奈良公園の環境は開発や農薬散布を免れ、比較的よく守られているほうだと思います。しかし、地球温暖化や増えすぎたシカによる食害、ナラ枯れなど虫の異常発生からは逃れられません。データをもっているわけではありませんが、シカに食われて若木がほとんど育たない奈良公園の林は老化が進み、そこにナラ枯れが追い打ちをかけて明るい所が増えてきました。暗すぎて花を付けなかったアセビが最近は花を咲かせる場所が増えています。しっとりしていた地面も、晴天が続くとすぐに乾くようになりました。
 前置きが長くなりましたが、土壌が乾くとあらゆる生物に影響があるのでしょうが、フン虫王子としては糞虫が心配なわけで、特に湿ったカビの生えるような古いシカ糞を食べているクロツブマグソコガネの安否を気にしています。で、今年も探しに行きました。(写真1,2枚目)
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 クロツブマグソコガネは、新鮮な糞や乾いた糞ではまず見つかりません。落ち葉の下に埋もれていつも湿っている古いシカ糞にいるのです。なので、日の当たらない落ち葉が溜まりやすい場所で、シカの通り道になっていて糞をよくするところを探します。適当な場所で上の方の落ち葉や糞を木の枝でどんどんどけていくと(写真3枚目)、湿った腐葉土とそこに半分埋もれた古いシカ糞が姿を現します。そこをよく探せば見つかるのです。まあ、奈良公園はシカ糞だらけなのでこんなやり方でいいんですけど、ほかの場所ではまず通用しませんね。(のけた落ち葉はわからないように戻します)
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 本種は、ほんとによく探さないとなかなか見つからないのですが、昨日はすぐに見つかりました。1㎡くらい落ち葉をめくっただけで、7匹発見。別の場所でも見つけました。前日、いい感じで雨が降っていたので、喜んだクロツブマグソコガネが動き回っていたのかもしれません。奈良公園の林内のほとんどの場所に古いシカ糞は存在するので、単純計算するとすごい数のクロツブマグソコガネがいる事になりますが、悲しいことに実際にはなかなかいないんですよ。

今日はここまで。
週末に糞虫館で会いましょう!