むしむしブログ

カテゴリ: 奈良公園の糞虫

 野外観察自体は密ではないけれど、集合場所やルリセンチを見つけた時などは感染リスクが高まる恐れもあり、コロナ禍で糞虫観察会は限定的にしかやってませんでした。先月、ディープなこじんまりとしたツアーを得意とするまいまい京都さんの企画ツアーを恐る恐る開催、近鉄奈良駅から浅茅ヶ原園地付近までの2時間コースでしたが、明るい場所と暗い場所の2つの環境の違いを意識しながら糞虫探しをしていただきました。
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 まずは、県庁前の芝地で糞虫が集まる良い糞の見分け方と糞の調べ方をしっかりマスターしていただき、割り箸を片手に各自で実際に糞虫を探してもらいました(写真1枚目)。この辺りで見つかるのは米粒サイズのマグソコガネばかりですが、糞をお箸で丁寧にほぐしていくという非日常的な行為のせいか皆さんテンション高めで、あちこちで「これ、糞虫じゃないですか?」と嬉しそうな声が聞かれました。
 次は場所を変えて、林の周辺の芝地で観察。この辺りにもマグソコガネが多いですが、エンマコガネやコエンマコガネも見つかるのです。想定通り、間もなくそこそこ大きなカドマルエンマコガネやナガスネエンマコガネなどが見つかりました。早春から活動する大型のクロツヤマグソコガネも数匹見つかりましたね。カドマルエンマコガネは全国どこでも見られますが、ナガスネエンマコガネやクロツヤマグソコガネはそう簡単には見られない種類です。奈良公園ならではの自然の恵みですね。誤算だったのは、ここでルリセンチコガネが1匹見つかってしまったこと。早すぎるー(泣)。ホントは小さなチビコエンマコガネ(でも角がある!)とか糞にまみれたニッコウコエンマコガネとかをしっかり探して観察してから、最後のメインディッシュとしてルリセンチコガネが見つかる、というのが理想だったんですけどね。
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 最後は春日大社表参道脇の林の中で最後の糞虫探し。正確にいうと、もう完全にルリセンチコガネ探しになってました(笑)。6月上旬なので、時期的には最高、天候にも恵まれたせいか、子供も含めて結構たくさんの方が自力でルリセンチコガネを見つけていました(写真2、3枚目)。それらを比べることで色には個体差がかなりあるということやオスとメスの見分け方などもよくわかったようで、本当に楽しそうでした。
 自然観察グループの糞虫観察会は楽しかったねーで終わればいいのですが、一応旅行会社のツアーなので高い顧客満足度が求められ、そのためなんとツアー終了後、アンケート調査がなされるとのこと。聞いてないよー、と言いたかったですが、聞いていても同じですね。つい先日、秋の糞虫観察ツアーのオファーが来ましたので、アンケートの評価はそこそこよかったのでしょう。ホッとしました。

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!
『たくましくて美しい糞虫図鑑』(著:中村圭一)が7/16に創元社から出版されます。お楽しみに!
『フン虫に夢中』(くもん出版)も好評発売中 ‼ 

 シカ糞の近くで次々にコケシマグソが見つかった5/4の観察では、ヒメコマグソコガネは最後まで1匹もみつけられませんでした。この時期に1匹も見つからないと心配になります。異常に早い梅雨入りのせいで見に行けるときはいつも雨。ようやく5/16の午前中に再度トライして、2時間という限られた隙間時間でしたが、ヒメコマグソコガネを4匹見つけることが出来ました。
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 いつも通り、糞の中には潜り込まず、糞の下にポツンとたたずんでいるのを見て、ほんとにホッとしましたよ。いまだに新たな生息地を見つけられずにいるので、今年もまた会えたけど、マジで来年どうなるか不安です。岩手にも生息地があるらしいけど、広い範囲にたくさんいるのでしょうか?一昨年は採集して飼育してみましたが、他のマグソコガネのように糞を食べているのかどうか今一つわからず、結局死なせてしまった苦い経験があります。コケシマグソコガネやクロツツマグソコガネなんかもいったい何を食べているのか確実なところはわからないけど長生きするのになー。
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 今回もコケシマグソコガネが2匹見つかりました。直接食べるかどうかは別として、シカ糞のすぐ近くにいるのは偶然ではないと確信を深めました。それにしても、今までコケシマグソコガネをホイホイ見つけられるなんて思ってもみませんでしたが、今年が異常なのか、何か大きな変化が起きているのか、気になります。

 人間不思議なもので、年を取ると頭が固くなり新しいことを考えたり試したりしなくなります。なので、私はいつも意識的に、今までやってなかったことには挑戦するようにしています。5/25の挑戦は、「針葉樹で虫を探す」こと。完全な思い込みなのですが、杉とかヒノキはいい香りのする油脂が含まれていて、虫はそれを嫌うので、特定の種を除いて虫はいないと思っているのです。私がこれまで観察したクロツツマグソコガネとヒメツツマグソコガネはほぼすべてがカシやナンキンハゼなど広葉樹(数匹はシカ糞)。針葉樹の皮をめくって探したことがないのだから、当然の結果です。
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P5250663針葉樹樹皮下のクロツツ

 先日、『日本産コガネムシ上科図説』のクロツツマグソコガネの解説には「枯れた広葉樹や針葉樹の樹皮下から見つかることが多く」とあり、ヒメツツマグソコガネは「広葉樹の朽木樹皮下から見つかることが多い」とあるのに気付いたのです。で、梅雨の合間にFITを設置するついでに植林された杉林に横たわる直径20㎝くらいの樹皮を剝いでみました。初めての経験、挑戦でした。いました。クロツツマグソコガネを探すために初めて杉の皮を剥いだら、もうそこにいたという、「それはちょっと出来すぎやろー」と思わずひとりツッコミを入れてしまいました。いやー、本当に針葉樹の樹皮下にもクロツツマグソコガネはいるんですねー。これからは自信をもって「針葉樹の樹皮下にもいる事があります」って言えます。逆に、ヒメツツマグソコガネは針葉樹からはあまり見つからないんでしょうかね?この森には両方とも生息しているのを確認済みですから、杉の樹皮下でヒメツツマグソコガネが見つかるか、継続調査をしていきたいと思います。ホント、何事にも小さなことでも挑戦することは大事ですね!

