むしむしブログ

カテゴリ: 虫の話題

 7/2にフンコロガシ(スカラベ・サクレ)のペアが糞玉を埋めて、1週間後に1匹が這い出し(たぶんオス)、2週間余り後に2匹目も這い出してきました(たぶんメス)。家の土間等の比較的涼しい場所に置いてましたが、エアコンはないのでプラケースの中は地中でも30℃を超えていたでしょう。交尾をしたペアが埋めたので産卵は確実と思ってましたが、現在ケース越しに見える糞玉の表面は真っ黒に変色しており「ダメだろーなー」と思ってました。1ヶ月半が経過したので、もしうまく育っていたら大きな幼虫になっているだろうけどねなどとブツブツ言いながら、今日糞虫館に来てくれた子供たちと一緒に掘り出しました。普通、糞玉はまわりに土がついていますがシカ糞の場合茶色っぽくなります(写真1枚目)。しかし掘り出した糞玉は、黒いヘドロで覆われたような変わり果てた姿になっており絶望的な気持ちになったのですが、振ってみるとコトコト音がします。干乾びた幼虫の死骸が出てくると思いつつ、慎重にナイフで割ってみると、なんと薄い飴色をした透けるような蛹が出てきました(写真2枚目)。
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 振動で少しクネクネ動きましたが、カブトムシのように激しくは動きません。予想外の展開で一緒に見ていた来館者の方より私の方が興奮してましたね。とりあえず素焼きの植木鉢にケースの土を入れて窪みをつけて、割った糞玉ごとそっと置いて、ラップで蓋をして、暗くしておきました。(写真3枚目) 写真をとりまくったけど、だいじょうぶかなぁ。
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 蛹の上をダニが3匹歩いていましたが、この程度であれば問題ないでしょう。4年前は幼虫にダニが大量に取りついていたので、今回は巨大糞団子を与える前に糞に熱湯を何度もかけてダニを殺したのがよかったのかもしれません。黒いヘドロの正体は何なんでしょう?親が糞玉の小部屋から出て行ってから変化してますから、親虫の出した物質ではありません。ということは「幼虫が出すヘドロ状の物質」=「幼虫の糞」 以外に考えられません。糞玉の壁はもはやシカ糞の名残はなく、ほぼすべてが黒いヘドロでできていました。(写真4枚目)
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 外側はパイナップルみたいにデコボコで、内側はなめらかスベスベ。糞を壁が抜けるほど食べてそこに糞をぶちゅっと出して穴を埋める。これを繰り返して最終的に黒いヘドロの固まったような糞玉となり、汚物を出し切ったところで蛹になる。想像ですが、目の前にある糞玉の表面と内側を見ながらそんなことを考えました。8/4に埋められた2つ目、3つ目の糞玉の表面は少し毛カビみたいなのが絡まってますが、普通の糞玉のままです。この糞玉の幼虫は順調に育てば9/22頃には蛹になっているはずですから、今回同様黒いヘドロ状の物質で覆われた糞玉になっているか、確かめたいと思います。でも、こんなことはファーブル昆虫記にも書いてなかったように思います。ファーブル生誕200周年となる記念すべき今年、私的には世紀の大発見⁉になるような予感がしています。

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!
『たくましくて美しい糞虫図鑑』(創元社)、全国の書店で好評発売中!



