むしむしブログ

カテゴリ: 奈良の糞虫

 ファーブル昆虫記(訳:奥本大三郎)を読むと、フランスの糞虫は栄養満点のヒツジの糞が大好きで、特に繁殖期には必需品のようです。日本の糞虫にとっては、どうなんでしょう? 体重はヒツジの方がシカの倍ほどありますが、どちらも4つの胃を持つウシ科の草食動物で、同じくらいの大きさの丸いコロコロした糞をします。シカ糞に集まる糞虫は、ニオイの違うイヌの糞や野生では生息しないウシの糞にもたくさん集まって来るので、ヒツジの糞にも糞虫はいるはずです。こんな風に想像して、分かったような顔をしてお話しするのは簡単です。が、実際に観察会で糞虫を見つけなければならない状況に置かれると話は別です。
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 先月20日の日曜日、奈良市から東へ車で30分、山添村にあるフォレストパーク神野山めえめえ牧場(まきば)の依頼を受け、ヒツジのみ約50頭が放たれている牧場の付属施設「ヒツジの学校」で糞虫講座をやって(写真1枚目)、そのあとその牧場で糞虫を探すというイベントに行ってきました。奈良公園であればこの時期であれば100%ルリセンチコガネと引き合わせる自信がありますが、2回しか行ったことのないアウェーで、しかもなじみのないヒツジの糞で、連日雨で前日も夜まで大雨という、かなり緊張を強いられる状況でのイベント開催になりました。牧場の管理人さんが何度か目撃していて証拠の死骸も確認できているので、ルリセンチコガネがいる事は間違いないのですが、1時間の観察時間内に参加者の誰かに見つけてもらえるとは限りません。
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 たくさんの親子連れや虫好きの方が集まるイベントでなければ、普段来ない場所での観察だし、ヒツジの糞なので(写真2枚目)、奈良公園では見られない珍しい種類の糞虫が見つかるのではないかとワクワクしながら楽しく糞をほじくるのですが、この日はマジでルリセンチコガネを探しましたよ(写真3枚目)。
 見つかったルリセンチコガネの数はともかく、参加していただいた方には大変喜んでいただき、満足されていたと聞いています。「好評だったので8月にぜひもう一度」という噂も耳にしますが、真夏の牧場でルリセンチコガネを探すのは、このブログを見ている方にはご理解いただけると思いますが、さらにハードルが上がりますよね。でも、身近なところにもルリセンチコガネがいる事を知ってもらえて、多少なりとも糞虫に関心を持ってもらえたので、ホントやってよかったと思っています。

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!
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 三重県鈴鹿市の郊外を流れる鈴鹿川の河川敷で発見され、2006年に新種としてコガネムシ研究会の方々によって発表されたハバビロコケシマグソコガネ。前胸背版の横隆起がホソケシマグソコガネに似ており、私も以前間違えてしまいました!その後、関東や北陸からも報告されており、結構広く分布しているのではないかと考えられています。奈良は富雄川の河川敷からコケシマグソコガネとともに一度に多数見つかっており、私は側溝の砂や堆積物ごと持ち帰り飼育していました。飼育と言ってもいったい何を食べているのかわからず、時々霧吹きで水をやるだけです。冬になる前に堆積物に紛れ込んでいた10匹ほどのスナゴミムシダマシは全て死んでしまいました。冬になると、ケシマグソコガネは一体何匹いるのかもわからないまま、姿を見ることはなくなりました。
P5230449コケシマグソコガネ越冬
P5230481ハバビロコケシマグソコガネ越冬
P5230577ハバビロコケシマグソコガネ越冬クリーニング後

