むしむしブログ

カテゴリ: 観察会

 東海道新幹線というドル箱を有し、1兆4千億円の売上(2023.3期)を誇るあのJR東海。その子会社JR東海ツアーズが「何か画期的な企画を!」ということで、白羽の矢がならまち糞虫館にグサッと刺さったわけですよ。遡ること2年ほど前、糞虫館に来た担当の方と意気投合し、普通に奈良公園を観察して歩くだけのツアーではなく、メインイベントとして糞山観察(写真1枚目)をやろうということに。つまり練り上げた巨大なウンコの塊をドンと置き、それをツアー客が囲んで座り、ルリセンチが次々に飛来する様子を観察するというもの。この企画はJR東海の内部でも話題になってトントン拍子で話が進み、ちょうど1年前にJR東海エキスプレス会員様限定ツアーで2回分を売り出したところ、なんと即完売。ところが2回とも台風の影響で雨の予報が出たため中止になったのでした(当日は晴れたんですけどね)。
IMG_7943-1奈良公園糞山実験(左石田右中村)

20231004_143630

 来年またやりましょうと言うのを社交辞令くらいに受け取っていたのですが、さすが一流企業ですね、ちゃんと引き継がれていて、今年も連絡が来たのでした。しかも今年はJR東海ツアーズ営業本部のみならずJR東海の関西広報室の人まで打ち合わせに参加するというすごいことになってました。ただ、今年はなぜかいつもの観察コースでルリセンチコガネの影が薄く、糞山を置いてすぐにルリセンチコガネが飛来しないリスクを感じていて、去年みたいに糞山観察を前面に出すことはやめました。良い場所まで行けば可能なのですが、10人以上の人数で、糞虫講座(事前学習会)会場のホテル尾花から観察しながら歩くコースでは時間的にタイト。それでも1回目(9/16土)はルリセンチコガネが1匹も見つからなかったので、少し奥まで行ってもらいました。そこで糞山を準備したのですが、準備の最中に子供がルリセンチコガネを次々に発見。その歓声を聞いて静かに座っていた大人たちもゴソゴソ周囲を探しはじめてしまい、ジ・エンド。私一人で20分ほど糞山を見てましたが、1匹も飛来しませんでした(翌日見に行ったら、糞虫が原形をとどめないくらいにまで粉砕してました)。座って静かに待つという「消極的な観察」より、糞や朽木の下を自ら探して回る「積極的な観察」が好まれるのがよく分かりました。なので、1週間後の2回目(9/24日)のツアーでは通常のコース内でしっかり探し、事前に置いた糞山をあとで見て回ることにしました。幸い2回目のツアーの時は想定した通りの場所でルリセンチコガネが見つかり、糞山はほとんど役に立ちませんでしたねー。
 2回とも生息環境の違いを意識しながら、事前学習で紹介したマグソコガネやエンマコガネ、センチコガネの仲間等8種類ほどの糞虫を皆で見つけることができたので糞虫観察会としては良かったのですが、私としてはどこからともなく飛来するルリセンチコガネの色、音、そして糞の香りを感じながら目で追う楽しさを経験させてあげたかったなぁと思っています。糞のニオイを嗅ぎながら24時間大きな糞山の横で飛来する糞虫を眺めることを楽しいと言い切る私の思いですから、普通の人にはいい迷惑かもしれませんね。
 この糞虫ツアーを取材してくれたのが朝日新聞。当日(9/16土)はホテル尾花での糞虫講座から参加し、観察ツアー終了後にお話をしたほか、後日メールのやりとりをするなど熱心な記者さんでした。その記事がこれ。こういうの、嬉しいですね!
20230927朝日新聞奈良版

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!
『たくましくて美しい糞虫図鑑』(創元社)は、全国の書店で好評発売中!

 奈良市東部の山添村有数の観光スポット「フォレストパーク神野山」にある めえめえ牧場。もう何回目なのかわからないのですが、今年もここで先週末(9/17)糞虫トーク&観察会をやらせていただきました。名前でわかるように、ここにいるのはヒツジなので、どんな糞虫がいるのか私も大変興味があって、いつもワクワクしながら観察しています。一方で、牧場は陽当たりがいい草地なので、参加者が期待するルリセンチコガネが見つかりにくい環境です(写真1枚目)。
DSC_0808

「糞虫」観察会なので、場所や季節、糞の種類が違えば観察できる糞虫の種類は異なって当然なのですが、ほとんどの親子は生きた「ルリセンチコガネ」を見たいと思っています。チラシに大きくルリセンチコガネの写真を使っている我々サイドにも責任はあるんですけどね(写真2枚目)。
20230917めえめえ牧場チラシ「糞虫の世界」