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 写真(出典:Introduced Dung Beetles in Australia)はアフリカ北部やヨーロッパに生息していてファーブル昆虫記にも登場するイスパニアダイコクコガネ(Copris hispanus)ですが、こういったアフリカやヨーロッパなど国外の糞虫がオーストラリアに移入され糞公害に対処した話は、このブログを読む人であればご存じの方も多いと思います。実はニュージーランドでも同様の問題が発生しており、10年程前から本格的に糞虫の活用について研究されるようになったそうです。2018年、糞虫館オープン予定の新聞報道を見たニュージーランドで糞虫の繁殖の仕事をしているYK様から次のようなメールをいただきました。「ニュージーランドでは主に牛の糞が原因で水質汚染や大気汚染の問題が深刻になったので、私は糞虫の繁殖に大きなスケールで4年前から取り組んでます。帰国したら糞虫館に遊びに行きます。」 
 時が流れて2022年9月、見知らぬ人から「ニュージーランドでフンコロガシの重要性を訴えてフンコロガシを輸入できるようにジョン・ペアス(John Peace)さんと一緒に働きかけて成功させた人」が糞虫館に行きたがっているとの連絡があったのですが、私はすぐにその人がYK様に違いないと確信しました。
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 で、連絡をくれた方も含めた3人と11月に糞虫館でお会いして、糞虫トークを楽しみました。オーストラリアの場合は公的機関が社会問題解決への対応として外国の糞虫を研究し移入しましたが、ニュージーランドではERMA(環境リスク管理局)を巻き込んで民間主導で進められたようで、国の許認可取得なんかは大変だったそうです。
 ネットを検索すると2008年9月のニュースに「農業の生産性を高める計画の下で、フンコロガシは3年後に導入される可能性がある」と出ていました。実際、2011年に最初の2種類の糞虫が輸入されたようです。なお、私の英語力、理解力、記憶力には限界がありますので、ご参考程度でお願いします。この続きは、また次回。

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!
『たくましくて美しい糞虫図鑑』(創元社)、全国の書店で好評発売中。
 

 下記の『日本甲虫学会第12回大会公開シンポジウム』は、コロナ感染の急拡大に伴い、学会の対面開催がシンポジウムのオンライン(Zoom)開催に変更されて実施されるもののようです。先着300名で申込期日は明日12/4(日) なのですが、まだ空きがあるようで、私も先ほど下のURLの申込フォームから申し込みました。本物の学会に行くのは少し敷居が高いのですが、Zoomでのシンポジウムなのでちょっと覗いてみるのもいいのではないでしょうか。オンライン参加費は無料です。
 コガネムシ研究会の方も学会員には少なくないと思いますが、甲虫学会のシンポジウムなので、どんなお話になるのか全然わかりません。

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!




日本甲虫学会第12回大会公開シンポジウムのご案内

12月10日(土)13:00-15:00

「昆虫研究の魅力を通して科学する楽しみを知ろう ~甲虫学から始める教育アウトリーチ活動~」
 丸山宗利先生他 コンビナー:和田薫(明星大学)

 アウトリーチ活動とは、研究者等と青少年を中心とする一般市民との双方向コミュニケーション機会の増進と相互理解の促進により、研究成果の社会還元、広報活動を行うことです。今回、甲虫学会では科学普及活動のみならず、さらに将来的な若手同好(研究)者の獲得と育成を目指して、シンポジウムを開催します。

 今、昆虫に関する様々な書籍が多数出版され、一般の人からも昆虫に興味関心が向けられています。久々に対面でおこなわれる本大会では、この機会をとらえて自然や生き物が好きな中高生に対して、さらに自然への魅力や研究することの楽しさを伝えられるようにシンポジウムを企画しました。

 講師には、近年多くの図鑑類を出して昆虫の魅力を紹介し、昆虫探究への啓発活動に取り組まれている丸山宗利先生とその研究室の学生さん達に、昆虫の魅力と研究にはまった経緯を情熱的に語っていただきます。

 本シンポジウムを通して、青少年たちには好きというだけではなく、さらにその自然の魅力と謎を解き明かす一員となるように呼びかける企画にしたいと考えています。小中高生や大学生、自然に興味のある方々、さらには教育活動への参加や若手育成に関心のある方の参加をお待ちしております。


