むしむしブログ

タグ:フンコロガシ

 4年ほど前に初音ミクというネットの世界で作られたアイドルが歌うゴホンダイコクコガネの歌を作った人がいて、このブログでも紹介したことがあります。今度はついに生身の人間、しかも本物の歌手がフンコロガシの歌をリリースしたというお話です。
 10月の初めに山口ケーブルテレビジョン株式会社から糞虫館のHPの問合せメールで「フンコロガシのことを番組で紹介したいのでその生態について教えて欲しい」との依頼がありました。糞虫の存在やその役割を広く知ってもらうことができるので、テレビ局や新聞社の方からの取材は積極的にお受けしており、今回も何度かやり取りしたのですが、相手はなんと自分で作詞・作曲して歌っている、いわゆるシンガーソングライターの高橋真実さんだったのです。現在「生き物ソングでHAPPY!」という番組で、生き物たちが頑張っている姿を歌にして毎月1曲生き物ソングとしてリリース、幼稚園を訪問する番組で毎日流しているとのこと。11月はフンコロガシがテーマで、「コロコロフンコロガシ」♪はYou Tube でも映像をアップしているそうなので、もう見た人もいるかもしれませんね。生き物ソングなので対象は虫だけではなくて、10月はトラ、9月はオタマジャクシ、という感じです。
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 番組のDVDの他にアルバムのCDも頂いた(写真1,2枚目)のですが、どの曲も真実さんのはじけるような歌声に元気が湧いてくる感じがします。「シロクロつけてたらなんだか疲れませんか?シロクロつけつけるなら、私についてます。」なーんて歌詞のある「シマウマの気持ち」。「鹿せんべい」というシカの歌もありました。なぜが涙が出てきた「セミの夢」なんかは最高の人生の応援歌です。高橋真実さんはそんなに生き物に詳しい方ではないと思いますが、生き物の気持ちを僕らと同じように深く読み取ることができるんだなぁと思いました。今回私は虫の生態や生き様をこんな形で多くの人に伝える方法がある事を知りました。機会があれば、B.Bクイーンズの「踊るぽんぽこりん♪」(の変なオジサン)ぐらいのパートなら歌えそうだから、高橋真実さんのステージ(幼稚園でもいいんですが)に呼んでいただき、一緒に生き物のことを大勢の人に歌で伝えたくなりました。生き物ソングのプリンセスとフン虫王子のデュエットなんてロマンチックじゃないですか?もしかしたら、You TubeでバズってNHKの紅白歌合戦に出場できるかも⁉ いやー、ワクワクしてきましたよ。夢を100人に話すと実現する、という格言もありますから、まずはこのブログへのアクセス100人達成を目指します(笑)。SUCCESS PROMOTION(高橋真実さんの所属プロダクション)からのオファー、お待ちしています!

今日はここまで。
週末は糞虫館で会いましょう!
『たくましくて美しい糞虫図鑑』(創元社)は、全国の書店で好評発売中!

 一昨日、このブログで予告した通り、ペアのフンコロガシ(スカラベ・サクレ)が7/14に埋めた糞玉を掘り出して割ってみました。8/20に1個目を割った時はハチミツ色の美しい蛹が出てきたので、今回もかなり期待していました。でも、プラケースの外側からは地下室が見えていなかったので、そもそも糞玉は残っているのか?産卵したのか?わからない状態でした。ケースをひっくり返して土を出すと、そこに地下室が現れ、やや大きめの糞玉が見えました。ケースの底の真ん中あたりに地下室を作っていたようです。(写真1枚目)
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 糞玉はしっかり仕上げられており、出っぱりのある西洋梨型つまり産卵されたものでした。(写真2枚目) 周囲には繊維状の細い菌糸みたいなものが絡みついていましたが、特に異常は見られません。1個目の時は黒いヘドロのような薄い土壁一枚になってましたが、今回はなってません。
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 うまく育っていれば蛹がいるはずですから、カッターナイフで慎重に少しずつ切り込みをいれていきます。壁を貫通するとナイフの通りが軽くなるのでわかります。中の虫を傷つけないようにそこからはピンセットで穴を開け、穴を大きくしていきます。中はくりぬいたような空洞が出来ていますが、蛹がいません。空っぽです。よく見ると、幼虫の皮らしきものが残っています。(写真3枚目)
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 産卵、孵化までは順調だったものの、幼虫が少し育った段階で死んでしまったようです。糞玉の中心付近まで食べ進んでいましたが、糞玉の重さはまだ20gもある(写真4枚目)ので、水分の減少等も考慮すると恐らく3分の1も食べてないと思われます。空洞内にはダニの発生はなかったので、今年から実施している熱湯消毒は一定の効果があったと考えられます。この糞玉は大きくてしかもペアが埋めていただけに期待が大きかったのですが・・・本当に残念です。