 もちろん生息していない虫を見せることはできませんが、この神野山にはルリセンチコガネが生息しており、牧場の側溝などにもよく死骸が転がっているので、何とか見つかるようにしてあげたいわけです。そこで、ルリセンチコガネを誘い出すために、観察会の前日にめえめえ牧場のスタッフがヒツジの糞を牧場内外の数か所に山積みしています。そして観察会の前半は牧場内の明るい草地で観察、後半は脇の林の中に置かれたヒツジ糞の山をつついてどんな糞虫が来ているか観察しています。小学校低学年の子供も多いので「環境の違い」を言葉で説明するより、憧れのルリセンチが実際にどんな場所で見つかるかを体験することで、そこから環境に違いを意識するようになるんじゃないかなーと考えています。さらに、観察会の終了後にお話した家族はルリセンチよりも「牧場にどんなエンマコガネがいるか見たかった」と言っていたので、糞虫沼にズブズブとハマりつつある家族も出てきたようです。 
 今朝は神野山から大雲海! | 奈良観光JP さん
 山添村は幻想的な雲海を見ることができることで有名ですし、奈良市内から一番近い星空観察スポットとしても売り出し中です。また、森林を切り開いてメガソーラーを設置する本末転倒の開発には反対の声を上げるなど、都市の後追いをするのではなく村の「地域資源」を活かす取り組みを積極的に行っているようです。私の糞虫トーク&観察会に参加した子供たちがこうした村の考え方を引き継ぎ、推し進めるチカラになってくれることを期待しています。

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう。

 小学生の親子を対象にしたこのイベントは2019年から続く山風舎さんの恒例の年中行事。昨年同様、①奈良公園で糞虫観察→➁木陰で『シカの白ちゃん』の読み聞かせ→③奈良の鹿愛護会で鹿角ストラップ作り をおこないました。
 今回は真夏の暑さが厳しい時期の観察(8/22)だったので朝8:30に観察地の近くに集合し、まだ涼しいうちに糞虫観察を実施。早起きした子供たちはほぼ全員がルリ色に輝くオオセンチコガネ(俗称:ルリセンチコガネ)をGET!さらに立派なツノのゴホンダイコクコガネも次々に見つかり、大人は完全に蚊帳の外でしたね(写真1枚目)。運よく糞を引っ張るオオセンチコガネを観察できた子もいました。 
IMG_5388

林の中で見つかった糞虫は、私の記憶では以下の通り。
 ①ルリ色に輝くオオセンチコガネ
 ②地味に輝くセンチコガネ
 ③ツノがカッコいい!ゴホンダイコクコガネ
 ④胸の左右に突起あり。カドマルエンマコガネ
 ⑤腕のながーいナガスネエンマコガネ(メスは長くない)
 ⑥ツヤツヤ黒光りするマエカドコエンマコガネ
 ⑦米粒サイズのマグソコガネの仲間1~2種
後半は明るい芝地での糞虫観察の予定で、ここであと1~2種見つかれば伊丹市昆虫館友の会の観察会(6/10開催)での9種類に並ぶ快挙達成!と思ったんですが、既に日差しが強烈で子供たちの関心は水辺の生き物へ。ここでもトンボやヤゴ、マツモムシなどを次々に見つけて盛り上がってました。
 この後、木陰で水分補給しながら山風舎の高橋さんによる恒例の「シカの白ちゃん(1954年誕生、1972年交通事故死)」(写真2枚目)のちょっと悲しい、人間と野生動物とのかかわり方について考えさせられるお話。さっきまでワーワーはしゃぎまわっていた子供たちが静かに耳を傾けていました(写真3枚目)。


IMG_5398
 
 最後は奈良の鹿愛護会でシカの角のお話等を聞いた後、角の切片を磨いて絵を描いて自分だけの鹿角ストラップ(写真4枚目)を作ってお土産に持って帰りました。みんなの楽しそうな笑顔、サイコーです!(写真5枚目)
DSCN0615-1
IMG_5401-1
(※奈良公園での糞虫観察会では、基本的に観察後すべての糞虫をリリースしています。)

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!
『たくましくて美しい糞虫図鑑』(創元社)、全国の書店で好評発売中!

