むしむしブログ

タグ:昆虫

 スイスアルプスの中で最も有名なユングフラウ、メンヒ、アイガー。そんな名峰を横目に牛の糞をほじくる怪しい観光客(私です)。多くの観光客は登山鉄道に乗りますが、歩いて下山する人も少なくありません。そんな人たちの視線を避けて私が採集した糞虫は18頭なんですが、10/18と10/22の当ブログで紹介した4頭以外は全て同じ種(写真1~6枚目)と思われます。
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 個体によって上翅の色は真っ黒だったり赤褐色だったりして明らかに異なっていますが、体型、頭部の形やコブ、前胸背板の点刻、上翅の条溝、肩歯、小楯板などは、どこを見てもこれといった違いが見出せませんでした。色彩については黒っぽい赤褐色の個体も多く存在することから、どうやら色にはバリエーションがあると考えるほうがよさそうです。
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 結局、30個以上の牛糞を調べて、4種類のマグソコガネの仲間を18頭採集した、という結果でした。まあ、あまり熱心に採集したとは言えないのですが、8月下旬のスイスアルプスの登山鉄道(グリンデルワルドGrindelwald~ユングフラウヨッホJungfraujoch)沿線には、牛糞の量に比べて生息する糞虫の種類も数も少ないような気がします。森林限界を超えた場所では、環境が単純であることや夏の一時期しか牛の放牧がなされないこと、アブやハエの勢力が強いこと等が関係しているのではないでしょうか。全くの想像ですが。
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【参考】 当ブログの8/30(スイスアルプスで糞虫をGET!)に頂いたコメントの中に「・・・ユングフラウ鉄道のクライネシャイデック付近の放牧地で探した時も、マグソコガネ属4・5種だけでした。中にオオツヤマグソコガネとツマベニマグソコガネがあり・・・」とあります。20年ほど前のことだそうです。


今日はここまで。
再見!

 スイスアルプスで採集したマグソコガネの仲間のお話の続きです。

 これは最初はマグソコガネ(Aphodius rectus)に似てるかなーと思ったのですが、標本にしてよく見てみるとやはり違いますねー。写真1,2枚目の個体は8mm弱(台紙の幅が7.5mm)あり、頭に低いコブが3つ。
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 マグソコガネにしては少し大きすぎるし、体型やツヤ、前胸部と腹部のバランスが若干違うような・・・。頭部の前縁の形も。保育社の原色日本甲虫図鑑(Ⅱ)によれば、そもそもマグソコガネ(Aphodius rectus)はヨーロッパにいないらしい。大きさが8mm近くあるマグソコガネの仲間は日本ではある程度絞られてきますが、どうやら該当する種はないようです。
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 写真3,4枚目の個体は7mm弱で、最初は写真1,2枚目と同じ種だと思ってたのですが、頭部のコブや前縁、頬の形状が明らかに違っており、今は別の種類ではないかと思っています。頭のコブが明確な突起になっているんです。それがわかるような写真を撮ろうとかなり頑張ったんですが・・・。このタイプの個体は、今回18頭採集したうちの2頭のみだったので検証しようもなく、単なる個体差によるものである可能性も否定できません。
 実は、私の本棚にはマグソコガネの仲間について外国語で書かれた本が何冊かあって、それをよく読めば何かヒントが得られるかもしれないのですけどね。今後の課題にしておきます。


今日はここまで。
再見!

 正確に言うと、認められた経費の3分の2(上限400万円)を補助していただけるものなので、工事が終わって検査を経て認められないといけないのですが、とりあえず2次募集のたった一つの枠に選ばれたということは、大きな自信になります(写真1、2枚目)。 と同時に、もはや後戻りはできない、最後までやり遂げなければならない、というプレッシャーも感じております。ここまで来たからには、糞虫を愛する皆様のみならず、生き物や自然を大切に思う地域の皆様、そして奈良にやって来るまだ糞虫の魅力に気付いていない皆々様にも喜んでいただける施設になるよう、全力を尽くしたいと思います。
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 審査員からの総評に「糞虫というニッチな領域でどの程度盛り上がるのか」という課題が呈されていますが、東京目黒の寄生虫博物館や山形水族館のクラゲの展示の例を出すまでもなく、ニッチメジャーこそがこれまでも、そしてこれからも最強なのです。「山椒は小粒でピリリと辛い」なのです。ん?
 糞虫の聖地・奈良公園にほど近い”ならまち界隈”に(うまくいけば)来年の夏オープンする「ならまち糞虫館」。展示する虫や写真をこれからとりに行かねばならないという、ドロナワ状態に陥っていますので、あまり期待せず待っててくださいねー。


