奈良公園のシカ糞では、本当にいろいろな糞虫を見ることができます。イヌ糞好き(と私は思っている)のコブマルエンマコガネやチビコエンマコガネだって、ふつうに見ることができます。一方で、奈良公園にいるんだけどもシカ糞には来ない種類もいます。よっぽど嫌いなんでしょうね。その代表がセマダラマグソコガネ。こいつは奈良公園に隣接する道路脇に放置されたイヌ糞で冬になるとふつうに見つけることができます(写真1枚目)が、シカ糞では見つかりません。今まで奈良公園で何万個もシカ糞をほじくってきた私が言うのですから間違いないです。昨年、初めてシカ糞の下からセマダラマグソコガネを発見して驚き、念のためその個体は証拠として標本にしたくらいです。で、今度は初めてイノシシの糞の下から見つかりました(写真2枚目)。糞に潜り込んでいなかったし、食痕もなかったので、食べたとは言い切れませんが、イノシシ糞に誘引されたことは確かでしょう。飛んできたけどもうかなり硬くなっていて潜り込めなかったのかもしれません。
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 最近は最近はイヌを飼う人のマナー向上に伴い、道端のイヌ糞も少なくなりました。その昔、奈良公園付近の街道沿いで荷役用牛馬の糞で暮らしていたオオフタホシマグソコガネやツノコガネが牛馬と共に姿を消したように、セマダラマグソコガネを見かけなくなる日が来るかもしれません。好き嫌いを言わずに、イノシシ糞やシカ糞を食べてくれたらいいんですけど。『日本産コガネムシ上科図説(第1巻 食糞群)』によると、セマダラマグソコガネは日本中に広く生息しているごく一般的な種類で「イヌ糞で見つかることが多く、ヒト、ネコ、タヌキ、サル、ウシ等の糞にも集まる。」と書いてありました。日本の自然界に最も多く存在するシカ糞やイノシシ糞を食べないのに日本中でたくさん見られるなんて、不思議だと思いませんか?

今日はここまで。
週末、糞虫館で会いましょう!