今日はここまで。
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 私が今一番気にしているのが、先日(8/20)割った糞玉から出てきた透き通ったハチミツ色のフンコロガシの蛹のこと。水飴のように透き通っていたものの少しハチミツ色だったので、蛹になって2,3日経っていたと思われます。写真1,2枚目は、8/31の蛹の写真です。光や少しの振動には反応せず、糞玉を割った時に少しクネクネ動いた後は一度も動くのを見たことが無いので、本当に生きているのか?と心配になっていたのですが、蛹になって2週間、着実に内部で変化が起きていました。
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 今回よーく観察すると2週間前と比べて全体的に白濁して透明感がなくなり、前脚の腕(前脛節)の大きなギザギザの先や眼が黒くなっているのがわかります。『ファーブル昆虫記Ⅰ ふしぎなスカラベ』(集英社、訳:奥本大三郎)によると、蛹の期間は最短で21日、最長で33日。28日で成虫になるものが最も多かったと書いてあります。つまり、今ようやく成虫になる準備の半分が整った感じでしょうか。素焼きの植木鉢には小さな穴をあけたラップで蓋をしているのですが、何度も蓋を開けているので徐々に乾燥してきているはずです。土はまだほんのり湿り気があるので今は問題ない状態と思うのですが、これからの残り2週間で乾燥が進んだ場合は加湿が必要になるかもしれません。でもやりすぎると蒸れたりカビたりするような気もするし・・・。
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 もうひとつ気になっているのが羽化がうまくできるのかということ。フンコロガシは糞玉の中で羽化し、体が固まっても雨季が来るまで糞玉の中にとどまっているのです。目の前の糞玉は半分近くが壊されて取り除かれているので、うまく脱皮してきれいに蛹の皮を脱ぐことができるのか、心配しています。私の半生を赤裸々に描いた『フン虫に夢中』(くもん出版)でも紹介されていますが、小さい頃飼っていたアオスジアゲハの幼虫が蛹になり、やがて羽化したものの羽がうまく伸びず、幼い私が伸ばしてあげようと引っぱって翅をちぎってしまったという悲しい思い出があるのです。いまだに昆虫の羽化や脱皮の場面に遭遇すると、いつもそのことを思い出すのです。ま、もう子供ではないので、もし脱皮が上手くいかなかったら「糞玉が壊れていたのでうまく羽化ができなかった可能性がある」と淡々と報告し、その原因について観察結果を基に考察したいと思います。でも本当は無事に羽化してほしい、ただそれだけを祈ってます。

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 ならまち糞虫館でアフリカから来たフンコロガシ(スカラベ・サクレ)の飼育を始めてもうすぐ2ヵ月。私の手元には卵を産み付けられて西洋ナシ型に変形した糞玉や蛹にまで成長した糞玉などがあって、毎日糞玉や蛹を見て楽しんでいます。8/22にも既に産卵経験のあるメスが糞塊(奈良公園のシカの糞塊約20個に熱湯をかけてダニを殺し、練り固めたもの)から大きな糞玉をくり抜くように切り出して(写真1枚目)、あちこち転がした末に地面に埋めました。
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 翌日(8/23)地下室を完成させ、いよいよ産卵かと思ったら、なんと糞玉をモグモグ食べているではありませんか!相当な量を食べたらしく、お尻の辺りには糸のような糞が重なり合っていました。(写真2枚目) この個体はメスであることが確認できているので、てっきり卵を産むものだと思っていただけにちょっとガッカリです。
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 今日(8/25)見ると、表面が丁寧にまーるく削り取られたようになっていました(写真3枚目)。もしかしたら糞玉の仕上げ作業をおこなっている最中で、余分な糞を削り取って食べていたのかもしれません。確かに糞塊からくり抜いた糞玉は大きくて、通常の完成した糞玉の倍以上の大きさがありました。今回に限らず、糞塊からくり抜く糞玉はかなり大きかったり形が歪だったりすることも多いのですが、数週間たって掘り出すと小さくて美しい球体か西洋ナシ型に作り変えられています。私は大きな糞玉を地下室で押し固めて小さくすると思ってましたが、幼虫の成長に必要な量を残して親虫が食べていたんですね。まだこの糞玉は産卵されていないので何とも言えませんけど。
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 4年前に飼育した時も含めこれまでに見た30個くらいの地下室はそのほとんどがプラケースや水槽の底に作られていましたし、昆虫写真家 今森光彦氏の『スカラベ』(平凡社 1991年)の生態写真からも30cm以上の深さに埋めると思っていました。しかし今回は地表から10cmほどの深さで、プラケースの底まで5cm以上余裕がありました。これは『ファーブル昆虫記Ⅰ』(集英社 訳:奥本大三郎)p91の「スカラベの母虫がほった巣穴は地下十センチばかりのところにあります。」に一致するので、もしかしたら土の硬さや質、湿り具合などによって変化するのかもしれません。
 200年前に生まれたファーブル先生がフンコロガシに夢中になり、退職後にアルマスで見た光景と同じ光景を、今こうして私が見ているのだと思うと、感慨深いものがあります。フンコロガシの謎と魅力は200年たっても尽きるどころかますます深まるばかり。すごいぞ!フンコロガシ。