シンポジウム申し込みは以下のURLからお願いいたします。

 https://forms.gle/5eUcoND8PcJdsDnP8


シンポジウムについての情報です。

http://kochugakkai.sakura.ne.jp/event/taikai/taikai2022.html#symposium


 この本のお話をいただいたのは2019年の9月頃だったと思うので、すでに2年近くの月日が流れています。正直、こんなに長くかかるとは思っていませんでしたが、原因は明らかで、私がなかなか原稿を書かなかったからなのです。というか、書けなかったんですね。ブログや雑誌のちょっとしコーナーを埋める文章は結構書いているし、私のような虫が好きなだけの一般の人が本を出すなんて普通こんなチャンスは滅多にありませんから、喜んでとりかかったのですが、150ページを文字や写真で埋めるなんてシロウトには無理でした。『フン虫に夢中』(くもん出版)の時は、私は取材されていろいろお話するだけで、実際に本を書くのは作家のいどきえりさんでしたからね。今回は編集の方の助けを借りてなんとか完成にたどり着けたからよかったものの、下手したら永遠に完成しなかったかもしれません。この『たくましくて美しい糞虫図鑑』は、文章のほかに写真やイラストをふんだんに使ったこともあってか、沢山の方のご協力があってようやく完成することが出来たわけで、本当に皆様に感謝しています。
20210715たくましくて美しい糞虫図鑑

 タイトルに「図鑑」とありますが、図鑑として使うならコガネムシ研究会監修の『日本産コガネムシ上科図説(食糞群)』(昆虫文献 六本脚)がベストでしょう。『たくましくて美しい糞虫図鑑』は、糞虫の面白さに気付いてさらにもう一歩進もうとしている糞虫入門クラス~初級クラスの方が読むのに最適の本だと思います。というのも、ならまち糞虫館もそうなのですが、まずは糞虫の存在を知ってもらい、少しでも関心を深めてもらえることを願って書いているので。読み終わった後、山や公園に糞虫を探しに行きたくなる、そんな本を目指しました。内容はかなり経験と記憶と推測と伝聞によるところが多く、専門家の方にはツッコミどころ満載です。ただ、誤りはあるかもしれませんが嘘・偽りはありませんので、笑ってご容赦いただければと思います。書店や図書館で見つけたら、手に取っていただけたら嬉しいです。
 【追加】この本に込めた思いなどを7/19(月)のNHKラジオ第一「関西ラジオワイド」で半時間(17:20~17:55)にわたってお話します。久しぶりのラジオ生出演なのでかなり緊張しているのですが、よかったら聞いてみてください。 

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!
『たくましくて美しい糞虫図鑑』(創元社)は全国の書店で好評発売中 ‼ 
『フン虫に夢中』(くもん出版)もよろしく。

  

 自然が守られ、1,300頭とも言われるシカのいる奈良公園は日本有数の糞虫の生息地で、多くの種類の糞虫がたくさんいることに間違いありません。で、私はあちこちで「糞虫がシカの糞を掃除してくれているので美しい奈良公園が保たれている」と言いふらしています。
 奈良公園には冬でも多くのシカがいて、かなり量は減るとは思いますが、やはり大量の糞を撒き散らしています。で、私はあちこちで「奈良公園には冬に元気に活動する糞虫がいて、そいつらがシカの糞の掃除をしてくれている。」と言いまくっています。一方で、冬の奈良公園で実際に糞虫を見たよ!と言う人は、ほとんどいません。本当に糞虫が頑張って掃除しているのでしょうか?
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 1枚目の写真は、3月9日午後に見つけたまとまった新鮮なシカ糞で、約150粒ほどありました。3日後の3月12日朝撮ったのが2枚目の写真。まだ私は糞には触れていないので正確にはわかりませんが、糞虫が来ている様子はありません。糞の粒数は少し減っているように見えますが、周囲に散らかっただけで、糞虫が食い散らかしている様子はありません。冬ですから、ルリセンチコガネが運び去ることも考えられません。
 もう少し、観察を続けて報告したいと思います。

今日はここまで。
週末、糞虫館で会いましょう!

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