むしむしブログ

カテゴリ: 奈良の糞虫

 私はサラリーマンは辞めましたが、今も平日は仕事をしていることが多いです。仕事で奈良県のあちこちに行く機会が多く、その先々で糞を見つけてはひっくり返して楽しんでいます。先日は宇陀方面に行った帰りに、僅かな時間ではありますが、牧場に立ち寄りました。この牧場は、初めて行った時にマルツヤマグソコガネを採集するという幸運に恵まれた(写真1枚目)、相性のいい牧場です。
P2130820マルツヤマグソコガネ

 今回は11月中旬ですでに朝晩が寒くなっているせいか、あまり多くの糞虫は見つかりませんでした。それでも牛糞からカドマルエンマコガネとマグソコガネが見つかりました。いつもと違う場所での糞虫探しは、普段にも増してワクワクして楽しいです。結果は平凡でしたけどね。

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!


 前回、FITを使うことでツヤエンマコガネの活動時期を知ることができたことを書きましたが、私がFITを始めたのは、糞虫界のプリンス中谷君が「FITでムネアカセンチ、落ちますよ」とこともなげに言ったのがきっかけなのです。当時の私は(といってもほんの1年ほど前ですが)、ムネアカセンチコガネを採集したことが無く、たまたま見つけたボロボロの死骸の標本しか糞虫館には無かったのです。FITをやってみたらホイホイ採れたので驚いたのですが、さて今年も会うことができるでしょうか?去年はたまたまビギナーズラックだったのかも。
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 で、今年も10月にFITを仕掛けて1週間ほど毎日見に行きました。毎日見回ると無駄な殺生が少しは避けられるので励行しています。結果は写真1、2枚目の通り!本当にムネアカセンチコガネってカワイイですよね!

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!

【お知らせ】
11/20(土)は、私も出演するドキュメンタリー映画の上映会に行くので不在です。もちろん、糞虫館は開けてます。

 ファーブル昆虫記(訳:奥本大三郎)を読むと、フランスの糞虫は栄養満点のヒツジの糞が大好きで、特に繁殖期には必需品のようです。日本の糞虫にとっては、どうなんでしょう? 体重はヒツジの方がシカの倍ほどありますが、どちらも4つの胃を持つウシ科の草食動物で、同じくらいの大きさの丸いコロコロした糞をします。シカ糞に集まる糞虫は、ニオイの違うイヌの糞や野生では生息しないウシの糞にもたくさん集まって来るので、ヒツジの糞にも糞虫はいるはずです。こんな風に想像して、分かったような顔をしてお話しするのは簡単です。が、実際に観察会で糞虫を見つけなければならない状況に置かれると話は別です。
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 先月20日の日曜日、奈良市から東へ車で30分、山添村にあるフォレストパーク神野山めえめえ牧場(まきば)の依頼を受け、ヒツジのみ約50頭が放たれている牧場の付属施設「ヒツジの学校」で糞虫講座をやって(写真1枚目)、そのあとその牧場で糞虫を探すというイベントに行ってきました。奈良公園であればこの時期であれば100%ルリセンチコガネと引き合わせる自信がありますが、2回しか行ったことのないアウェーで、しかもなじみのないヒツジの糞で、連日雨で前日も夜まで大雨という、かなり緊張を強いられる状況でのイベント開催になりました。牧場の管理人さんが何度か目撃していて証拠の死骸も確認できているので、ルリセンチコガネがいる事は間違いないのですが、1時間の観察時間内に参加者の誰かに見つけてもらえるとは限りません。
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 たくさんの親子連れや虫好きの方が集まるイベントでなければ、普段来ない場所での観察だし、ヒツジの糞なので(写真2枚目)、奈良公園では見られない珍しい種類の糞虫が見つかるのではないかとワクワクしながら楽しく糞をほじくるのですが、この日はマジでルリセンチコガネを探しましたよ(写真3枚目)。
 見つかったルリセンチコガネの数はともかく、参加していただいた方には大変喜んでいただき、満足されていたと聞いています。「好評だったので8月にぜひもう一度」という噂も耳にしますが、真夏の牧場でルリセンチコガネを探すのは、このブログを見ている方にはご理解いただけると思いますが、さらにハードルが上がりますよね。でも、身近なところにもルリセンチコガネがいる事を知ってもらえて、多少なりとも糞虫に関心を持ってもらえたので、ホントやってよかったと思っています。