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 7/2にフンコロガシ(スカラベ・サクレ)のペアが糞玉を埋めて、1週間後に1匹が這い出し(たぶんオス)、2週間余り後に2匹目も這い出してきました(たぶんメス)。家の土間等の比較的涼しい場所に置いてましたが、エアコンはないのでプラケースの中は地中でも30℃を超えていたでしょう。交尾をしたペアが埋めたので産卵は確実と思ってましたが、現在ケース越しに見える糞玉の表面は真っ黒に変色しており「ダメだろーなー」と思ってました。1ヶ月半が経過したので、もしうまく育っていたら大きな幼虫になっているだろうけどねなどとブツブツ言いながら、今日糞虫館に来てくれた子供たちと一緒に掘り出しました。普通、糞玉はまわりに土がついていますがシカ糞の場合茶色っぽくなります(写真1枚目)。しかし掘り出した糞玉は、黒いヘドロで覆われたような変わり果てた姿になっており絶望的な気持ちになったのですが、振ってみるとコトコト音がします。干乾びた幼虫の死骸が出てくると思いつつ、慎重にナイフで割ってみると、なんと薄い飴色をした透けるような蛹が出てきました(写真2枚目)。
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 振動で少しクネクネ動きましたが、カブトムシのように激しくは動きません。予想外の展開で一緒に見ていた来館者の方より私の方が興奮してましたね。とりあえず素焼きの植木鉢にケースの土を入れて窪みをつけて、割った糞玉ごとそっと置いて、ラップで蓋をして、暗くしておきました。(写真3枚目) 写真をとりまくったけど、だいじょうぶかなぁ。
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 蛹の上をダニが3匹歩いていましたが、この程度であれば問題ないでしょう。4年前は幼虫にダニが大量に取りついていたので、今回は巨大糞団子を与える前に糞に熱湯を何度もかけてダニを殺したのがよかったのかもしれません。黒いヘドロの正体は何なんでしょう?親が糞玉の小部屋から出て行ってから変化してますから、親虫の出した物質ではありません。ということは「幼虫が出すヘドロ状の物質」=「幼虫の糞」 以外に考えられません。糞玉の壁はもはやシカ糞の名残はなく、ほぼすべてが黒いヘドロでできていました。(写真4枚目)
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 外側はパイナップルみたいにデコボコで、内側はなめらかスベスベ。糞を壁が抜けるほど食べてそこに糞をぶちゅっと出して穴を埋める。これを繰り返して最終的に黒いヘドロの固まったような糞玉となり、汚物を出し切ったところで蛹になる。想像ですが、目の前にある糞玉の表面と内側を見ながらそんなことを考えました。8/4に埋められた2つ目、3つ目の糞玉の表面は少し毛カビみたいなのが絡まってますが、普通の糞玉のままです。この糞玉の幼虫は順調に育てば9/22頃には蛹になっているはずですから、今回同様黒いヘドロ状の物質で覆われた糞玉になっているか、確かめたいと思います。でも、こんなことはファーブル昆虫記にも書いてなかったように思います。ファーブル生誕200周年となる記念すべき今年、私的には世紀の大発見⁉になるような予感がしています。

今日はここまで。
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