むしむしブログ

カテゴリ: 世界の糞虫

 近年「昆虫食」が注目されるようになり、ネットでの検索や出版物の数が急激に伸びているとのこと。私の肌感覚では、話題にはするけど口にはしない状況かと。食文化に詳しい学習院女子大学の宇都宮由佳教授によると、食べ物に困らない日本だから昆虫を食べないのかというとそうではないらしく、経済発展の目覚ましいタイでは昔も今も昆虫は普通に食されており、食べる理由としては9割近くの人が「おいしいから」を挙げているとのこと。理由の第2位と3位は「おかずとして」が6割、「季節のものとして」が3割(複数回答)。いずれも、積極的な理由で食べている。「他に栄養が取れるものがない」といった回答は1割しかないらしい。
 宇都宮教授から、伝統食文化としての昆虫食についてタイを中心にお話をお伺いすることができたのだが、我々糞虫愛好家の心中を察して糞虫の話をあちこちにちりばめてくださったので、本当に楽しく学ぶことができました。タイの北部でナンバンダイコクの糞玉が食用として市場で売られていることや糞虫(Onitis 属)のフリーズドライのスナックが売られていることは一応知ってはいたものの、食文化の側面から調査結果を交えたお話は説得力があり興味深いものでした。一番良かったのは、現地で食べられている昆虫の標本を持ってきてくださったこと。お話から大体想像できるものの、やはり実物が一番です。宇都宮教授の了解を得て撮影したのがコレ(写真1~3)。基本的には足をもいで食べるそうですが、巨大なゾウムシとかゴホンツノカブトとか、メチャ硬そうです。巨大なクツワムシなんかは、1匹食べたらお腹いっぱいになりそう・・・ あなたはどれが食べたいですか?
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今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!
『たくましくて美しい糞虫図鑑』(創元社)は全国の書店で好評発売中!


 前回9/9に2個目の西洋ナシ型糞玉を割って残念な結果でしたが、ちょうど糞玉を埋めてから2ヶ月が経過した9/17に3個目の糞玉を割ってみました。ケース越しにきれいで大きめの糞玉であることは見えていたのですが、掘り出すと、とんがった部分が反対側を向いていただけで、見事な西洋ナシ型であることが確認できました(写真1枚目)。 重さは18.6g、大きさは4.5×4.0cmくらい(写真2枚目)。大きさも湿り具合もいい感じ。2個目のように菌糸状のモノも絡みついていません。ただ、重さがダメだった2個目とあまり変わらないのが気になります。
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 卵がうまく育っていれば既に60日が経過しているので、蛹になっているはず。ナイフで、注意深く割ってみると・・・(写真3枚目)
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 今回もダニは発生しておらず、幼虫の死骸の頭の大きさが9/9に割った糞玉の幼虫と同じくらいまで育って死んでいます。フンコロガシが糞玉を埋めたのは共に7/17なので、同じ頃に死んだようです。思い当たるのは、プラケースを1週間ほど2階のエアコンの無い部屋に置いた時期があり、この時に猛暑で室温が35℃を越えていたかもしれないということ。土の中とはいえ小さなプラケースなので、夜間も気温が下がらない閉めきった室内だと糞玉の中まで同じくらいまで温度が上がり、それが長時間続いた可能性があります。もしそのせいでそれまで順調に育っていた幼虫が死んでしまったとすれば(悲しいけれど)納得がいきます。でも、その推理が当たっていたら、あと一つ残っている7/17の糞玉は(たぶん8/4の糞玉も)絶望的です。となると、期待できるのは9月以降に作られた2個だけということになります。スカラベ・サクレはアフリカにも広く生息していますが、アフリカ=暑い! だから暑さには強いと漠然と考えていた自分のバカさ加減に腹が立ちます。今はただ「なんとか生きていてくれ」と祈るよりほかありません。