今日はここまで。
再見。
 

 8月の下旬にスイスに行きまして、もちろん避暑なんですが、やっぱり牛の放牧されているのを見るとついついほじくってしまいまして、結局は奈良公園でやってることとまったく同じ、つまり観光客の視線を避けながら糞虫採集をしてきた、その結果報告です。8/30、9/18のブログで書いたのとダブった内容が多いのですが、ご容赦ください。
 スイスアルプスには、夏は森林限界を超える高地の草原にも牛がたくさん放牧されていて、あちこちにいい感じの牛糞がたくさんありましたが、私が確認できた糞虫はマグソコガネの仲間3種類、18頭。30こ以上はほじくりましたから、私が採集下手であることを考慮しても「あまりいなかった」と言っていいのではないかと。代わりにアブやハエが多く、糞のなかでアブの幼虫がうごめくおぞましい光景を何度も見てしまいましたよ。
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 おっ、これはクロツヤマグソコガネ(Aphodius atratus)か? と思ったマグソコガネの仲間(写真1枚目)です。私的にはクロツヤマグソコガネ(写真2枚目)は鈍い光沢と認識しているので、その大きさと体型、鈍い光沢からそう思ったのですが、比べてみると全く別物ですね。上翅間室に点刻がなく、擦れたようにツヤがないのがよくわかります。頭には3つのコブがはっきりと確認できます(写真3枚目 右側はクロツヤマグソコガネ)。
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 スイスアルプスの長く厳しい冬を耐えるための特殊な形質(毛が生えてるとか体型が丸いとか)を身に着けた珍妙な糞虫がいるかも、と妄想は膨らんでいたのですが、意外に平凡な結果に終わりました。でも、こんな平凡に見える小さな糞虫が驚くべき習性をもっている可能性までは否定できません。だって、冬はメチャメチャ寒くて地下まで凍るようなとこですからね。もしかしたら毎年冬に山の上の糞虫は死滅して、翌年牛と共に山の麓がら上がってくるのかもしれません。てきとーなこと言ってますが、謎です。

最後にテスト。
日本のクロツヤマグソコガネとスイスアルプスのマグソコガネSPが混ざってますが、どっちがどっちか見分けられますか?(ヒント:どちらも2頭づつです。)
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今日はここまで。
再見!

 宮本吉雄さんは特定非営利活動法人奈良県青少年文化振興協会の代表理事をなさっていた方ですが、実は私は宮本吉雄さんもその活動も直接は知りません。宮本さんと親交のあった方のfacebookでたまたま「奈良公園のシバとシカとフン虫とヒトについての考察」(小冊子 写真1枚目)の事を知り、糞虫ネタになるかなーくらいの軽い気持ちでいただいたのですが、宮本さんの自然環境に対する思いと危機感が感じられ、その傍観者になることなく活動されている様子に心動かされました(写真2,4枚目)。宮本さんは決して糞虫に詳しいわけではありませんが、その思いと行動力が「ふんコロ昆虫記」の塚本珪一氏や稲垣政志氏、河原正和氏といった糞虫界の大御所を動かし、150名の子供達(保護者等含む)を糞虫ワールドへ、さらにエコロジーを考えることへと導いたのだと思います(写真3,4枚目)。
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 冊子の内容についてはfacebookから引用させていただきます。
「なぜ宮本さんがこの観察会を企画したのかや、観察会をやるために宮本さんが講師のコガネ研の方々との手紙の内容や、参加した後の子供達の感想、子供達の親御さんの感想、そして参加者の中でも年長の子供たちによる奈良公園の自然と糞虫の関わりについて興味深い考察などがありました。・・・また、宮本さん自身が糞虫について詳しく調べており、そのことについても少し載っていました。・・・糞虫の魅力を人にいかに伝えるかという点でとても勉強になりました。」
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 ところで、facebookの主はまだ高校生なんですが、宮本さんが始めた糞虫の観察会について
「一度なくなってしまうと、続けて行くのが困難になりますので、この資料をもとに、来年も観察会を続けて行きたいですね。」と決意を述べています(2017.8.15)。
いやー、あっぱれな若者じゃないですか!
彼が事を起こすときにはイの一番で馳せ参じ、ご奉公したい思います。(まあ、必要とされればの話ですけどね。)


今日はここまで。
再見!
 

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