 一応室内に置き(暖房無し)たまに霧吹きをするだけの世話でしたが、先週、コケシマグソが1匹もぞもぞと姿を現しました(写真1枚目)。さらに、3日前にはプラケース越しに何か動くものが見え、よく見ると中にはケシマグソコガネらしきものの姿が。ピンセットでつまみだして顕微鏡で見ると、紛れもなくハバビロケシマグソコガネ(写真2、3枚目)。ホソケシマグソの特徴である上翅の間室の刺毛がありません。この写真はクリーニングして翅の間室の顆粒間にある垢をおとしてあるのでよくわかりますが、掘り出した直後でクリーニングする前のものが次の写真(写真4枚目)。これではちょっと見分けられません。
P5230553ハバビロコケシマグソコガネ越冬クリーニング前

 本種もコケシマグソコガネも、成虫で越冬するんですね。自然界では枯れた植物などの堆積物の下の川砂の中に潜って冬を越すに違いありません。うちのプラケースは堆積物2~3cm、その下に川砂2~3cmほどしか入れてませんが、室内なので問題なかったのでしょう。元気に活動を再開したのはいいのですが、一体エサは何なのか?乾いたところにいるイメージですが、雨が降ったら水浸しになるようなところに住んでいるし・・・。飼育環境も含めて、謎は深まるばかりです。

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!



 ムネアカセンチコガネをとらえる術を身に着けたとたん「ムネアカセンチコガネは意外に身近にいるんですよ」なーんてエラそうに言うようになった自分が怖いんですが、これは人間性の問題ではなく、たんにFlight interception trap (FIT) という採集方法をやるかやらないかの違いだけですね。といいつつも、なんか自分の採集技術が大きくレベルアップしたような気がします。そりゃー40年間で死骸2個しか見つけられなかった虫を半月で10匹捕まえたのですから。
 この魔法のようなFITは、狙う虫によっていろんなタイプがあるようですが、最初に考えた人はスゴイ!糞虫に使い始めた人は本当にエライ!と思います。私なんて糞ばかりを追いかけてきたので、糞に来ない糞虫には出会えるわけないんですよねー。もちろん、この採集方法もいいことばかりではないんですが、とにかく実物を捕まえて観察しないと何も始まりませんから。
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 前置きが長くなりましたが、実は10/12昼頃設置したFITを暗くなってから見に行ったら、エンマコガネが1匹水盤に浮いていました。大きさはカドマルエンマコガネよりやや小さい感じで、なぜか滑って少しつまみにくかったのを覚えています。息を吹き返して動き回る姿をフィルムケース越しに見てもエンマコガネと思っていましたが、ふたを開けてみると胸や前翅に薄汚れたような肌色の模様が・・・(写真1枚目)。
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 ヤマトエンマコガネ?いやいや、ツヤがないし色も違うし、あれー、毛むくじゃらだなー(写真2枚目)。で、顔をよく見ると大きな牙が見えた(写真3枚目)のでようやく →あ、センチコガネ?! →アカマダラセンチコガネだ!! とわかりました。
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 FIT回収時すでに暗くなっていたので、普通のエンマコガネと思ったものの念のためその場で解放せずに持ち帰ったのは、持って生まれた”運”の強さかもしれません。ムネアカセンチコガネに続く「自分史上初」の世紀の大発見につながりました。以前、糞虫界のプリンスこと中谷君が、この場所に仕掛けたFITで1匹採れたよと教えてくれていたおかげです。ありがとー!
 何を餌にして飼えばいいのかわかりませんが、昆虫ゼリーで様子を見てます。うまく生きていれば今週末、糞虫館で生きたアカマダラセンチコガネとムネアカセンチコガネを見ることができます。

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!

