むしむしブログ

カテゴリ: 日本の糞虫

 読書の秋、食欲の秋、芸術の秋という感じでなにかと忙しい季節ですが、もちろん私は糞虫の秋。ムネアカセンチコガネ、アカマダラセンチコガネ、マルエンマコガネ、ヤマトエンマコガネ、ミツコブエンマコガネ等々、冬が来る前に出合いたい糞虫達が目白押し。先週は満を持してヤマトエンマコガネを見に滋賀県まで行ってきました。去年観察することが出来たのと同じ時期を狙って、週間天気予報を見ながら10/9(水)に10か所以上に糞を仕掛け、10/11(金)に回収。もう1,2日後でも良かったのかもしれませんが、人目に付きやすい場所なので、10/12(土)からの3連休前に回収に行ったのでした。エンマコガネが飛びたくなるようなお天気が続いていたので、かなり期待してました。
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 ところが、連休前だからか芝刈り機で丁寧にシバが隅々までしっかり刈り込まれていて、仕掛けたフンの半分以上が押しつぶされたり粉砕されてました。さらに目印に置いていた枝や小石が跳ね飛ばされて仕掛けたフンの位置がわからなかったり、もう散々。結局この日は数匹のカドマルエンマコガネを見ただけで終了。
 毎年いろんな場所に仕掛けているのですが、ヤマトエンマコガネの新たな生息地を見つけることはできていません。去年ここのヤマトエンマコガネは鹿糞から見つかったので、シカ糞で世代を繋いでいると思っているのですが、採集個体によるシカ糞での繁殖は失敗続きです。失敗の原因は、私の飼育管理のマズさなんですけどね。奈良公園からコイツが姿を消してもう数十年になりますが、滋賀のこの地で生きながらえることを祈るばかりです。(写真のヤマトエンマコガネは2019年に採集・飼育したもの)

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!
『たくましくて美しい糞虫図鑑』(創元社)、全国の書店で好評発売中!

【お願い】
 オープン7年目に突入したならまち糞虫館は「日本のすべての糞虫が展示されている糞虫館になる!」ことを目指しています。まだ糞虫館に展示されていない、もしくは数匹しか展示されていない種をお持ちの方は、寄贈や預り等どのような形でも結構ですので、ご協力いただけるとありがたいです。ちょこっとタッパーに入れて持ってきてくださるのも大歓迎。私個人は遅かれ早かれいずれ朽ちてしまうので、今後は法人化、できればNPO法人を設立して未来永劫糞虫のすばらしさを伝えていくハブ施設にすることを夢見ています。ご支援・ご協力いただけると幸いです。


 糞虫館の館長をやっていると、世界のあちこちで糞虫を採集しているとか、日本のほとんどの糞虫を採集したことがあるとか思われがちですが、私は学生時代から奈良公園で糞虫を観察して楽しんでいる単なる糞虫好きなので、糞虫の専門家からすると驚くほど少ししか標本を持っていません。マグソコガネの仲間なんて『日本産コガネムシ上科図説(食糞群)』に書いてある以上のことはわかりませんし、星一つ★の最普通種と言われる種でも採ったことが無い種はたくさんいます。その中でもツノコガネは、長いツノがカッコいいしなんとか自分で捕まえたいと思ってました。
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 先月、糞虫館に来た子供のお父さんから三重県の高原にたくさんいるという情報をいただき、今月8/13にバケツ一杯の牛糞を車に積んで地図で見つけた高原に向かいました。シカ糞が確認できた場所を中心に小分けした牛糞を20か所ほど置いて回って、8/15に見に行くと40~50匹のツノコガネを見つけることができました!一番多かったのはツノコガネで、その次はオオセンチコガネとセンチコガネとゴホンダイコクコガネがそれぞれ20~30匹で同じくらい。マエカドコエンマコガネは数えきれないほどたくさんいましたが、カドマルエンマコガネやフトカドエンマコガネは数匹しか確認できませんでした。夕方で見落としたのかもしれませんが、マグソコガネの仲間は見つけられませんでした。ツノコガネは約9割がメスだったのが不思議なのですが、大小5匹のオスも採れたのでペアでお持ち帰りさせていただき、末永くならまち糞虫館で活躍してもらうことにいたしました。今乾燥中なので、早ければ来週にも糞虫館デビューです。
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 ツノコガネですから、多くの糞虫好きの方からすると珍しくもなんともないと思いますが、実にカッコイイ姿をしています。セオリー通り頭・胸・腹を水平にして標本にすると長いツノが寝てしまってイマイチなのですが、アゴを引いてツノを立てるとダイコクコガネにも劣らないほどカッコよくて、ずっと見ていられます。今回はコーフンしてしまい採集時にほとんど写真を撮ることができなかったのですが、次回は落ち着いてこの虫の魅力を最大限引き出せる1枚を撮りたいと思っています。還暦を迎えた大人をこんなにワクワク楽しませるなんて、すごいぞ!ツノコガネ、サイコーだぜ!糞虫。

