むしむしブログ

カテゴリ: ルリセンチコガネ

 11/4(金)に糞虫が『探偵!ナイトスクープ』で放映されることを聞いてはいたのですが、見逃してしまいました。でも最近は便利ですねー、ラジオを聞き逃しても「ラジコ」があるように、テレビには「TVer」というのがあって、放送後1週間はその番組が見ることができるようです。11/11(金) まで、こちらのURL( https://tver.jp/episodes/epdwnkdlfh )で動画を見ることができます。16:12~28:33の約12分間が「動く宝石⁉オオセンチコガネ」です。
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概要はコチラ⇒ https://www.asahi.co.jp/knight-scoop/archive.html
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 「探偵!ナイトスクープ」といえば、糞虫好きの人なら知らない人はいない大先輩の谷幸三先生が出演なさっていたという伝説の番組です。今回は石田探偵と生物ハンターの中岡さんが出ていて、糞虫館は出る幕がなかったですねー、残念。谷先生のところはどうだったんでしょう?

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!
館長が書いた『たくましくて美しい糞虫図鑑』(創元社)、全国の書店で好評発売中!

 子どもの発想は自由で面白いですねーなんて、わかったような口をきいていた自分が恥ずかしい。本当に自由に、不思議に思ったこと、知りたいと思ったことに正面から取り組み、調べる。今回の実験・観察の顛末を顧みて、大人は(というか、私は)その結果を過去の経験と知識から決めつけてしまうからこんな面白い発見ができないんだなーと深く反省させられました。本件は、糞虫館の今年の10大ニュースであること間違いなしの快挙です。
20210704_144021アオスジアゲハの幼虫と蛹(葉はタブノキ))
20210704_143949アオスジアゲハの幼虫の糞

 数週間前、お母さんと一緒に糞虫館に来た子(小学1年生)から「糞虫は虫の糞を食べますか?」という質問を受けました。チョウの幼虫を飼育していて糞を沢山するので(写真1,2枚目)、その糞を食べないかなぁと思ったらしい。「一般に虫の糞はとても小さいしニオイもほとんどしないので、糞虫は虫の糞を食べ物だと思わないから食べないんじゃないかなー」等と子供向きの回答をしました。その子の表情がイマイチ納得してなかったので、「虫の糞をたくさん集めて水で練って大きな糞の塊にして与えれば、もしかしたら食べるかもしれないね」と付け足しました。でも、そんなもん食べへんやろーと思ってました(ゴメンね)。
20210704_143943アオスジアゲハの幼虫の練り糞
20210704_143936虫の糞を食べるルリセンチ

 そんな会話があったことさえ忘れかけていた先週末、再び糞虫館に現れたその子の口から「アオスジアゲハの幼虫の糞をたくさん集めて練って与えたらよく食べた」との報告が。まさかと思って、小学校1年生を相手に私が質問攻めにするのを見かねた母親が「本当なんです」と証拠写真を取り出して見せてくれました。食べる様子をビデオにも撮ったそうです。その子が言うには、牙をもぞもぞ動かして、オオセンチコガネの体より大きなアオスジアゲハの幼虫の練り糞を最後はほとんどなくなるほどよく食べた、つまりたまたまちょっと口を付けただけ、かじっただけ、ではないということ。ホント、恐れ入りました。
 最後は私もマジになって「今回たまたまメチャクチャお腹がすいていて、たまたま食べただけかも。もう一回、同じ実験をしてほしい。それから、もしかしたらたまたまこの個体が虫の糞が好きなだけかもしれないから、ほかのオオセンチコガネもアオスジアゲハの幼虫の練り糞を同じように食べるか、試してほしい。」と伝えました。先入観抜きに改めて考えると、センチコガネの仲間は雑食性が強くて各種の獣糞や腐肉はもちろんのこと、キノコや樹液、堆肥なんかも食するそうだから、タブノキの葉っぱを食べたアオスジアゲハの幼虫の糞を食べることは突拍子もないことではない気がしてきました。外国には木の葉を巣穴にため込んで発酵させて喰う種類もいるらしいし。ならば、エンマコガネやマグソコガネに虫の練り糞を与えたら食べるだろうか? ちゃんとまとめて、コガネムシ研究会の『鰓角通信』に投稿すべき内容だと思いますね。この子より先にこんな実験をした人はいないでしょうから、たぶん日本で初めてじゃないのかな? もしかしたら、世界初!かもね。
(本文中の写真は、実験をした親子が撮影したものです。)


今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう。
『たくましくて美しい糞虫図鑑』(著:中村圭一 創元社)の発売は7/16。お楽しみに!
『フン虫に夢中』(くもん出版)も好評発売中 ‼
スズムシ(幼虫)10匹プレゼント中!入れ物を持ってきてね。

 いやー、素晴らしい!龍谷大学の卒業論文でオオセンチコガネの体色の謎に迫る研究をした学生さんが、その後、大阪府大大学院の生命環境科学研究科でその研究を継続、オオセンチコガネの飼育を続け、なんと先日「トンネルに糞を詰め込んで産卵しました」との連絡が。(写真1、2枚目)
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 つまり、昨年9月頃に採集したオオセンチコガネを越冬させて、この春に産卵に至ったということです。

