子どもの発想は自由で面白いですねーなんて、わかったような口をきいていた自分が恥ずかしい。本当に自由に、不思議に思ったこと、知りたいと思ったことに正面から取り組み、調べる。今回の実験・観察の顛末を顧みて、大人は(というか、私は)その結果を過去の経験と知識から決めつけてしまうからこんな面白い発見ができないんだなーと深く反省させられました。本件は、糞虫館の今年の10大ニュースであること間違いなしの快挙です。
20210704_144021アオスジアゲハの幼虫と蛹(葉はタブノキ))
20210704_143949アオスジアゲハの幼虫の糞

 数週間前、お母さんと一緒に糞虫館に来た子(小学1年生)から「糞虫は虫の糞を食べますか?」という質問を受けました。チョウの幼虫を飼育していて糞を沢山するので(写真1,2枚目)、その糞を食べないかなぁと思ったらしい。「一般に虫の糞はとても小さいしニオイもほとんどしないので、糞虫は虫の糞を食べ物だと思わないから食べないんじゃないかなー」等と子供向きの回答をしました。その子の表情がイマイチ納得してなかったので、「虫の糞をたくさん集めて水で練って大きな糞の塊にして与えれば、もしかしたら食べるかもしれないね」と付け足しました。でも、そんなもん食べへんやろーと思ってました(ゴメンね)。
20210704_143943アオスジアゲハの幼虫の練り糞
20210704_143936虫の糞を食べるルリセンチ

 そんな会話があったことさえ忘れかけていた先週末、再び糞虫館に現れたその子の口から「アオスジアゲハの幼虫の糞をたくさん集めて練って与えたらよく食べた」との報告が。まさかと思って、小学校1年生を相手に私が質問攻めにするのを見かねた母親が「本当なんです」と証拠写真を取り出して見せてくれました。食べる様子をビデオにも撮ったそうです。その子が言うには、牙をもぞもぞ動かして、オオセンチコガネの体より大きなアオスジアゲハの幼虫の練り糞を最後はほとんどなくなるほどよく食べた、つまりたまたまちょっと口を付けただけ、かじっただけ、ではないということ。ホント、恐れ入りました。
 最後は私もマジになって「今回たまたまメチャクチャお腹がすいていて、たまたま食べただけかも。もう一回、同じ実験をしてほしい。それから、もしかしたらたまたまこの個体が虫の糞が好きなだけかもしれないから、ほかのオオセンチコガネもアオスジアゲハの幼虫の練り糞を同じように食べるか、試してほしい。」と伝えました。先入観抜きに改めて考えると、センチコガネの仲間は雑食性が強くて各種の獣糞や腐肉はもちろんのこと、キノコや樹液、堆肥なんかも食するそうだから、タブノキの葉っぱを食べたアオスジアゲハの幼虫の糞を食べることは突拍子もないことではない気がしてきました。外国には木の葉を巣穴にため込んで発酵させて喰う種類もいるらしいし。ならば、エンマコガネやマグソコガネに虫の練り糞を与えたら食べるだろうか? ちゃんとまとめて、コガネムシ研究会の『鰓角通信』に投稿すべき内容だと思いますね。この子より先にこんな実験をした人はいないでしょうから、たぶん日本で初めてじゃないのかな? もしかしたら、世界初!かもね。
(本文中の写真は、実験をした親子が撮影したものです。)


今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう。
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