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 奈良公園で黄色い紋様が美しいヤマトエンマコガネの姿が見られなくなって少なくとも既に40年以上になるでしょうか(もし違っていたらご指摘ください)。糞虫好きの先輩方からは「俺が若草山で野グソをすれば、ヤマトエンマが100匹飛んで来たもんだ」といった話を聞かされているものの、1977年以降に採った糞虫を収めた私の標本箱には「採集地:奈良公園」と記されたヤマトエンマの姿はありません。
 コガネムシ研究会の会誌『鰓角通信』のバックナンバーで滋賀県にヤマトエンマがコガネがいる事を知り、2019年に滋賀県で初めて採集できたのですが、その後牛糞を仕掛けたりもしたものの、見つかるのはカドマルエンマコガネやフトカドエンマコガネばかりでした。今年も9月に採集を試みたものの空振り、10月に再度トライしてようやく出会うことができました。2019年は、イヌ糞やタヌキ糞から見つかっているもののシカ糞からは1匹も見つからず、ヤマトエンマコガネはシカ糞を好まないのか?と思ったものです。今回は10月にシカ糞から5匹、牛糞で1匹見つかっており、シカ糞嫌いではないことが分かりました。シカ糞の中に潜んでいることが多く、糞の下のトンネルからほじくり出したエンマコガネは、カドマルエンやフトカドエンマコガネがほとんどで、ヤマトエンマコガネはいませんでした。たまたまかもしれませんけどね。その時の様子が写真1~4枚目です。
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2020年10月、富雄川(奈良県大和郡山市)でコケシマグソコガネとともにハバビロコケシマグソコガネを多数観察できたのですが、先日9/19に同じ場所に友人と2人で行ってきました。周囲の様子は3年前とほとんど変わりがなく、3年前にハバビロコケシマグソコガネ等をたくさん見つけた水の無い側溝に生えた草の根周辺を集中的に探しました。2人で2時間篩い続け、コケシマグソ5匹(写真1枚目)、ハバビロコケシマグソ1匹(写真2枚目)。数は少なかったけれど、今回も2020年と同じ2種類のケシマグソコガネを見つけることができました。
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 午後からは場所を木津川(京都府木津川市)に移してケシマグソコガネを探しました。朝からずーっと砂ばかり見ているので、目がチカチカして頭も朦朧としてきた中で探し続け、辛うじて2匹をゲット。家で実体顕微鏡で観察すると、ホソケシマグソコガネ(写真3枚目)とコケシマグソコガネ(写真4枚目)でした。
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 『日本産コガネムシ上科図説』(監修:コガネムシ研究会)によると、コケシマグソコガネは星3つ☆☆☆でどこにでもいるわけではないようですが、「芝生の移植で分布を広げるためどこで採れても不思議ではない」 と書かれています。実際、私も夢前川(兵庫県姫路市)や若草山(奈良市)、富雄川(奈良県大和郡山市)、木津川(京都府木津川市)など様々な場所で見つけています。場所的には芝生の移植とは関係なさそうですが、いずれも細かい少し乾燥気味の砂地に生える草の根際がお好みのようです。
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P5230577-1ハバビロコケシマグソコガネ越冬クリーニング後

