むしむしブログ

タグ:エンマコガネ

 1950年代の奈良公園には、ヤマトエンマコガネが普通に生息していたらしいです。ヒトの糞を好むらしく、当時は何十匹も飛来したとの記録もあります。春日山や若草山の観光客の野グソ(当時は公衆トイレ事情がよくなかった)を食べて暮らしていたのかもしれません。しかし、少なくとも私が奈良公園に通い始めた1977年頃には、奈良公園一帯ではほぼ見られなくなっていたのではないでしょうか。
 一般に糞虫は、あまり糞の種類を選り好みをせず、いろいろな動物の糞を食べることが多いようです。まあ、セマダラマグソコガネのようにイヌ糞が大好きで、奈良公園の有り余るシカ糞には目もくれない奴もいるのですが、コブマルエンマコガネやチビコエンマコガネのようにイヌ糞が好きなんだけれど無ければシカ糞でもOK!というのが普通です。もしかしたら、ヤマトエンマコガネはヒトの野グソの味がいつまでも忘れられず、シカ糞を拒み続けた結果、奈良公園から姿を消したのかもしれません。
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 この1ヶ月間に滋賀に5回行って観察できたヤマトエンマコガネは、タヌキの溜め糞で2匹、イヌ糞で2匹、ドロドロに腐ったでキノコ1匹。でも一番観察機会の多かったシカ糞では1匹も見つけられませんでした。確かにシカ糞のニオイは上品で、他の強烈なニオイに比べれば吸引力が劣っていても仕方ない気がします。でも、他に食べるものがなければ食べるのではないか。で、貴重なヤマトエンマコガネを持ち帰り(写真1枚目♂、2枚目♀)、奈良公園のシカ糞で飼育することにしました。初めて採集したので標本にしようか迷ったんですが、長期間シカ糞で飼育できるか否かで奈良公園からヤマトエンマコガネが姿を消した大きな要因の一つがわかるかもしれないと思うと、やっぱ試してみるしかないでしょ。楽しみです。ちなみに、私はセマダラマグソコガネ10匹を同様にシカ糞で飼育し全滅させた前科があります。

今日はここまで。
また明日!

 生き物は互いに生存競争をしていて、糞虫もその例外ではないという。特に奈良公園のように多くの種類の糞虫が生息する所では、競争を避けるために食べ物(シカ糞、イヌ糞、牛糞など)、生息場所(森、芝地、砂地など)、出現時期(春夏秋冬など)、活動時間帯(昼、夜など)が異なっていることがこれまでの観察で明らかにされている。なので、例えばイヌ糞はクサいからといってあまり観察しないでいると、ごく普通種であるセマダラマグソコガネにさえ出会うことは難しい。冬は寒いからといって観察に出かけないでいると、ネグロマグソコガネやチャグロマグソコガネを見ることはできない。
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 でもねー、糞虫同志は実際のところどう思っているんだろーね。春の奈良公園のシカ糞には、カドマルエンマコガネ、クロマルエンマコガネ、ナガスネエンマコガネ、クロツヤマグソコガネが数えきれないほど(写真1枚目)集まっています。デカいイヌ糞には、センチコガネとオオセンチコガネが20匹近く、さらにクロマルエンマコガネ、カドマルエンマコガネ、ナガスネエンマコガネなどがうじゃうじゃ見られました(写真2枚目)。朽木の樹皮の下には、クロツツマグソコガネとヒメツツマグソコガネがすぐ近くにいることも(写真3枚目)。こんな場面を見ていると、糞虫達はそれぞれ好き勝手に好きな時に好きな所で好きな物を食べているだけではないか?と思えてきます。そもそも地球上には何十万種も昆虫がいるのだから、お互いを気にして生きていたら住む場所も食べる物も無くなってしまんじゃないかなー。糞虫に一度聞いてみたいですね。

今日はここまで。
また明日!
 