 コロナ禍で2019年を最後に開催を見送ってましたが、今年はあの『日本産コガネムシ上科図説 (食糞群)』を監修したコガネムシ研究会と『たくましくて美しい糞虫図鑑』のならまち糞虫館が力を合わせて大々的に第10回奈良公園糞虫観察会を開催いたしますっ!と言っても、4年前も大々的にやっているので、規模的には100人というのは現状維持ですけどね。
hun_00003 (2)

 ただ、4年前に比べると「糞虫」への注目度は確実に上がっているし、家族での参加が多いし、今年から「先着100名限定」なので、参加希望の方は早めにコガネムシ研究会のホームページ⇒  http://www.kogane.jp/blog/topics/5-14-10/ から申し込んだほうがいいと思います。興味のあるお友達にもぜひ教えてあげてください。これから徐々に自然観察グループや公民館、学校などにお知らせしていく予定です。

日  時:2023年5月14日(日),午前9時受付開始,午前9時30分から観察会開始.
場  所:奈良公園飛火野の芝生広場(集合場所は下の地図をご覧下さい).
参加資格:どなたでも参加できますが,小学6年生以下の方は必ず保護者同伴でお願いします.募集人数は先着100人です.
参 加 費:一人500円(保険代金を含む)
用意するもの:飲み物,昼食,白いバット(20×20㎝ぐらい,この中に鹿の糞を入れて割ります),割り箸,空気穴を空けたタッパー(水で湿らせたティッシュを入れておく),ピンセット,小さなスコップ.

観察会は,10人前後のグループに分かれて行ない,12時に終了します.最後に記念写真を撮影し,記念品等を配布します(協賛:株式会社 黄金糖).その後は芝生広場で各自昼食を摂ってから解散ですが,さらにディープなフンコロガシの世界を見たい人は「ならまち糞虫館」へ移動して館長の話を聞きましょう.

参加申込:4月30日までに事前登録が必要です.先着100人の受け付けです.参加登録フォームhttps://forms.gle/fKJ6aVfqE1YLK3Cn6(ここをクリック)あるいは画面下のQRコードから事前登録をお願いします.

当日は小雨決行ですが大雨や災害等で中止となる場合があります.その場合は事前登録いただいたメールアドレス宛に前日午後7時30分ごろに連絡します.ご不明な点は下記のメールアドレス/ウェブサイト宛にお問い合わせ下さい.
コガネムシ研究会:taikai@kogane.jp / https://www.kogane.jp/
ならまち糞虫館:https://www.hunchukan.jp/

下のQRコードをスマートフォンで読み取ると参加登録フォームが開きます。


登録フォーム


今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!

 私の母校、奈良市立飛鳥小学校の横にある飛鳥公民館。この公民館の主催で毎年糞虫の講演会や観察会が開催されてます。『市民だより』とHPに掲載するだけですが、毎年盛況で今年も30人の枠がすぐに埋まって抽選になったそうです。糞虫もだんだんと市民権を得てきたのかもしれません。嬉しいですねー。ただ、今年は糞虫館の9~10月の予定が早々に埋まっていたので、本件は10月の最後の土日になってしまいました。時期がちょっと遅くて寒い日も多かったので「ルリセンチコガネが見れなかったらどうしよう」と少し心配してたんですよ。
 【 写 真 】
 当日は快晴。朝は冷えたもののお昼頃には気温も上がるので何とかなるだろうと、10時から奈良公園で観察会を始めると、最初は全然見つけられなかった小学生たちがコツをつかんで次々にナガスネエンマコガネをほじくり出してました。たくさん採れたので、ナガスネエンマコガネのオスの特徴である「腕が長い」のがなんとなくわかるようなった子もいました。そのうち大型のカドマルエンマコガネもぽつぽつと見つかるようになり、ほとんどの子供が糞虫を捕まえることができたので、日当たりの良い芝地から暗い林の中に場所を移して観察再開。さすがにこの時期はゴホンダイコクコガネは見つからないので、大人も子供もルリセンチコガネ狙いです。が、いません。見つかるのはコオロギや巨大ミミズ、ゴミムシ、ゴキブリ。ようやく地味なセンチコガネは見つかったものの、ルリセンチコガネは、羽や前胸などルリ色に輝く体の一部は見つかるものの、生体は見つからず。林内観察の終点にしていた小川を超えてさらに奥まで進んで、でも、その先は崖なのでこれ以上は行けません。今日はダメかなと思ったら「いました!」の声が。まあ、虫なので見つからないことはあっても当たり前だし、私が悪いわけでもないはずなんですが、やっぱりね。その後、デカい獣糞があって、センチコガネが面白いようにコロコロ出てきました。人生、苦あれば楽ありです。よかったー。  
 この飛鳥公民館のイベントは、1日目は糞虫のお話をさせてもらってその後糞虫館をご案内。2日目が奈良公園で糞虫観察会という、まさに理想的なプログラム構成なので、来年もぜひ開催してほしいと思っています。一度でも一匹でも自分で糞虫を見つける経験をしたら、その後はホントにどんどん見つけることができるようになります。友達に糞虫の見つけ方を教えてあげることもできます。新しい不思議が増えていきます。せっかくこんなに素晴らしいフィールドがあるのだから、楽しまなければもったいない。すごいぞ!奈良公園。友達を連れて、割り箸をもって、奈良公園に行こう!

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!
館長の書いた『たくましくて美しい糞虫図鑑』(創元社)、好評発売中!

このページのトップヘ