 ホソケシマグソコガネとハバビロコケシマグソコガネは、前胸背の模様が似ているので混同しているケースが少なくないようです(私もその一人でした)。ちなみに2006年に新種として発表されたハバビロコケシマグソコガネは『日本産コガネムシ上科図説に写真が掲載されていませんが、ホソケシマグソコガネの特徴である「上翅の間室に列生する刺毛」(ホソケシマグソ:写真5枚目)が無い(ハバビロコケシマグソのクリーニング後:写真6枚目)ので見分けることができます。ホソケシマグソコガネの標本をお持ちの方は顕微鏡を使ってぜひ確かめてみてください。

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 3/6石垣市で採集されたアカマダラエンマコガネをいただいてシカ糞で飼育しているのですが、3/30にシカ糞を追加した時に細かい砂を浅く敷いたビンに移し替えました。で、昨日4/8糞虫館に来た糞虫好きの小学生に見せてあげようと思ってビンの底を見ると、ガラス越しに真っ白な卵があったんですよ!(写真1、2枚目)いやー、驚きました。飼育を始めた時に「既に交尾をしていて、上手くいけば産卵するかも」なーんて言ってましたが、まさか本当に産卵するとは・・・
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 私のエンマコガネの産卵のイメージは、糞の下に枝分かれした穴(トンネル)を掘ってそれぞれの穴の先端に糞を貯めて、その糞に卵を1個ずつ産むと思ってました。小さなビンなので穴は縦横無尽に掘られていて全容は分かりませんが、何ヵ所か糞溜まりらしきものがガラス越しに観察できました。ただ、現時点では糞溜まりに卵は確認できず、卵は穴の底にまとめて産み付けられ、7~9個くらいの塊になっていました。穴の底は特に育児室のような広がりはないようです。卵塊がハッキリ目視できるものだけで3カ所あった(写真3枚目)ので、少なくともこの1週間で20~30個くらいは産んでいることになります。
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 卵は少し歪な”長球形”をしていて、大きさは長径1.4~1.6㎜、短径0.8㎜くらいでしょうか。(写真4枚目)ガラスの厚みがあるので、実際より大きく見えているかもしれません。飼育個体は体長約8㎜ですから、産卵直後の卵はもう少し小さいとは思いますが、このサイズの卵を1度にまとめて7~9個産むのは大変なことだと思います。本当にこの卵はアカマダラエンマコガネの卵なのでしょうか?確信はぜーんぜんありません。
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 さらに幼虫も見つかって狂喜したのですが(写真5枚目)、よく見るとエンマコガネの幼虫の特徴である背中の大きなコブが見当たりません。その後、クロツヤマグソコガネの成虫2匹も見つかりました。(写真6枚目)この幼虫はどうやらクロツヤマグソコガネの幼虫のようです。実は飼育開始時に与えたシカ糞は厳しくチェックしたのですが、追加の糞を与えた時のチェックが甘く、その時に両方とも紛れ込んだようです。でも、卵はアカマダラエンマコガネが掘って実際に今も潜んでいるトンネル内に産み付けられていますし、このサイズの卵を産む他の生き物がこの小さなビンの中にいたらいくら私でもさすがに気が付くと思います。
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 今はとにかくこの卵がうまく孵化してくれることを祈るばかりです。日本では沖縄よりさらに南の石垣島等にしか生息しないアカマダラエンマコガネが、糞虫の聖地奈良で産卵して、その生育過程を目の前で観察できるなんて、幸せです。無事に成虫まで育ったら故郷の石垣島に送り返してあげないといけませんね。ん-、でもやっぱり標本にしてしまうかも。妄想はどんどん広がってますが、現時点では「アカマダラエンマコガネの卵らしきもの」があるだけという状況です。

今日はここまで。
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奈良公園糞虫観察会5/14の参加登録受付中!!
(4/9現在の参加登録者数:61名/先着100名) 

 

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