 今までにコケシマグソコガネを見たのは、奈良公園のシカ糞の下の砂地からたまたま見つけたのが2回と兵庫県の夢前川河川敷の砂をふるって1匹見つけた計3回のみ。最も一般的な種類といわれるホソケシマグソコガネは、見たことがありませんでした。虫がいるのかいないのかもわからないところの砂をひたすら篩い続けるという気の遠くなるような作業は、なかなかフツーの人には出来ることではありませんから。
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 今回は、奈良市内を流れる富雄川の河川敷でハバヒロケシマグソコガネらしき虫を採ったとの情報を得て、意を決して篩を持って行ったのですが、30分もたたずにギブアップ。犬フンを探して河川敷をさまよったものの見つけられず。初めての場所での採集はやっぱりむづかしいなーとぼやきながら車に戻る途中、水の流れていない乾いたU字溝の底に少し溜まっていた砂と枯草を「こんなとこにいたりして」と見たら、いたんです!しかもB5版ほどの面積の砂と枯草の塊を丁寧に見ていくと、もう出るわ出るわ、数えるのを止めましたが、30匹以上いました。1mほど離れたところの同様の砂と枯草の塊にも、よーく見ると10匹以上確認できました。ちょっと色合いや大きさが違う個体がいるように見えた(写真1枚目)ので、20匹ほど持ち帰りました。で、実体顕微鏡でよく見ると、コケシマグソコガネ(写真2枚目)とホソケシマグソコガネ(写真3枚目)だったというわけです。
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 富雄川の土手の上に設けられたU字溝なので、普段は水は流れていないようでした。幅・深さとも30cmほどあるので、落ちたら最後、よじ登ったり飛んで逃げることができず、いうなれば超大型のピットフォールトラップ(落とし穴式の罠)みたいになっているのかも!? スナゴミムシダマシもたくさんいました。U字溝のゴミ溜りは、砂を篩う忍耐力の無い人にとっては、意外に狙い目なのかもしれません。

今日はここまで。
週末に糞虫館で会いましょう!
 

 日本人はファーブル昆虫記を読んだ方が多いせいか「糞虫」=「フンコロガシ」、つまり糞を丸めて転がす虫と思っている方が多いようです。なので、私が「日本の糞虫の99%は糞を丸めて転がすことはしません」と説明すると、「えーっ!!」と驚かれると同時に、残り1%の糞玉を作って転がす糞虫に関心を示されます。で、全長2mmほどのマメダルマコガネというチビコエンマコガネよりまだ小さい糞虫が森の中で密かに糞の玉を転がしている、とお話しています。でもねー、私は今まで生きたマメダルマコガネを見たことがなかったのです。本州・四国・九州に生息し、それほど珍しいというわけでもないようなのですが・・・。
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 シカ糞のそばにゴホンダイコクコガネの死骸があり、「あー、死骸や。残念。」とピンセットでつまみあげると、その下に小さな甲虫が隠れていました。丸っこくて光沢があったその甲虫はあまりに小さかった(写真1,2枚目 下部の球は直径1㎜)ので、糞虫ではないだろうなと思いながらもマメダルマコガネかもねと心の片隅で思いながら、ピンセットでつまんで手に載せるとすぐに死んだふりを止めて動き出しました。「ん!?これって本物のマメダルマコガネちゃう?」 今日は、鳥の羽毛や動物の骨にも詳しい若手の糞虫好き山田氏と一緒に奈良公園に観察に行ったのですが、彼は学校の裏山のトラップにかかったマメダルマコガネを見たことがあり、たぶん間違いないとのこと。このほかにも目と勘のいい彼のおかげで、ルリセンチコガネが40匹以上集まっているところやセンチコガネやコブマルエンマコガネが多数集まっている大きなキノコ、ゴホンダイコクコガネ、ノコギリカミキリの交尾、シカの白骨死体など、様々な場面を目にすることができましたが、マメダルマコガネは最高の収穫でした。(写真3枚目)
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 マメダルマコガネは半世紀以上前から「糞玉を転がす日本のフンコロガシ」と言われていましたが、恥ずかしながら私は40年間その姿を奈良公園で見たことがなく、玉を転がす姿は夢のまた夢でした。今、元気に動き回るマメダルマコガネを目の前にして思うことは、コイツが糞玉を作って転がす姿を見たい。ただそれだけです。
 今晩絶食させて、明日の午後、ならまち糞虫館の特設ステージで糞を与える実験を行ないます。うまくいけばニッポンの糞虫がフンをコロガシてる姿を皆さんと一緒に見ることができるかもしれません。

今日はここまで。
今週末、糞虫館で会いましょう!

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