クロツヤマグソコガネは『日本産コガネムシ上科図説』(監修:コガネムシ研究会)によると「近年本州では激減し、分布は局所的となっている・・・」(★★★:準稀種)とありますが、春先の奈良公園では普通に見ることができます。逆に、それ以外の時期は全く見ることがありません。6月から翌年の3月まで、クロツヤマグソコガネはどこでどのように過ごしているのでしょうか?

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 で、4月2日に成虫12匹の飼育を始めました。マグソコガネの仲間ではありますが、身体は大きく6.4~8.1mmもあり、ナガスネエンマコガネほどの大きさで、その糞の分解能力は相当高いものがあります。十分なシカ糞を与えるとすぐにあちこちで交尾をはじめ、4月の中頃には幼虫が育っており、粉砕された糞の中から大小さまざまな大きさの幼虫がわんさか出てきました。

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 蛹を最初に確認できたのは5月の中旬。6月9日には前蛹から翌日蛹になるのを確認しました。私はこの時点で、蛹で翌年の春まで過ごすものと思い込み、木の板でふたをして観察を終わりにしました。←言い訳でした。実は「ならまち糞虫館」のオープンが迫っていたので忙しく、軒下に放置してしまったのです。

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 虫の知らせというか、何か気になって、8月23日に表面はすっかりカラカラに干乾びてしまった飼育容器から土を描きだすと、下の方は結構湿り気が残っています。そしてあちこちに黒いツヤのある物体が・・・。すべてクロツヤマグソコガネでした。最初に投入した成虫12匹にしては数が多すぎます。土の中から破片も含めて全てを拾い集めると、死骸が34匹、生体が20匹。表面の糞の中にもたくさん埋もれてましたので、70から80匹はいたと考えられます。

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 飼育観察結果をまとめると、クロツヤマグソコガネは、3月下旬に出現する成虫はすぐに交尾をして産卵、4月中旬には次世代の幼虫が育ちはじめ、幼虫は1か月程で蛹になります。蛹が羽化した時期は不明ですが、蛹室の中の死骸に菌類がはびこっていた様子やほかの死骸の傷み具合から、やはり1か月程度で羽化したのではないでしょうか。生きていた個体は容器の下部の湿り気の残った場所の蛹室の中にいました。蛹室は壊れやすく、土を描きだすときに投げ出された成虫はあまり動かず、仮死状態のようにも見えましたが静かにしているとゆっくりと動き出します。

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 今は13匹の成虫を引き続き飼育していますが、ずっと土に潜ったままです。夏眠しているのかもしれません。秋になって気温が下がったころに掘り出してシカ糞を与えてみよう、などと考えています。この成虫が夏・秋・冬と眠り続け、来年の春に元気に活動を始めるのが確認できたら、クロツヤマグソコガネの一生のサイクルが確認できたことになると考えています。

 どなたがクロツヤマグソコガネを飼育したことがある方がいらっしゃったら、情報交換などさせていただきたく、ご連絡をお待ちしております。

おやすみなさい。