 卒業論文では、体色の違いは交尾の相手選びには影響しないことを確認されていますが、今回のこの卵の両親は共に赤系統なので、遺伝により体色が決まるのであれば、F1は赤系統になる可能性が高く、ならなければ謎が深まるってところでしょうか。別のアプローチとして、孵化した幼虫を奈良公園のシカ糞で育てるっていうのはどうでしょう?もしルリ色の成虫になれば、体色はその地域の糞の成分に影響を受けるということだし、逆に幼虫時代の食べ物は体色に影響しないとの結論が得られれば、それだけでも体色に影響する要素が大きく絞られるのではないでしょうか。飼育ケースは複数個あるとのことですので、オオセンチコガネの卵がまだ他から見つかれば、自由な発想でいろんな実験にトライしていただきたいものです。なお、「ご意見・ご質問・アドバイスがございましたらぜひお願いいたします。」とのことですので、皆様からのコメントやメールをお待ちしております。
 あ、そういえば昨年コガネムシ研究会の総会でオオセンチコガネの産卵に成功した小学生の女の子が発表してましたが、その後もオオセンチコガネを飼育しているようです。 ブログ名:「虫のあれこれ。時々書評。」
→ http://fabreimomushi.hatenablog.com/entry/2019/02/07/203716

今日はここまで。
また明日!

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 奈良公園では桜が満開ですが、足元に目をやると、桜以上に美しいルリセンチコガネが出歩き始めました。冬を乗り越えたルリセンチコガネがこの時期続々と穴から地表に出て来ているのです。奈良公園のイチイガシや杉の根のところにぽっかりと直径1~1.5cmの穴が開いていたら、中を覗いていてみてください。青く輝くルリセンチコガネが、中からこちらの様子を伺っているかもしれません。
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今日はここまで。
また明日!
 

 前編の続きです。ならまち糞虫館で受ける最も多い質問がオオセンチコガネの色彩に関すること。「なぜ、こんなに綺麗な色をしているのか?」「なぜ、地域によってこんなに色が違うのか?」 学生の竹本さんは、誰もが抱くこの謎の解明に有用な実験をしているので、掻い摘んで紹介したいと思います。(話が複雑になるので体の大きさに関する部分は割愛しています。)

 実験は、まず京都、滋賀、奈良の3地域からオス・メス計108匹のオオセンチコガネを集め、個体識別マークを刻み、交尾頻度と鞘翅の反射スペクトル、身体の大きさの関係を調査しました。
 結果は、3地域混合でおこなった交尾実験では、同じ地域の個体どうしの交尾回数が特に多いということはなかった。また、体色の類似度と交尾頻度の関係において影響を示す有意な数値は得られなかったとのこと。
 よって、オオセンチコガネは配偶者を選ぶ際に、相手が同じ地域であることは重要ではない、色の違いが配偶者選択に与える影響が大きい可能性は低い、と考察している。

 なるほど、つまり奈良公園の青色のオオセンチコガネは意識的に地元の青いオオセンチコガネを選んでいるわけではないんだ。これが確認できただけでも大きな一歩だと思います。とすると、京都府南部の宇治のあたりには昔から美しい緑色のオオセンチコガネがいるので、中期的には奈良県北部(奈良市)に青緑色のオオセンチコガネが当然出現するはず。鈴鹿の山のオオセンチコガネも緑色らしいので、奈良県東部も青緑色のオオセンチコガネに変わっていくのか・・・。
 いや、すでにその変化は起きていて、先輩世代の糞虫好きの方は、「最近の奈良公園では、ルリセンチコガネの緑っぽいのが増えている」と言っています。また、私の40年前の標本には青緑色のものも少なくないのですが、当時は緑色の強いルリセンチコガネは奈良公園では珍しくて大変綺麗に見えたので、あえて標本に残していたのです。1966年に保育社から出版された標準原色図鑑第2巻「昆虫」(著:中根猛彦ほか)には「紀伊半島のもの(奈良を含む)は藍色に光り、ルリセンチコガネ subsp.ruri Nakane という。」とあり、緑っぽさを全く感じさせない記述がなされています。つまり、50年以上前は藍色と表現されるほど濃い青色だった奈良のオオセンチコガネは、周囲の緑色の個体とも交配を重ね、青緑色の個体が増えてきているのかもしれません。 
 ん?だとしたら、かつてはミドリセンチコガネとまで呼ばれた京都府宇治市あたりの美しい緑色のオオセンチコガネは、最近は青っぽくなっているはずですが、どーなんでしょう? そもそも、この私の妄想は「色彩は遺伝する、混ざると中間色になる」ということが前提になっているので、やはり繁殖・累代飼育して、F1やF2の色がどうなるか、確かめる必要がありますねー。

 奈良公園周辺は、この50年で小川の水量が減少したり湿地が消滅するなど目に見えて乾燥してきており、こういった環境変化が色彩に影響している可能性も捨てきれません。だって、遺伝説より環境説の方が、現在地域によって大きな色彩変化があることの説明がつきやすいように思えるのです。
 奈良公園のルリセンチコガネは、もしかすると我々人間に何か大切なメッセージを送っているのかもしれません。私にはもうムリですが、若い世代や竹本さんのような学生さんには頑張ってもらって、糞虫からのメッセージを読み解いていただきたいものです。

【参考】 
「オオセンチコガネの色彩変異と配偶者選択」(2019年1月23日)
龍谷大学 理工学部 環境ソリューション工学科
竹本 碧 
丸山 敦 准教授
(ならまち糞虫館でもご覧になれます)

今日はここまで。
また明日!

 
 

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