察会なので、場所や季節、糞の種類が違えば観察できる糞虫の種類は異なって当然なのですが、ほとんどの親子は生きた「ルリセンチコガネ」を見たいと思っています。チラシに大きくルリセンチコガネの写真を使っている我々サイドにも責任はあるんですけどね(写真2枚目)。
20230917めえめえ牧場チラシ「糞虫の世界」

 もちろん生息していない虫を見せることはできませんが、この神野山にはルリセンチコガネが生息しており、牧場の側溝などにもよく死骸が転がっているので、何とか見つかるようにしてあげたいわけです。そこで、ルリセンチコガネを誘い出すために、観察会の前日にめえめえ牧場のスタッフがヒツジの糞を牧場内外の数か所に山積みしています。そして観察会の前半は牧場内の明るい草地で観察、後半は脇の林の中に置かれたヒツジ糞の山をつついてどんな糞虫が来ているか観察しています。小学校低学年の子供も多いので「環境の違い」を言葉で説明するより、憧れのルリセンチが実際にどんな場所で見つかるかを体験することで、そこから環境に違いを意識するようになるんじゃないかなーと考えています。さらに、観察会の終了後にお話した家族はルリセンチよりも「牧場にどんなエンマコガネがいるか見たかった」と言っていたので、糞虫沼にズブズブとハマりつつある家族も出てきたようです。 
 今朝は神野山から大雲海! | 奈良観光JP さん
 山添村は幻想的な雲海を見ることができることで有名ですし、奈良市内から一番近い星空観察スポットとしても売り出し中です。また、森林を切り開いてメガソーラーを設置する本末転倒の開発には反対の声を上げるなど、都市の後追いをするのではなく村の「地域資源」を活かす取り組みを積極的に行っているようです。私の糞虫トーク&観察会に参加した子供たちがこうした村の考え方を引き継ぎ、推し進めるチカラになってくれることを期待しています。

今日はここまで。
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 9/13の12時過ぎにフンコロガシ(スカラベ・サクレ)の蛹が羽化したのを確認しましたが、写真1枚目の通り、まだあちこちに蛹の皮が残っており、体色は薄茶色で腹側から中身が透けて見えるようです。十分硬くなるにはもう少し時間が必要と思われました。糞玉のカラは大きく壊されていますが、蛹の皮をびりびりに破って羽化するのに支障はないようです。その日の20時頃には蛹の皮はほぼ自分の手を使って取り払われていました。(写真2枚目)
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 翌日の9/14、体色もかなり赤黒くなり(写真3枚目)、容器を動かすと体の向きを素早く変えるなど反応します。出ようと思えば簡単に出れるはずですが、新成虫は出てきません。羽化3日後の9/16、まだ体色が真っ黒にはなっていませんが、十分な硬さがありそうな雰囲気になっています。もう出てきても大丈夫だと思うのですが、まだ糞玉のカラから出ようとはしません(写真4枚目)。何かきっかけがないと出てこないのかなぁ?
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 9/18の夕方5時頃に見るとカラの外に出てました(写真5枚目)。羽化してから5日経っていますが、ファーブル昆虫記によると、自然界だと羽化しても糞玉の硬いカラの中に閉じ込められたままで、雨季になって雨で糞玉のカラが柔らかくなるまで出てこれないらしい。ということは、体内にまだまだ栄養分を蓄えている可能性が高く、しばらくは糞を食べない可能性があります。確かめるため、小さな糞を入れてみました。
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 糞を入れるとすぐに食べ始めたので、今度は大きな糞塊をセットしてみました。最初は張り付いて食べてましたが、10分もしないうちに小さな糞玉を手際よく丸めて転がし始めました(写真6、7枚目)。誰からも教わることもなく、フンコロガシは生まれながらにしてフンコロガシでした。
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 新成虫がオスなのかメスなのかは私にはわかりませんが、仮にメスだとしても交尾前なので有精卵が産めません。作った糞玉が小型だったのは、自分が食べるための糞玉だったからと私は考えています。ちなみに7枚目の写真の奥で糞塊を食べている黒色の個体は、糞玉を転がす新成虫の母親(メス)です。自然界ではこのように親子が出会う可能性はぼぼ0ですが、飼育下ならでは感動(?)のワンシーンです。もちろん二匹はお互い挨拶もしませんでしたけどね。

今日はここまで。
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やりました!日本初ではないだろうけど、自分的にはもちろん初めてフンコロガシ(スカラベ・サクレ)の繁殖に成功いたしました。糞玉を作るところ、転がすところ、土に埋めるところ、西洋ナシ型の糞玉、卵、幼虫、蛹、そして本日(9/13)ついに糞玉の中で羽化した新成虫を観察することが出来ました。
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 アフリカからはるばる日本に連れてきて、未知の食材であるニホンジカの糞で世代を繋ぐことができて、嬉しい!と同時になんか少しほっとしています。詳細は後日。とりあえずご報告まで。

今日はここまで。
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