2/24 晴 10:00〜12:00 奈良公園 
同行者:中谷調査員
環境Ⅱ(芝地と林の境目)
 湿った朽木 クロツツマグソコガネ4
環境Ⅲ(明るい林) 
 湿った朽木 ヒメツツマグソコガネ1
        クロツツマグソコガネ1
 シカ糞塊中新 ネグロマグソコガネ10+
        チャグロマグソコガネ5+
 シカ糞粒中新 ネグロマグソコガネ5+
        チャグロマグソコガネ5+
環境Ⅳ(林)
シカ糞塊新 オビモンマグソコガネ2
       ネグロマグソコガネ10+
      チャグロマグソコガネ10+
 シカ糞粒中古 マグソコガネ属の幼虫1
 
ルーペがなかったので、ミゾムネマグソコガネもチャグロマグソコガネにカウントしていますが、相当数が含まれています。今日はイヌ糞ノーチェックなのでセマダラマグソコガネを観察できませんでしたが、冬に奈良公園でよく見ることのできる6種類を全てカバーできました。満足です。あ、マグソコガネ(Aphodius rectus)を見てませんでした。しまったぁ!
それにしても奈良公園ってすごい場所だと思いませんか?ほんの2時間で8種類(今日は6種類でしたが)もの糞虫に出会えるんですよ。まさに糞虫の聖地ですね。

今日はここまで。
再見!



 

 冬の糞虫を飼育している糞塊からたまたま発見した白い卵。すでに1週間が経過しましたが、卵が大きくなったり、色が変わったりといった、大きな変化は確認できません。まあ、発見当初は透明感のあるプルプルしたゼリーのような感じでしたが、若干みずみずしさはなくなってきたようです(写真1枚目2/14、2枚目2/18、3枚目2/21)。IMG_8492-1
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 見つけてからもそのままにしていたら、成虫が歩き回って踏んだりかき回したりしたらしく、5つあったうちの1つしか残っていなかったので、今は別容器に保護しています。相変わらず、ほかに新たな卵は発見できませんし、交尾する様子も観察できていません。
 セマダラマグソコガネはシカ糞では落ち着かないのか、糞の表面でウロウロする姿が数頭観察できるのですが、ネグロマグソコガネは糞塊の中にしっかり潜り込んで、元気に暮らしています。しかし、夜になると動き出して糞塊の外にも出るようで、容器のふたの隙間にはネグロマグソコガネが毎回10匹以上挟まっています。

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 奈良公園から連れて帰った幼虫のうちの1匹は、体内の糞をすべて排泄したらしく、全身が白くなっていました(写真4枚目)。蛹になる日も近いのかもしれません。

今日はここまで。
また明日!
 

 1ヶ月ほど前、マグソコガネの仲間の幼虫と共に卵の殻と思われるものが見つかりました。野外から持ち帰った糞の中から見つけたものだったので、それ以上のことはわからなかったのですが、今度はセマダラマグソコガネ等を飼育している容器の糞塊の中から、こんなものが出てきました(写真1、2,3枚目)。
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 卵は非常にみずみずしく、産み落とされたばかりのように見えます。容器の中には、セマダラマグソコガネ、ネグロマグソコガネのほかチャグロマグソコガネも少し入っています。どれが産んだのかはわかりませんし、そもそも糞虫の卵かどうかも自信がありませんが、飼い始めて2週間ほどたっているので、採取した糞の中に始めからあったとは考えにくいと思います。糞も土も粉々にして確認はしてませんが、糞虫以外に目立った生き物はいないと思われます。糞虫の様子は、イヌ糞好きのセマダラマグソコガネはやはりシカ糞はお好みではないらしく、糞に潜り込まずに歩き回っていることが多いです。ネグロマグソコガネは幸せそうに暮らしてますが、身体に対して卵が大きすぎるような・・・。そもそも、クロツヤマグソコガネだと産卵前にあちこちで交尾をしていましたが、こいつらは交尾をしている姿がまだ1組も観察できてません。あちこち掘り返してみましたが、同じような卵も見つかりません。

 んー、たぶん違うんでしょーねー。あまりムシっぽくない卵ですもんね。あまり期待せずに観察を続けます。

今日はここまで。
再見!

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