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!

 先週、早くも梅雨入りしたようで連日雨ですが、その間隙を縫うように5/18の午前中、奈良公園で糞虫観察会を開催いたしました。普通は、公民館の生涯学習講座だったり自然観察グループの特別企画だったりするのですが、今回は始めて企業での講演会&観察会となりました。参加者はホテル尾花の従業員さんたちです。というのも、ホテル尾花は興福寺の南100mに位置し、奈良公園とは目と鼻の先なので、そのせいかお客様から綺麗な青い虫(たぶんルリセンチコガネ)の話題も出ることが多く、この際みんなで糞虫のお勉強をしよう!ということになったらしい。
 4月、5月は、講演会や観察会で予約で埋まっていたのがほぼ全てキャンセルになっており、今回久しぶりだったのでやや力が入ってしまいましたが、「センチコガネ」「ダイコクコガネ」「エンマコガネ」「マグソコガネ」の各グループの特徴だけは1時間で頭に叩き込んでもらって、奈良公園に出発。
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 ホテル尾花の精鋭6名の観察隊なので、芝地での観察開始早々、カドマルエンマコガネ、ナガスネエンマコガネ、チビコエンマコガネ、クロツヤマグソコガネ、ウスイロマグソコガネなどを次々に見つけて大はしゃぎしてました。林地に場所を移して「こういった直射日光の当たらない場所では、・・・」との説明と探し方のコツを私が言い終わらないらないうちに「いました!」との声が(写真1枚目)。いきなりメインディッシュのルリセンチコガネ。あかんやろー、それは。その後も順調にあちこちで「あっ、いました!」の声が上がり、ほとんどの方が自力で青い宝石を見つけることができました。コカブトムシやクロツヤマグソコガネの幼虫も見つかり、あとゴホンダイコクコガネが見つかればいいなーと思って粘ったのですがそれはかなわず、タイムオーバーとなりました。さすがに一の鳥居周辺でゴホンダイコクを見つけるのは難しかったですね。でも皆さん自分で色々な種類の糞虫を見つけ、糞の中からほじくり出し、手にのせてまじまじと見たので、今後はお客様との糞虫談議が盛り上がること請け合いです。ホテル尾花のロビーが糞虫好きのお客様で溢れかえる日はそう遠くないでしょう。コロナに負けるな!がんばれ、ホテル尾花!!

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!
 

 2020年7月25日に撮影したものですが、飼育していたエンマコガネ(ナガスネエンマコガネ?)の幼虫がウジ虫というかイモ虫みたいな柔らかそうな幼虫を襲ってモグモグ食べてました。喰ってるところを狙って撮ったわけではなく、エンマコガネの幼虫の写真を見返していたら気付いたという恥ずかしい話です。

17:31 幼虫の観察のため、部屋を壊したところ。左に薄茶色のイモ虫がいます。(写真1枚目)
 P7250092ウジを喰うエンマコガネ幼虫

17:41 幼虫は部屋の修理をしていますが、イモ虫は部屋の縁までやってきました。(写真2枚目)
P7250135ウジを喰うエンマコガネ幼虫
  
17:42 お尻から糞を出して修理する様子は、タマオシコガネの幼虫が糞玉を修理する時と同じですね。(写真3枚目)
P7250140ウジを喰うエンマコガネ幼虫

17:44 すでに幼虫はイモ虫に襲いかかっているようです。(写真4枚目)

P7250145ウジを喰うエンマコガネ幼虫

17:45 イモ虫は糞に潜って逃げようとしているようですが、幼虫は喰いついたまま離しません。(写真5枚目)
P7250147ウジを喰うエンマコガネ幼虫

17:45 イモ虫の頭の方に嚙みついているようです。(写真6枚目)
P7250148ウジを喰うエンマコガネ幼虫

17:46 イモ虫は体をひねって最後の抵抗を試みていますが、お構いなく食べ始めたようです。(写真7枚目)
P7250151ウジを喰うエンマコガネの幼虫

17:47  3分の1くらい食べたでしょうか、イモ虫から出た体液が光っています。(写真8枚目)
P7250155ウジを喰うエンマコガネ幼虫

17:48 イモ虫の体がちぎれたせいか、いったんイモ虫を離しました。ちぎれた破片を食べていたのかもしれません。(写真9枚目)
P7250161エンマコガネの幼虫

19:49 再び食べ始めました。(写真10枚目)
P7250162ウジを喰うエンマコガネ幼虫

 目の前で糞虫の幼虫がイモ虫を襲って食べているシーンが展開されていたのに全然気付かなかったという自分の観察力の無さに愕然としているのですが、偶然とはいえ、写真にしっかり残っていたのは幸いでした。奈良公園の糞虫が直接的にハエの発生を抑制していることを示す決定的な証拠なんじゃないでしょうか。このイモ虫がなんの幼虫なのか?も非常に気になりますねー。わかる人がいたらぜひ教えて下さい! 大きく成長したハエの幼虫(ウジ虫)は皮が硬くて恐らく太刀打ちできないと思われますが、ハエの卵や孵化したばかりのウジ虫であれば、糞虫のいい餌になっている可能性が高いと考えています。

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!

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