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やりました!日本初ではないだろうけど、自分的にはもちろん初めてフンコロガシ(スカラベ・サクレ)の繁殖に成功いたしました。糞玉を作るところ、転がすところ、土に埋めるところ、西洋ナシ型の糞玉、卵、幼虫、蛹、そして本日(9/13)ついに糞玉の中で羽化した新成虫を観察することが出来ました。
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 アフリカからはるばる日本に連れてきて、未知の食材であるニホンジカの糞で世代を繋ぐことができて、嬉しい!と同時になんか少しほっとしています。詳細は後日。とりあえずご報告まで。

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 一昨日、このブログで予告した通り、ペアのフンコロガシ(スカラベ・サクレ)が7/14に埋めた糞玉を掘り出して割ってみました。8/20に1個目を割った時はハチミツ色の美しい蛹が出てきたので、今回もかなり期待していました。でも、プラケースの外側からは地下室が見えていなかったので、そもそも糞玉は残っているのか?産卵したのか?わからない状態でした。ケースをひっくり返して土を出すと、そこに地下室が現れ、やや大きめの糞玉が見えました。ケースの底の真ん中あたりに地下室を作っていたようです。(写真1枚目)
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 糞玉はしっかり仕上げられており、出っぱりのある西洋梨型つまり産卵されたものでした。(写真2枚目) 周囲には繊維状の細い菌糸みたいなものが絡みついていましたが、特に異常は見られません。1個目の時は黒いヘドロのような薄い土壁一枚になってましたが、今回はなってません。
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 うまく育っていれば蛹がいるはずですから、カッターナイフで慎重に少しずつ切り込みをいれていきます。壁を貫通するとナイフの通りが軽くなるのでわかります。中の虫を傷つけないようにそこからはピンセットで穴を開け、穴を大きくしていきます。中はくりぬいたような空洞が出来ていますが、蛹がいません。空っぽです。よく見ると、幼虫の皮らしきものが残っています。(写真3枚目)
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 産卵、孵化までは順調だったものの、幼虫が少し育った段階で死んでしまったようです。糞玉の中心付近まで食べ進んでいましたが、糞玉の重さはまだ20gもある(写真4枚目)ので、水分の減少等も考慮すると恐らく3分の1も食べてないと思われます。空洞内にはダニの発生はなかったので、今年から実施している熱湯消毒は一定の効果があったと考えられます。この糞玉は大きくてしかもペアが埋めていただけに期待が大きかったのですが・・・本当に残念です。

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 フンコロガシ(スカラベ・サクレ)は大きな糞の塊から丸く糞玉をくり抜いて、最後に全体を点検してへこんでいるところには糞を貼り付け、出っ張っているところは手で押して形を整えて見事な球形にしてから転がし始めます。糞が適度に軟らかく量が十分にあれば、ビデオの早送りのような素早い動きでテキパキと作業を進め、5分もすれば糞玉作りを終えて転がし始めることもあります。しかし出来栄えには結構個体差があって、メチャクチャしっかり作り込む奴(写真1枚目)もいれば妙にデカい球(写真2枚目)を作る奴もいたりします(比較のために7月に地下から掘り出した仕上げ済み産卵前の糞玉2個を横に置いています)。糞玉の半径が25%長いと体積は約2倍(球の体積=半径の3乗×π)になりますから、2枚目の写真の糞玉なんかは土に埋めた後地下室で2分割すれば2つ卵が産めそうな気がしますが、そんなことはせず、先月8/25にこのブログでお伝えした通り、地下の育児室で親虫がしっかり食べるなどして大きさを調整しているようです。
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 地上にある糞塊から糞玉を切り出す作業は糞に集まる他の生き物との競争ですから、短時間で丸めて早く転がして持ち去らなければなりません。そのため、大きさにばらつきがあったり、形が「美しい球形」とは言えないことも少なくないのは当然だと思います。フンコロガシを1匹だけにして落ち着いて糞玉をつくれる環境を整えてあげた時も、おはぎのような糞玉を転がしてました。これは糞の柔らかさにも関係があるのかもしれません。いずれにしても、最後は地下に埋めて数日のうちにそれなりの大きさの美しい球形に仕上げることに変わりはありません。
 ネット上で見られるフンコロガシの画像は大抵形が整った完全無欠の糞玉を転がしていますが、「映え」を意識して歪な糞玉を転がす画像は意識的にアップしないのかもしれませんね。

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