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!
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 三重県鈴鹿市の郊外を流れる鈴鹿川の河川敷で発見され、2006年に新種としてコガネムシ研究会の方々によって発表されたハバビロコケシマグソコガネ。前胸背版の横隆起がホソケシマグソコガネに似ており、私も以前間違えてしまいました!その後、関東や北陸からも報告されており、結構広く分布しているのではないかと考えられています。奈良は富雄川の河川敷からコケシマグソコガネとともに一度に多数見つかっており、私は側溝の砂や堆積物ごと持ち帰り飼育していました。飼育と言ってもいったい何を食べているのかわからず、時々霧吹きで水をやるだけです。冬になる前に堆積物に紛れ込んでいた10匹ほどのスナゴミムシダマシは全て死んでしまいました。冬になると、ケシマグソコガネは一体何匹いるのかもわからないまま、姿を見ることはなくなりました。
P5230449コケシマグソコガネ越冬
P5230481ハバビロコケシマグソコガネ越冬
P5230577ハバビロコケシマグソコガネ越冬クリーニング後

 一応室内に置き(暖房無し)たまに霧吹きをするだけの世話でしたが、先週、コケシマグソが1匹もぞもぞと姿を現しました(写真1枚目)。さらに、3日前にはプラケース越しに何か動くものが見え、よく見ると中にはケシマグソコガネらしきものの姿が。ピンセットでつまみだして顕微鏡で見ると、紛れもなくハバビロケシマグソコガネ(写真2、3枚目)。ホソケシマグソの特徴である上翅の間室の刺毛がありません。この写真はクリーニングして翅の間室の顆粒間にある垢をおとしてあるのでよくわかりますが、掘り出した直後でクリーニングする前のものが次の写真(写真4枚目)。これではちょっと見分けられません。
P5230553ハバビロコケシマグソコガネ越冬クリーニング前

 本種もコケシマグソコガネも、成虫で越冬するんですね。自然界では枯れた植物などの堆積物の下の川砂の中に潜って冬を越すに違いありません。うちのプラケースは堆積物2~3cm、その下に川砂2~3cmほどしか入れてませんが、室内なので問題なかったのでしょう。元気に活動を再開したのはいいのですが、一体エサは何なのか?乾いたところにいるイメージですが、雨が降ったら水浸しになるようなところに住んでいるし・・・。飼育環境も含めて、謎は深まるばかりです。

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!



 ムネアカセンチコガネをとらえる術を身に着けたとたん「ムネアカセンチコガネは意外に身近にいるんですよ」なーんてエラそうに言うようになった自分が怖いんですが、これは人間性の問題ではなく、たんにFlight interception trap (FIT) という採集方法をやるかやらないかの違いだけですね。といいつつも、なんか自分の採集技術が大きくレベルアップしたような気がします。そりゃー40年間で死骸2個しか見つけられなかった虫を半月で10匹捕まえたのですから。
 この魔法のようなFITは、狙う虫によっていろんなタイプがあるようですが、最初に考えた人はスゴイ!糞虫に使い始めた人は本当にエライ!と思います。私なんて糞ばかりを追いかけてきたので、糞に来ない糞虫には出会えるわけないんですよねー。もちろん、この採集方法もいいことばかりではないんですが、とにかく実物を捕まえて観察しないと何も始まりませんから。
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 前置きが長くなりましたが、実は10/12昼頃設置したFITを暗くなってから見に行ったら、エンマコガネが1匹水盤に浮いていました。大きさはカドマルエンマコガネよりやや小さい感じで、なぜか滑って少しつまみにくかったのを覚えています。息を吹き返して動き回る姿をフィルムケース越しに見てもエンマコガネと思っていましたが、ふたを開けてみると胸や前翅に薄汚れたような肌色の模様が・・・(写真1枚目)。
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 ヤマトエンマコガネ?いやいや、ツヤがないし色も違うし、あれー、毛むくじゃらだなー(写真2枚目)。で、顔をよく見ると大きな牙が見えた(写真3枚目)のでようやく →あ、センチコガネ?! →アカマダラセンチコガネだ!! とわかりました。
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 FIT回収時すでに暗くなっていたので、普通のエンマコガネと思ったものの念のためその場で解放せずに持ち帰ったのは、持って生まれた”運”の強さかもしれません。ムネアカセンチコガネに続く「自分史上初」の世紀の大発見につながりました。以前、糞虫界のプリンスこと中谷君が、この場所に仕掛けたFITで1匹採れたよと教えてくれていたおかげです。ありがとー!
 何を餌にして飼えばいいのかわかりませんが、昆虫ゼリーで様子を見てます。うまく生きていれば今週末、糞虫館で生きたアカマダラセンチコガネとムネアカセンチコガネを見ることができます。

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!

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